第三話 混沌の使徒
「まあとりあえず最初の章を読んでみるか」
0.
『
この世界を乗っ取った集団は自らを
彼らは世界を乗っ取った後、死や老化を避けるために
現状我々が分かっているのは以上だ。
…』
「♪♪♪♪~」
その時、五時を示す音楽が流れた。
「もう五時か」
「私ももう帰らなきゃいけない時間だ」
「じゃあ続きはまた今度にするか」
「じゃあね~」「じゃあな」
キリのいいところで時間になってしまった。
自分だけ先に見るのもどうかと思い、今日は早めに寝ることにした。
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夜中の2時になぜか目が冴えてしまい、眠くなるまで歩こうと思い散歩していると、前から一人の女性が走ってきた。
「…っ…」
何かをしきりに叫んでいたが、声が出ておらず聞き取れなかった。
その時、黒いフードを被った5人組がその女性を一瞬で拐い、そのうちの一人がこちらに手を向けて何かを唱えた。
『△✕◯□』
そこで記憶が途切れ、気づいたら家のベッドにいた。
改めて思い返すと、夜中に目が覚めてから散歩に行くまでの記憶もなく、実際に歩いた形跡もなかったので、これはリアルな夢だったのだろうと思うことにした。
この奇妙な夢をレイナとカインに話すと、二人も同じような夢を見たと言った。
多少の差があったが共通していたのは、黒いフードを被った5人組が女性を拐ったことと、そのうち一人がこちらに手を向け、何かを唱えたところで夢が終わっていることの2つだった。
三人で夢の内容について考えていたとき、北の方から何やら煙が立っているのに気づいた。
「あれ何かな?」
「わかんねーな。でも何か近付いてきてるように見えるな」
その煙は段々こちらに迫ってきており、なんとなく嫌な予感がしたのでとりあえず建物の影に隠れることにした。
頭だけ出して様子を伺うと、そこには燃え盛る狼が宙に浮いていた。しかし、他の通行人はそれに気付いていないようだった。
「…何だよあれ…」
小声でカインが呟いた。
「分かんないけど、とりあえず良いものには見えないからあっちへ逃げよう」
「でも…あの山脈に近づくのは禁止されてるし、このままだと
「先生に怒られるのと今あの狼に見つかるのとどっちがいいの!」
レイナが指差したのは東の山脈だった。
この国では周囲の山脈に近づく事は禁止されていたが、今現在自分達は最東端の町の東側にいるため、逃げ場としてはそこしかなかった。
東の山脈に入ると、ちょうどよさそうな洞窟があったため、三人でそこに入り、様子を伺った。
しばらく経っても追いかけてこなかったので安全だと判断し、外に出た。
「ったく…何だったんだあの狼」
「分かんない。もしかしたらまだ町にいるかもしれないし、ここでしばらく過ごした方が良さそうだね。シーマ、あの本持ってる?」
「いや…家に置いてあるままだったと思うよ」
「そうか…じゃあしばらく暇だけど仕方ないかな…あれ?シーマそんな本持ってたっけ?」
「そんな本って何?」
「だからその右手に持ってる本だってば!」
右手を見てみるといつの間にか一冊の本が握られていた。しかもそれは例の本だった
「この本を家から持ち出した記憶が無いんだけど」
「まぁとにかく本もあるんだし、早く続き読もうぜ」
引ったくるように本を奪ったカインは続きを読み始めた。
「待ってよ。私達も読むんだから」
『
他国の説明をする前にまず人類にとって唯一の自由統治地区である
この世界には大陸と呼ばれる一つの島しかなく、それ以外は海という水で満たされている。
ただ、陥没した
しかし、この防御も万能ではなく、東西南北の4ヶ所に防御の薄い部分がどうしても発生してしまう。
当時の魔術師達のおかげで昼の間は閉じられるが、夜になると開いてしまう。それを受け、そのときの
《処刑人》達はかなりの魔術の使い手で、特に人の記憶を操作する能力に長けている。そのため、拐われた者達の事を知っている人間からその記憶を排除している。』
「私達が夜中に見たのってこの《処刑人》だったのかな?」
「多分そうだろうけど、それなら何で僕らの記憶は残ってるの?」
「確か前持ってきた古代語の魔術書によると、古代語を使える者には魔法が効きにくくなるって書いてあったと思う」
「じゃあそれだろ。俺達だって記憶は残ってるけどそれを夢だと勘違いしてただろ」
これで夜中の不審な集団の正体が分かったが、先程の狼についてはまだ分からない。
謎は深まるばかりだ。
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