第6話トゥールーズ前公爵side

≪≫死者の声



 *******************



≪やっぱり、私、あの時死んで正解だったわ。死んでなかったら今頃、あの男に監禁されてた!間違いない!!≫


 それもどうなんだ?

 妹よ、お前が死んでなかったら、ギヨームと結婚して王妃になってた。

 王妃を監禁なんてことは……ない。ないと思いたい。思いたいが……。


「ローゼリア、流石に言い過ぎだ」


≪え~~~っ!?お兄様だって思ってるくせに!≫


「思ってない」


≪またまた!じゃあ、どうして私の死因を感染症にしたの?のに!葬式が終わって急いで火葬したんだよね。疑ったんでしょう?あいつギヨームがの事だから、私がしたって知ったら「王家の霊廟に入れる」って言うだろうな~って≫


「…………」


≪図星でしょう、お兄様。遺体だって土葬したらヤバイって思ったんだよね?あいつの事だから後で墓を掘り返すに違いないって!!≫


 その危険性については考えていた。

 ギヨームはローゼリアを溺愛していた。十分、可能性のある話しだった。ギヨームなら墓荒らしをしてでもローゼリアの遺体をもって帰ろうとするかもしれないと……。ギヨームを刺激したくなかったのも確かにある。あるが……。


「そもそもお前があんなをするから!」


≪は?!!なにそれ?!!アリエナイ!そこツッコム?!!≫


「菓子を喉に詰まらせただなんて公表できるか!!!」


 私が全力を持って妹の真の死因を隠したのは当然の処置だ!

 こんなアホな死因が表に出れば間違いなく嘲笑の的だ。

 アホな妹は死んでいるから良いとして、残された我々はどうなる?!ローゼリアの親、兄、親族、甥や姪であるというだけで馬鹿にされるのだ!そんな未来を回避するために全力で隠したのだ!!保身に走った?当たり前だろう!!末代までの恥だ!!!


≪ひどっ!!それが可愛い妹にいうセリフ?!!≫


「可愛い妹だからこそ名誉を守ってやったんだ!有難く思え!まったく。だというのにお前は成仏もしないで悪霊として家に居つくとはな……」


≪誰が悪霊よ!私はよ!!≫


 守護霊ってお前……。幾ら何でもそれは図々しいぞ?

 目の前で文句を言う幽霊の妹に呆れた。


 せめて地縛霊にしておけ。



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