第33話終わらない妃教育
月日が経つのは早いと感じますわ。
十六歳で結婚して早八年。
この八年間はベビーラッシュで私は子育てに追われていました。乳母達がいなければ手が回らなかった事でしょう。
私の結婚式の翌月に結婚式を挙げた王太子殿下と側妃。
当てつけなのか嫌がらせなのかは分かりませんが、王都では派手な結婚式が行われていました。
思った通り、彼女は後宮で囲われる存在になったようです。
本人は婚約期間中と同じ待遇だったせいか「王家に嫁ぐのはこんな感じ」と解釈しているとの事。知らないというのは幸せですわね。まぁ、ソニア側妃の周囲の者達は真実を彼女に話して聞かすような者はいないでしょうから。彼女の勘違いを訂正する者はこれから先も現れないでしょうね。
それにしても――
妃教育を約十年近くしていて未だにソニア側妃のマナーの習得は終わっていません。下位貴族夫人レベルにも達していない有り様でした。
ゆっくりと学んでいると聞いていましたが……のんびりし過ぎではありませんか?
この国、最高の教師達が教えているというのに、このレベルとは……。
恐ろしく素晴らしい人材を揃えていますのに、彼らに学ぶという栄誉をソニア側妃だけが認識していない状況でした。
一応、「凄い先生」とは理解しているようですが、どれほど「凄い教師」なのかを正確に解っていません。
やる気がないからなのか、それとも元々考える頭がないのか。
ここまでくると諦めるしかないでしょう。
普通なら、最高レベルの教師達の手を煩わせて申し訳ないと思うところですが、ソニア側妃にはそういった思いが一切見受けられません。
勉強時間以外で自主的に学ぶという行動を取らない方です。
当然、予習と復習などはしません。
学び始めた頃は教師から注意を受けたそうですが、お得意の泣き落としで王太子殿下に訴えたそうです。
教師方はよく彼女の教育をしていると感心するレベルです。忍耐力を試されているとしか思えません。
どんな人物であろうと、側妃である事は間違いありません。
教師陣営は決してソニア側妃を馬鹿にしたり見下したりすることはないでしょう。
守秘義務を課せられている以上、ソニア側妃の事が他者に漏れる心配はありません。ええ、我が家のように密偵を紛れ込ませていなければ、の話しですが。
平民出身のソニア側妃にとって、恐らく「結婚」というものは「恋愛」と同じ。もしくは「その延長線上にあるもの」なのかもしれません。
好きだから恋人になる。
好きだから結婚する。
愛のない結婚は有りえない。
結婚がゴールだと考えていたのかもしれません。
だからこそ、結婚のために勉強する意味を理解していないのでしょう。
愚かな事です。
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