episode.19:分かれ道

 僕は分かれ道を左に行った。

 いや、行かざるを得なかった。

 踏み外したものは、正しい道に戻れない。


 僕は右の道を見る。

 そこには人に囲まれ、明るい笑顔を見せる僕がいた。

 

 僕は僕自身を見る。

 たった一人、ぽつんと荒廃した道にいる。


 随分歩いた。


 荒れた一本道に縄が落ちていた。

 くだらないと笑ってしまえばそれまでの縄。

 だけど、僕はそれにしがみついた。


 縄が僕を導いていく。

 やがてそれは形を帯び、僕の横に寄り添った。


 久しぶりに向こう岸に目をやった。

 そこに道はなかった。 


 右の道なんてはじめから存在しない。

 あれは、可能性を羨む僕が作り出した幻想だった。


 そんなことに、今更気づいた。


 僕の隣には君がいる。

 僕は君と歩いていく。

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