　僕は抜け出せない迷宮に迷い込んだ。

　ここは病院。白の世界。

　長い廊下を一人で歩く。

　入院病棟に差し掛かる。

　中でうめき声が聞こえる。僕は扉をスライドさせる。

　誰もいない。

　眼科に着く。

　こぶしより一回り大きな目玉の模型が僕を見ている。

　血走った目で、見ている。

　手術室にはメスが並んでいた。

　僕は手に取って、自分の指に当て、引いてみる。

　青い血が流れた。

　内科では聴診器が放り出されていた。

　僕は耳にそれを取り付け、自分の心臓に当てた。

　音はしなかった。

　もう、長いこと歩いている。

　一階から四階まで。東棟から西棟まで。

　僕は回る。

　ぐるぐるぐるぐると、循環するのだ。

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