episode.16:金

 ソファーに深く腰掛けた男が気に入らない。


「だけど、俺なしでは生きてはいけない」


 にやりと笑ったその男は金。


 周りには人型の人形が落ちている。

 彼はその一つを拾い上げ、足にかぶりついた。

 音を立てて砕けていくその人形の表情がはっきりと見える。

 恍惚とした表情をしていた。


「人間は俺に溺れたい。俺には逆らえない」


 真っ赤な空から札束が降ってきた。

 僕はそれに手を付けない。

 

 男はケタケタと笑い、立ち上がった。


「その足掻き、いつまで持つか楽しみだな」


 身をひるがえし、男は消えた。

 

 僕の手は自然と、落ちた札束に向かい、手に取り、ポケットに詰め込んだ。


「ほら、やっぱり」


 背後から男の声がした。

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