episode.11:希望

「どこにいるんだい」


 僕は声を張り上げる。


 先も見えない真っ暗闇。

 ずっと、探している。


「君は希望なんだろう? そろそろ僕を救ってくれてもいいんじゃないかい?」


 答えはない。


 後ろに崖の存在を感じている。

 見えもしない彼女を探し続けるよりも、身を投げたほうが幸せだ。

 どこからか、そう聞こえた。

 なるほど、と思った。


 脚を引く。

 身体をねじる。

 視界の端にきらめく。


 からからと軽やかな笑い声を上げ、希望が躍っていた。

 やわらかなスカートをふくらましながら、くるくると。


 僕は彼女を追わなければならない。


 崖に背を向けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る