episode.6:雨

 雨が降っている。

 僕は傘をさしている。


 雨が降っている。

 傘で弾けた雨粒が言葉を発する。


「さみしい」

「かなしい」

「さみしい」

「かなしい」


 雨が降っている。

 彼らはそればかりを繰り返す。


「さみしい」

「かなしい」

「さみしい」

「かなしい」


「何がそんなにさみしいんだい? 何がそんなに悲しいんだい?」


 僕は尋ねる。


「僕が」

「私が」

「消える」

「存在が」

「混ざって」

「一つに」

「還る」


 足元を見ると、個々の雨粒は一つの水たまりとなり、個々の水たまりは一本の川となり、個々の川は海となった。


 すべてが一つになった。

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