episode.5:憧れ

 淡いクリーム色の壁紙の中、彼は立っていた。


「こんにちは」

「こ、こんにちは!」

「そんなに緊張しなくていいよ」


 彼は僕の憧れ。なりたいものの姿。


「君は僕になりたいはずだ」


 僕は頷く。


「じゃあ、僕にしていこう」


 彼は僕に触れると、その腕をもいだ。


「長さが足りない」


 僕の腕を伸ばし、僕にも戻す。


「顔が違う」


 彼は僕の首をもぎ、顔のパーツを変える。


「考えが違う」


 彼は僕の頭を開き、脳をかき回す。

 全身のパーツが入れ替えられる。


「はい、完成」


 彼は笑った。

 そこに僕はいなかった。


 彼は憧れという名の殺人鬼。

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