第59.5話 ノノンの電車トラウマの理由 ※胸糞です ※読まなくても物語的にはOKです。

※要望があったので書きました。

※正味三十分ほどで書き上げてますので、誤字脱字があったら感想欄で教えて下さい。


§


 誰でもいいからついて行っていた時期の話、そんな中でもノノンと何カ月か行動を共にした男がいました。その男は彼女に対して基本的に暴力で従え、グズ、ノロマという罵声を浴びせ続けている、そんな日々の最中の出来事の一つです。


 その男はノノンを買った訳ではありません。一緒に住むか? と誘われてついて行き、その日の内に抱かれた、そんなライトな関係になります。しかしその男はどこに行くにもノノンを連れて行き、ことある毎に性処理としての道具として彼女を利用しました。場所時間問わず、言うことを少しでも聞かなかった場合、容赦なくお腹を殴ります。男は顔を殴る事は少なかったです、基本お腹を殴ります。他には太ももや、目に見えない場所を殴るようになりました。


 日々の暴力が酷くはありましたが、その男はノノンに身体を売れとはいいませんでした。側にいろ、それだけでいいと。行くところの無いノノンは、死んだ魚のような目をしながらも、その男の側にいることを選択しました。


 ある日のこと、二人でパチンコ屋へと行き、男は大敗を喫します。日払いの仕事をするにしても今日の夜ご飯がないとし、ノノンへ隣に座る、大勝している男に身体を売れと、初めてノノンに対して売りをするよう求めました。この時のノノンには性に対する抵抗は一切なく、言われるがままに咥え、僅かな対価の為に、それもすぐパチンコで消えるのですが、それでも一緒にいる男を信じて頑張りました。


 それを契機に、男はノノンに対して売りを求めるようになります。もともと時間場所を問わなかったのですから、その対象が男から見知らぬ誰かに変わっただけのこと。漫画喫茶、パチンコ屋のトイレ、ショッピングセンターの物陰……基本的に見えない場所でのことだったのですが、ノノンはそれでも身体を捧げ続けます。


 事が終わり、ボロアパートへと戻ると、男はこう言いました。

 とても割のいい仕事が入ったと。


 それは、朝の通勤通学の時間に、満員電車の中でしろという内容でした。ノノンに拒否権はありません。男に連れられて駅のホームで顧客と待ち合わせし、三人は満員電車へと乗り込みました。言われた通りに無抵抗なまま身体を許していると、周囲からヒソヒソと声が聞こえてきます。


(なにあれ……?)

(痴漢……?)


 ノノンの目には眩しい、通学途中の女学生たちが、身体を許している自分を見ているのです。思わず目を逸らすも、顧客である男は更に容赦なく次を求めました。その場でしゃがみ込み、咥えろと。コートで隠されはしているものの、ノノンが何をしているのかは一目瞭然でした。口で満足したはずの男はまだまだ出来る様子で、ノノンに立つよう促しました。言われた通り満員電車の中で立ち上がると、穢れた自分を見る周囲の視線があります。


(……あ、ダメだ)


 途端、猛烈な吐き気を催し、出された物を含みながらも、ノノンは車内で全てを吐き出しました。吐しゃ物が顧客の身体にもかかり、周囲にいた人達からも悲鳴が上がります。誰もノノンを助けようとはせずに、汚物をみるような目で見つめ続けるのです。自分が吐き出したものを見下ろしながら、ノノンは小さく自分を抱き締めました。


「お前、ふざけんなよ」


 ノノンが吐いてしまった事により、顧客の男は支払いを渋り、逃げてしまいました。

 そのことに激怒した男は、帰りの電車の中で初めて彼女の顔を殴ったのです。

 一発、二発と殴りつけ、倒れ込んだノノンのお腹を容赦なく蹴り上げます。


(もう、耐えられない)


 そう考えたノノンは、見知らぬ駅に止まった電車を下り、全力で走りました。もともと帰る場所なんかないのだから、どこで降りても変わりません。後ろから男が追いかけてきた声が聞こえましたが、それもしばらくして無くなりました。


 口の中に残るのは、殴られて出てきた血の味と、顧客が出した吐き気がする生臭い汚物だけ。トイレの洗面台へと駆け寄り、ノノンは口の中のものを全部出すべくうがい・・・をし、口の中に指を突っ込んで吐き出しました。それでも消えない、どれだけ出しても消えない、泣きながらその場に蹲るも、誰も助けてくれず。帰る場所なんてない彼女は、そのまま人が多い雑多な場所へと座り込むと、次を待ち続けるのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る