青少女保護観察官に任命された僕と、保護された彼女~幸せを知らない彼女との日々はドキドキすることばかりで、僕はそんな彼女に振り回されっぱなしです~
第55話 女の子の身体は一番守らないといけないものだから
第55話 女の子の身体は一番守らないといけないものだから
8/6 日曜日 04:00
夏の朝日すら上がらない時間帯に、僕の家は破壊されていた。
そんなリビングの椅子に一人座り、自らの性器をいじり始める
青く輝く瞳を蕩けさせながら、リズミカルに動く彼女の指が僕の視線を困惑させ、なまめかしい動きをする腰つきが性欲をかきたてる。慣れた手つきで自身の乳房をいじり倒し、硬くなったものを強くつねるようにすると「あっ」と嬌声が溢れ出た。
たっぷりと透明な液体で塗りたくられた指の間には糸が引き、それを彼女は僕に見せつける。
言葉にせずままに半眼し、小さく開けた口から蛇のように出てきた舌でそれを舐めた。
多分、普通の男だったら彼女の誘いにひょいと乗ってしまうことだろう。
それこそ、
けれども、僕は想像以上に冷静に彼女を見ている。
眼球を上に持ち上げて、極力下を見ないようにしながら。
性行為どうこうよりも、破壊された部屋をどう直すかの方に脳みそのリソースを振り分ける。
「ねぇ……しないの?」
「ああ、うん、しないね」
とてもとても冷めた言葉を氷芽さんに投げかける。
彼女としても予想外の言葉だったのだろう、視界の端で動く手が一瞬止まった。
「……しないって、本気?」
「うん」
「
「いや、健康優良児だけど」
「じゃあしようよ。特別に一回一万円でいいからさ」
僕にはノノンがいるのに、なぜにお金を払ってまでしないといけない。
そんな事よりも片付けだ、被害状況を確認して、
……日曜日だから、さすがに対応してくれないかな。
「無視しないでよ、女のアタシが誘ってるんだよ? ちょっとは反応してよ」
「ああ、うん、そだね。じゃあ
「はぁ? なんで女の観察官呼ぶの? 意味わかんないんだけど」
「氷芽さんの観察官は舞さんだから。君の更生は彼女がするべきだと思うよ」
氷芽さん、椅子から離れて僕の方におっぱい揺らしながらずんずん近寄ってきた。
そして、そのまま僕の襟首を両手でつかみ上げる。
「お前、頭おかしいんじゃないの? 普通、裸の女が誘ったら乗っかるもんでしょ?」
「僕にはノノンがいる、君に手を出す訳にはいかない」
「他に女がいるからアタシには手を出さないって?」
「うん」
「強がってばっかり。ほら、触っていいんだよ? 同級生のおっぱい、触りたいでしょ?」
僕の手を取って、自身の胸や股間へと触れさせようとする。
そんな氷芽さんを見ていると、いつかの日のノノンを思い出した。
初めて隣で眠ることにしたあの日、彼女は眠る僕の手を自身の股間に摺り寄せていたんだ。
確かに、触っていじっていれば、ヤリたくもなってしまうものなのだろう。
でも、僕はあの日の欲情さえも、表には出さずに抑え込んだんだ。
「僕は、女の子の身体は一番守らないといけないものだと考えている」
「なによ、それ」
「手は出さないよ、ノノン以外の人には絶対に出さない」
どれだけ力を込めようが、所詮は男と女だ。
氷芽さんの力が僕より勝ることはない。
結構、凄い力だったけど。
八割ぐらい本気だったけど。
プルプル震えながら睨み合いをしていると、騒ぎに気付いたのだろう。
扉を開ける音が聞こえてきて、舞さんが寝間着姿のままリビングへとやってきた。
「え、ちょっと、どうしたのこの部屋」
「氷芽さん、お腹が空いて暴れちゃったんだって」
「なに、それ……氷芽さん、お腹空いたのなら起こしてくれれば良かったのに」
僕の部屋は施錠してあったけど、舞さんの部屋はいつでも入れるようにしてあったんだ。
テーブルの上には何も置いてなかったけど、きちんと書置きは残してあったのに。
「夕飯もお昼ご飯も、貴女の分はちゃんと冷蔵庫の中に残してあったのよ? 食べたければ冷凍食品だって温めたのに、それをこんな……家具を壊してまで暴れるって、子供じゃないんだから。……どうして、こんなことしたの?」
「
「ウソ言わないの、この部屋は監視カメラ付いてるんだからね?」
「……分かった。でもお腹減ったのは本当、何か食べさせて」
いま、さりげなく当然のように嘘をついたな。
なんとも恐ろしい女の子だ、こんな子の更生なんか出来るのかな。
そして、氷芽さんは裸のまま椅子に再度座り込み、股を開いて見せつけてくる。
テーブルはひっくり返っているから、氷芽さんの大事な部分は丸見えだ。
「氷芽さん! 何してるの!」
「あの男誘ってんの、これから毎日誘うから」
「え? 毎日誘うって、どういうこと?」
「言葉通り、そのまんま」
嘘だろ? 毎日誘うって、本気か?
氷芽さん、立ち上がって冷蔵庫へと向かうと、ヨーグルトを手にして再度椅子へと戻る。
蓋を開けて素手でヨーグルトを手に取ると、ぽたぽたと垂らしながら口へと運んだ。
落ちたヨーグルトがおっぱいや股間について、それを僕へと見せつける。
「ねぇ、舐めてよ」
「舐めないよ」
「ケチ、じゃあ拭くだけでもいいから」
「しない。舞さん、僕、ちょっと片付けしますね」
完全に固まった舞さんの肩をぽんと叩くと、我に返った彼女が「え、ええ」と返事をした。
想像以上の難敵だな、羞恥心とか、一体どこにいってしまったのだろうか。
結局、片付けが終わるまで二時間を要してしまった。
その間も、彼女は椅子に座り、一人自慰行為を楽しんでいる。
異常な光景だと思う。
舞さんもさすがに参っているのか、頬を赤らめながら作業にあたった。
いつか終わるかと思ってたんだけど、休み休みとはいえ、それは二時間止まることは無くて。
「氷芽さん、申し訳ないけど手錠をかけさせて頂きます」
当然の決断だろう、氷芽さんの横暴を止めるには拘束具も必要不可欠だ。
他にも、このマンションの機能である部屋施錠も、使用を辞さない事だろう。
外から施錠されたが最後、部屋の中の住民は外へと出る事が出来ない。
取っ手が収納されてしまうのだから、開けることも開けなくさせる事も不可能だ。
「けーま、おはよ……ふぇぇぇ、ノノンのテレビ、こわれてる」
起きて来るなり、ノノンは破壊されたテレビへと駆け寄る。
椅子が叩きこまれちゃってるから、直すことは不可能かな。
「渡部さんにお願いして、テレビだけでも早めに新しいの貰おうね」
「うん……ノノン、どうが、みたかった……しくしく」
最大であり唯一の娯楽だったもんなぁ。
最近だとコスメ以外にも料理番組とかも見てて、ノノンの勉強道具の一つと化していたのに。
まったく、初日からやらかしてくれたよ、ホント。
8/6 日曜日 10:00
『そうか……分かった、破損した家具の修繕、及び交換は今日中に手配しよう。テレビに関しては特に急ぎにしておく。午後には同じ物が配達されると思うから、受け取りを頼むよ』
「ありがとうございます」
さすがは渡部さんだ、日曜日であっても迅速対応、本当に助かる。
『だが、新しい家具を配達した所で、また破壊されては意味が無い。再発防止のための聞き取りも宜しく頼む。氷芽さんが何故家具を破壊したのか、先の黒崎君の話では空腹が原因と言っていたが、恐らく原因は空腹ではない。彼女が何を思い行動しているのか、椎木さんと二人、協力して取り組んで欲しい』
「わかりました、アドバイスありがとうございます」
『とにかく、全員に怪我が無くて何よりだ。また何かあったら連絡を頼む』
渡部さんの言う通りだな、このまま閉じ込めて何かが変わるとは思えない。
今だって氷芽さんを閉じ込めた部屋からガンガン壁を叩く音が聞こえてくるんだ。
「渡部課長、どうだった?」
「今日中に手配してくれるってさ。テレビに関しては特に急ぎにしてくれるって言ってたよ」
「良かった」そう呟きながら、舞さんはソファの前に置いてある壊れたテレビを見る。
被害額は何十万レベルなんだろうな、テレビにソファ、これだけで百万超えるかも。
「てれび、なおる? ノノンのテレビ、なおる?」
「直らないから、新しいテレビになるってさ」
「あたらしいテレビ! やった! ふるいテレビさん、いままで、ありがとうね」
当然のように物に感謝をするノノンを見ていると、なんだかホッコリする。
さて、観察官である僕達にはやらなきゃいけない事があるんだ。
「舞さん、僕、これから氷芽さんと話しをしようと思う」
「うん。でも、桂馬君が行く前に、私一人でやらせて欲しいの」
「……分かった。じゃあ、交代で行こうか」
更生するにしても何にしても、会話をしないと始まらない。
僕達は青少女保護観察官なんだ、自分達の責務を果たさないとね。
それと、少々気になる事もあるから、渡部さんに追加で連絡しておこうかな。
§
次話『暖簾に腕押し、腎臓一個三千万※椎木舞視点』
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