13章 オーズへ 16
大型悪魔が暴走してきた跡は瓦礫の山と化していた。
多くの者は避難をしていたはずだが、やはり犠牲者や怪我人は少なくない数が出てしまったようだ。
すぐに兵士たちが駆けつけて救援活動を始めたが、この国の巫女であるシズナがいるパーティということもあって『ソールの導き』もそれを手伝うことにした。
俺は瓦礫の撤去を行ったが、腕力の強さとなんでも放り込んでおける『アイテムボックス』が強力だった。
ラーニが鼻で、スフェーニアが目で被害者の発見を行い、俺が目についた瓦礫を片っ端から『アイテムボックス』に入れていく。
発見された怪我人は間髪入れずにフレイニルとシズナが魔法で治療を行うと、非常に早いペースで救助が進んでいく。
特にフレイニルの『範囲拡大』を併用した回復魔法が有効で、彼女の瓦礫の上からかける無差別広範囲回復魔法のおかげで少なくない数の人間が助かったはずである。まさに『聖女』のような活躍だったと言えるだろう。
ちなみにカルマたち『酔虎』も手伝ってくれたのだが、その際に「ソウシさんはお人好しだねえ」と言われてしまった。
「でもそのお人好しさをつらぬける強さがあるなら大したもんさね。嫌いじゃないよ、そういうの」
と笑いながら付け足してくれたので、別に皮肉を言われたわけでもないらしい。
なおマリアネには前線の様子を見に行ってもらったのだが、そちらの戦いも終わっていたようだ。結局出現したクモ型悪魔は3体だけだったが、あの暴走大型悪魔のせいで多少被害が出てしまったようだ。
救助の兵士が増えてくると、彼らが扱う『精霊』の岩人形のおかげもあって作業のスピードがグンと増した。よく考えたら『精霊』は自律行動のできる疲れ知らずの人型汎用重機である。その有用性はいわずもがなであった。
しばらくすると大巫女ミオナ様も現場に現れた。
彼女は現場を見渡し供の神官に指示を与えると、俺のところに来て軽く頭をさげた。
「ソウシ殿たちの活躍は聞いております。ここは我らに任せお休みになられませ」
「邪魔であれば下がりますが、そうでないなら続けさせてください。人命救助は72時間……ではなくて36刻が一つの限界点と言われています。そこまでに一通りは助けないといけません」
「ううむ、そうであるのですか。ソウシ殿たちの働きを見れば続けてもらう方が良いのは確か……あい分かりました、どうか民を一人でも多く助けてくださいませ」
「承知いたしました」
俺は礼をして、目の前の瓦礫を『アイテムボックス』に放り込んでいく作業に戻った。フレイニル達も引き続き救援活動に当たっているが、今のところ体力は大丈夫そうに見える。
メンバーには悪いが、これも『ソールの導き』のリーダーのわがままということで許してもらおう。目の前に被害者がいて自分に救う力があるのなら、さすがになにもしないわけにはいかない。
その後ぶっ続けで作業を行ったが、夜が明ける前には一通りの救助が終わった。メンバーは誰も文句を言わずに働き続けてくれた。
明け方になって俺たちはお役御免となった。現地を去る時には、疲れているはずの兵士たちや回復した住民たちがお辞儀をしながら見送ってくれた。
ミオナ様が用意してくれた馬車で運ばれていると、すぐにフレイニルとラーニは眠ってしまった。スフェーニアとシズナももう半分寝ている感じだ。一人まだ普段通りに見えるマリアネが俺の隣に移動してきた。
「今回の働きは見事だったと思います。ギルドも『ソールの導き』と『酔虎』の働きは大きく評価するでしょう」
「それならありがたいな。しかし皆よくやってくれたよ。リーダーのわがままによくつきあってくれた」
「わがままなど……皆必要なことだと思ってやったはずです。もちろん私もです」
「そうか……そうだな。俺はいいメンバーに恵まれているんだな」
「私たちもいいリーダーに恵まれたと、そう思っていますよ。自信を持ってください」
「ありがとう。今日明日はゆっくり宿で休むとしようか」
「それがいいと思います」
そう言うとマリアネは俺の肩に頭を乗せ眠り始めてしまった。
普通ならドキッとするはずだが、もう俺自身にその余裕がないのがありがたかった。
可能なら俺もひと眠りしたかったが……ここは見目麗しい女子を預かるリーダーとしてなんとか耐えるところだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます