5章 出会いの連鎖  01

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 ソウシ オクノ

 冒険者レベル10


 武器系

  メイス Lv.15  長剣 Lv.8

  短剣 Lv.4  格闘 Lv.8


 防具系

  バックラー Lv.11


 身体能力系

  体力 Lv.13  筋力 Lv.16

  走力 Lv.13  瞬発力 Lv.13

  反射神経 Lv.11


 感覚系

  視覚 Lv.9  聴覚 Lv.7

  嗅覚 Lv.6  触覚 Lv.6  

  動体視力 Lv.11  気配感知 Lv.9


 精神系

  冷静 Lv.7  思考加速 Lv.5

  興奮 Lv.2


 特殊

  再生 Lv.2  毒耐性 Lv.2(new)

  幻覚耐性 Lv.1(new)  安定 Lv.3

  剛力Lv.2(new)  鋼体 Lv.3 翻身 Lv.2(new)

 重爆 Lv.1(new)


 特異

  悪運 Lv.10(new)

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 フレイニル

 冒険者レベル5


 武器系

  槍 Lv.3  格闘 Lv.1


 防具系

  バックラー Lv.1


 身体能力系

  体力 Lv.3  筋力 Lv.2

  走力 Lv.3  瞬発力 Lv.2

  反射神経 Lv.2


 感覚系

  視覚 Lv.2  聴覚 Lv.2

  嗅覚 Lv.2  触覚 Lv.2  

  動体視力 Lv.2  気配感知 Lv.2


 精神系

  勇敢 Lv.2  精神集中 Lv.1


 特殊

聖属性魔法 Lv.2  神属性魔法 Lv.2


 特異

  聖者の目 Lv.1

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※スキルはあくまで推定



 1週間ぶりに戻ってきたエウロンの町だが、そもそも1週間くらいしか滞在していなかったので懐かしいという感じはない。


 フレイニルはと見ると、彼女にも特に新しいところに来たという反応はなかった。


「もしかしてエウロンには来たことがあるのか?」


「はい、何度かあります。と言ってもこうして自分の足で街中を歩くことはあまりありませんでしたが」


 フレイニルはそれ以上のことは口にせず、訳あり感が増しただけだった。


 着いた時はすでに夕方だったが、俺たちはそのまま冒険者ギルドに向かった。


 ロビーには冒険者のパーティが20組以上はいる感じでカウンターにも数名が並んでいるが、例の無愛想受付嬢の前には誰もいない。普通に美人だとは思うんだが、やはりあの態度で敬遠されているのだろうか。


「済みません、報告したいことがあるのですが」


「おや、ソウシさん、お帰りになったのですね。報告とは?」


「マネジの町からの帰りにアンデッドモンスターに出くわしまして、その報告です」


「アンデッドですか? 証拠はありますか?」


「ええ、これですね」


 高位スケルトンが落としたいびつな魔石と杖を見せると、受付嬢の目がすっと細まった。


 おっと、これはまた面倒ごとの予感だ。


「お話をうかがいます。こちらへ」


 受付嬢の後について奥の部屋に入る。大きめのテーブルに椅子が並んだ部屋だ。


 俺たちが椅子に座ると、受付嬢はそこで初めてフレイニルに気付いたようだ。


「こちらはパーティメンバーですか?」


「ええそうです。マネジの町で知り合いまして。ようやくパーティが組めました」


「そうですか。すみません、お名前は?」


「はい、フレイニルと申します。ソウシさまのパーティにいれていただきました。よろしくお願いいたします」


 フレイニルが頭を下げると、受付嬢が含みのある目で俺を見る。とがめるような感じではないので、おっさんがいたいけな少女を連れて……という意味でもないようだ。もしかしたらフレイニルのことをなにか知っているのだろうか。


「よろしくお願いいたします。私はマリアネと申します」


 受付嬢はすぐに俺から視線を外し、フレイニルに挨拶を返した。この受付嬢の名前をようやく聞いた気がするな。


 受付嬢……マリアネは筆記具の準備をすると、俺に向き直った。


「では、報告をお聞かせ願います」


「ええ、昨日朝にマネジの町を出立し……」


 俺は昨日のアンデッドモンスター討伐について、一通りの説明をした。


 マリアネはいつもの無表情を崩さなかったが、細部までつっこんで聞いてくることもあったのでやはりこの件がレアケースだったのだとわかる。


「こちらがその高位スケルトンが落とした魔石と杖です。魔石は買取をお願いしますが、杖については問題がなければこちらで使いたいと思っています」


「お話とこの魔石の形状から、そのアンデッドモンスターがリッチであったことはほぼ確定となります。とするとこの杖は『亡者もうじゃの杖』、使用なさるなら鑑定をしておくことをお勧めします」


「やはり呪いのようなものがかかっていたりするのでしょうか?」


「ごくまれにそのようなことがあるようです。鑑定なさるならこちらで受付いたします。費用は100,000ロムになりますが」


「この杖はかなり強力なものと考えてよろしいのでしょうか?」


「本来ならCランク以上の魔導師が使うランクのものと聞いております」


 ふむ、かなり強力な武器のようだが、問題はそんな武器をFランクのフレイニルが持っていることをやっかむ奴がいるかどうかだな。


 この世界の冒険者はそこまで荒っぽくはないようだし、そもそもあまり絡んでくる者もいないようだ。とりあえず使わせてみて何かあったら考えればいいか。


「分かりました、では鑑定をお願いいたします。私からの報告は以上ですが、他になにかあるでしょうか?」


「言い忘れておりましたが、リッチはDランク上位、もしくはCランクに位置するモンスターです。くれぐれも無理はなさらないようにお願いいたします」


 そう忠告してくれるマリアネはやはり無表情なままだった。もしかしたらこの態度で損をしている人なのかもしれないな。




 翌朝フレイニルと一緒にトレーニング場に行くと、珍しく先客がいた。Cランクパーティ『フォーチュナー』のリーダー、ジールが黙々と長剣……ではなくダークメタル棒を振り回している。


 俺たちがいつもの通り体力トレーニングを始めると、ジールはちらちらとこちらの様子をうかがう素振りを見せた。トレーニング内容というより俺がフレイニルを連れているのが気になるのだろう。


 小休止するタイミングでジールは声をかけてきた。


「よう、しばらく見なかったな。パーティメンバーをスカウトしに行ってたのか?」


「マネジの町にダンジョンを巡りに行ってました。彼女はたまたまそこで知り合いまして」


「ふうん……っていうかその娘ずいぶん若いな。『覚醒』するような歳じゃない気もするが」


「ええ。私もそう思うのですが、自分自身がその例外なのでなんとも」


「ははっ、確かにそうだ。まあ珍しいってだけでいないわけでもねえからな。俺はジール、お嬢ちゃんは?」


 ジールが急に挨拶をしたので、フレイニルは一瞬言葉に詰まってから返事をした。


「あ、フレイニルと申します。よろしくお見知りおきください」


「こりゃまた礼儀正しいお嬢さんだな。フレイニル……ね。まあよろしく頼むわ」


 そう言ってジールは鍛錬に戻ろうとして、何かに気付いて立ち止まった。


 彼が見ているのはフレイニルが持つ『亡者の杖』だった。昨日「問題なし」との鑑定結果が出たのでフレイニルは早速装備している。


「ん? フレイニルのお嬢ちゃん、その杖はどこで手に入れた?」


 その質問に、フレイニルは俺の顔を見た。代わりに俺が答える。


「実はマネジから帰る時にリッチに遭遇しまして、その戦利品なんです」


「リッチ? ソウシたちだけで倒したのか?」


「ええそうです。ちょっと危なかったですね」


「いやちょっとって話でもねえと思うが。まあキングを倒せるんだからおかしくはねえのか。悪いな、ウチの魔導師も欲しがってる杖なんで、買えるところがあったら教えて欲しくてよ」


「やはり珍しいものなんですね」


「そうだな、リッチ自体がそうそう現れるものでもねえし、大抵討伐する時に壊れちまうからな。レアっちゃあレアだ」


「なるほど」


「しかしリッチがこの辺りに現れるってのもまた妙な感じがするな」


「墓地があれば現れるものなのではないのですか?」


 俺がそう言うとジールはプッと吹き出した。


「そんなワケねえだろ。もしそうなら怖くて墓参りもできねえわ。アンデッドってのはダンジョン以外じゃよほど瘴気のよどんでるところじゃなきゃ発生しねえ。特にリッチは特別なモンスターで、普通には現れねえんだ」


「ええ……」


 ではなぜ俺たちは遭遇したのだろうか。俺の『悪運』スキルのせいだとしたらかなり困る話だが……。


 そんなことを考えていると、ジールが少し眉間に力を入れて話を始めた。


「実はちょっと噂になってんだが、最近あちこちでアンデッドが出現してるって話があるんだ。その側で怪しい人影を見たって話も聞こえてくる」


「なんですそれ? もしかして誰かがアンデッドを召喚しているとかですか?」


「な、そう思うだろ。胡散うさん臭え話だが、実際そういうことをする奴らは昔からいるみたいだぜ。墓場の側を通る時は気を付けた方がいいかもな」


「分かりました、気を付けるようにします」


 なんかエウロンに戻ってそうそうとんでもない話を聞いた気がする。


 『悪運』スキルのせいでリッチに遭遇したわけじゃないようなのは良かったが、それ以上の厄介ごとが迫ってきているようだ。


 俺としては関わりなくやりすごしたいところだが、どうも『悪運』スキルが反応してしまう予感しかない。だったら解決策は一つしかない。とにかく強くなる、それだけだ。

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