3章 昇格と大討伐任務 04
その後は後処理をして、トルソンの街へと帰還した。
ちなみにさすがに2000匹以上のゴブリンの死体はそのままにはしておけないようで、一か所に集めて魔法やら油やらで燃やしていた。
その作業だけで半日以上かかり、ゴブリン繁殖の面倒さを身に沁みて感じた次第である。
戻ったその日はさすがに休み、翌日からは普段通りのFクラスダンジョンとトレーニングの日々である。
2日後の夕方ギルドに顔をだすと、大討伐任務の報酬とともに、レアボスのツノの買取金をキサラから受け取った。
「お待たせして申し訳ありませんでした。ようやく本部からの返答が参りました。やはり結構希少なものらしくて、買取金はこのようになりました」
と言って渡されたのは1,700,000ロムだった。Fクラスダンジョンモンスターの素材としては破格の額だろう。
「これはありがたいですね。大討伐にむけて散財してしまったもので、これでなんとかエウロンの町まで行けそうです」
「オクノさん、本当に行ってしまうんですね。ちょっと寂しいです」
「ありがとうございます。キサラさんのおかげで冒険者としていいスタートが切れましたよ。Dランクになったら戻ってきますので、その時はまたよろしくお願いします」
「はい、もちろんです。Eランクでゴブリンキングを倒せる人なんてそんなにいないと思います。オクノさんはきっと強くなると思いますので頑張ってください」
「ええ、死なないように頑張りますよ。では失礼いたします」
俺はキサラにお辞儀をしてギルドを後にした。
その夜は送別の宴という名目で『銀輪』の4人と一緒に飯を食った。
「そうか、おっさん行っちまうのか。ちょっとばかり寂しいぜ」
カイムが珍しくしみじみとした感じで酒を飲みながらそんな言葉を漏らした。
その隣でメリベが相づちをうつ。ちょっとだけ涙目になっているようだ。
「何ていうか、ソウシさんは落ち着いていて一緒にいて安心できる人でしたから残念です。でもキングを倒しちゃうくらい強い人ですから仕方ないですよね」
「正直あれには驚いた。キングはかなり表皮も硬いはずなのだが。一撃で頭部を砕くとはすさまじい腕力だ」
ラナンが淡々と飯を食いながら感心したように言うと、その横でラベルトがしきりに嬉しそうに頷く。
「ソウシさんのおかげでメイスで行けるってことがよく分かったっす。自分ももっと腕力スキル上げて頑張るっす」
「そうだな。重いメイスを振れるようになればそれだけ威力は上がるから、ひたすら重いものを振る鍛錬をするといいかもな」
「ソウシさんはどんな鍛錬をやってるんすか?」
「武器屋で買ったダークメタルの棒を振ってるんだ」
「ダークメタルって、あのクソ重いだけで役に立たねえ金属か?」
カイムが興味を持ったように割り込んでくる。
「ああそうだ。あれを3本買って、振り回したり持ちながら走ったりしてる」
「ふへえ、ソウシさんそんなことやってたんすか。そりゃ強くなるわけっす」
目を丸くするラベルトに、ラナンが横から口を出した。
「いや、ダークメタルの棒を3本なんて並の冒険者では持てない。その時点でソウシは異常だと思うぞ」
「そうなのか?」
「無論高ランクは別だが、Eランクでは確実に無理だ」
「じゃあなんでソウシさんは持てるんすか?」
ラベルトの問いに答えたのはメリベだった。
「たぶん腕力に適性がある『覚醒』をしたんじゃないかな。そういう冒険者がいるって、前キサラが言ってたし」
「そんなことがあるんすか?」
「同じ『覚醒者』でも、実はいろいろ差があるんだって。同じようにダンジョンで戦っても成長するスピードは人によって違うって言ってた」
「まあその辺は『覚醒者』じゃなくても同じだからな。おっさんはちょっと特別なのかもしれねえな」
カイムが少しだけ
前世でもどんなに努力しても絶対に勝てないだろうって奴はいくらでもいた。もし俺がそちらの側に回ったのだとしたら……俺はどうするのだろうか?
「……自分でも少しおかしいとは思ってはいたよ。もしそうなら、そのつもりでもっと鍛えてみるかな」
「いったいどうなるかすごく興味あるっすねえ。そうだ、ためしにソウシさんのメイス持たせてもらっていいすか? 自分も鍛錬する目標を知っときたいっす」
「ああいいよ」
立てかけてあったメイスをラベルトが握る。両手で持って一振りするがかなり身体がふらついている。武器屋の親父はDランクの力自慢用だと言っていたのだが、確かにその通りのようだ。
すでにこのメイスを軽く感じ始めている俺は、確かに腕力特化の冒険者なのかもしれないな。
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