3章 昇格と大討伐任務 01
-----------------------
冒険者レベル7
武器系
メイス Lv.9 短剣 Lv.4
格闘 Lv.5
防具系
バックラー Lv.8
身体能力系
体力 Lv.9 筋力 Lv.11
走力 Lv.9 瞬発力 Lv.10
反射神経 Lv.9
感覚系
視覚 Lv.7 聴覚 Lv.5
嗅覚 Lv.4 触覚 Lv.4
動体視力 Lv.9 気配感知 Lv.7
精神系
冷静 Lv.6 思考加速 Lv.5
興奮 Lv.2
特殊
再生 Lv.1 安定 Lv.1(new)
鋼体 Lv.1(new)
-----------------------
「ええと、オクノさん、Eランク昇格です。当ギルド最速での昇格おめでとうございます」
「はい? まだFランクになって2週間しか経ってませんけど」
大木ダンジョンでのボス2匹の件を報告し、また初のケースだと言われて事情聴取を受けたその翌日。
日課のダンジョン参りとトレーニングを終えた俺に、受付嬢のキサラが昇格の通告をしてきた。
「ダンジョンでの素材の回収数、ダンジョン外でのボアウルフ討伐、討伐依頼での上位ゴブリン討伐、レアボス討伐、二匹のボス討伐、十分すぎるポイントです。カードをこちらへ」
「あ、はい」
なるほどやってきたことを列挙されると確かに密度が濃いな。
俺が言われるがままに冒険者カードを渡すと、キサラはそれを一度奥にもっていき、そして戻ってきた。
「どうぞ、Eランクのカードです」
「ありがとうございます」
受け取った金属製のカードには「E」の文字が浮かんでいる。実はこのカードも結構謎アイテムなんだよな。討伐数とかが記録されるらしいし。
「これでオクノさんはEクラスダンジョンに入る資格を得ましたが、町を出るのは少し待っていただけませんか。例のツノの照会結果がまだ届いていないので」
「分かりました。どのくらいかかるんでしょうか?」
「普段なら1週間ほどで来ますので、あと3~4日ですね」
この世界も一週間は7日だった。ただ週休日と言う習慣はないらしい。世界そのものがブラック……というほどあくせくした世界ではない感じなのが救いだな。
「自分も武器屋に頼んでいるものがあるのでそれまではここにいるつもりです」
「助かります。EランクになってもFクラスダンジョンでの素材回収はポイントになりますので、いままで通りお願いできればと」
「そうですね。他の街に行くとなるとお金も必要でしょうからせいぜい稼ぎますよ」
とキサラ嬢を安心させてやっていると、ギルド前に馬車が止まる音がした。
ギルドに入ってきたのは二人の人間であった。
一人は高級そうな洋装をビシッと着こなした俺より少し若い……壮年の男で、見るからに切れ者といった感じのエリート特有のオーラを漂わせている。
もう一人は銀のロングヘアを腰まで流した若い女性で、真紅の軽鎧を身につけ、
どちらもが一見して
女性が近くのギルド職員に声をかけると、二人はそのまま奥の部屋に案内されて行ってしまった。
「今のは?」
「男の人はこの一帯を治めているバリウス子爵家の家令の方ですね。前に一度見かけたことがあります。女の人はもっと有名な人です。元Aランクの冒険者で、今は子爵家の騎士になっているアナトリアさんですね」
キサラの表情がちょっと硬い。貴族の関係者、しかもその1人が家令ということは側近中の側近だ。硬くなるのも当然か。
しかし冒険者には騎士として召し抱えられるというルートがあるようだ。ゆくゆくはキャリアプランも考えないといけないのだろうか。
「そこまでの方がいらっしゃったということは、相応のなにかがあったということでしょうか?」
「ええ、たぶんこの間のゴブリンの集落について領主様の対応が決まったんだと思います」
「もしかして冒険者が駆り出されるって話に?」
「なりますね。ちなみにEランク以上は強制参加になります」
「え……っ?」
ちょっと、このタイミングでそれはないでしょうよ。まさかギルドにハメられた……なんていうのはいくらなんでも自意識過剰だな。
最速ランクアップしたとしても、自分なんて単なる数多いEランク冒険者の一人でしかないのだし。
「ぶははははっ、おっさんツイてねえなあ!」
その夜昇格にかこつけてカイムたちと飲んでいると例の領主様の使いの話が出た。
当然どの冒険者もゴブリンの大規模討伐の話がでるのだろうと勘付いている。
で、俺が昇格した途端強制参加になると知って、カイムが大ウケしたのである。
「ソウシさんの昇格は話を聞くと納得できるっすけど、それにしても早くないっすか?」
「ああ、どうも一人だったから討伐のポイントが割増されたみたいだ」
少年ラベルトの問いに俺が答えると、槍使いの美人ラナンが相づちをうつ。
「なるほど、それは当然だろうな。ソロでダンジョンに入っていることは評価されるべきだ」
「おっさんの場合誰も組んでくれないってだけだろ。ひひひっ」
「カイム、失礼でしょ!」
悪乗りするカイムの頭に魔法使いメリベの拳が落ちる。結構いい音がしたが、まだ笑ってるところを見ると大丈夫らしい。
ひとしきり笑うと、カイムは俺の横に座って肘でつついてきた。
「ところでおっさん見たんだろ、『
「いやすまん、装備ばっかり見てて顔をあまり見てなかった。あんまり顔を見てると怒られそうだったしな」
「なんだつまんねえな、俺も少し早く上がっとくんだったぜ……ってイテッ!」
どうやらメリベにつねられたようだ。
ラベルトがそれを見てニヤつきながら言った。
「『紅のアナトリア』、もしかしたらゴブリン討伐の時に出てくるかもっすね。いいところを見せるチャンスっすよ」
「おう、そうだな。目に止まるような活躍をしてお近づきに……だから痛えって!」
「元Aランクが出てくるような話なのか、ゴブリンキングって?」
Eランクの自分ですら普通の人間が遠く及ばない力を持っている。Aランクとなると恐らくすさまじい力を持っていると思うんだが……。
「正直Cランクがいれば余裕だと思うっす。ただ冒険者の数を揃えないといけないっすから、餌が必要なんすよ」
「エサ……? ああ、有名人で人を集めようってわけか」
「そうっす。皆そういうのが好きっすからね。半分祭りみたいなものっすよ」
「それはまたしたたかと言うか、冒険者は強いな」
正直娯楽の少なそうな世界である。冒険者が大討伐任務を祭り扱いにするのも分からなくはない。
俺が酒で口を潤していると、メリベがカイムをつねったまま俺の方を向いた。
「ところでソウシさんは、今度のゴブリン討伐が終わったら別の街に行かれるんですか?」
「そうだな。できる限りあちこち回ってスキルも集めたいし、Eランクのダンジョンも入ってみたい。準備ができたら行くつもりだ」
「そうですか……。ソウシさんは外国の方ですもんね。この町にいる必要はないんですよね」
メリベが少し羨ましそうな顔をする。それを見て俺はちょっとピンときた。
「もしかして『銀輪』の皆がこの町にいるのは、ここ出身だからなのか?」
「おう、そうだぜ。皆家族がいるからな。この町でそれなりに稼ぎながらやって行こうってわけだ」
つねり攻撃からようやく解放されたカイムが言う。
「そうか。故郷や家族っていうのは大切だからな」
「まあな。一回外に出てDランクになってから戻ってこようって話もあんだけど、踏ん切りがつかないとかいろいろあってよ」
「外に出るのは金も時間もかかるしな。家族も心配するだろうし、そう簡単には動けないか」
「そういうこった。ある意味おっさんがうらやましいってのはあるぜ。強くなりたいってのは俺も思う時あるわ」
そう言って少し遠い目をするカイム。それを何とも言えない表情で見つめるメリベ。なるほど彼らにも色々と葛藤があるようだ。
それでも若ければ、きっと何とか都合をつけてやりたいことをしようとするだろう。
その時のために先にランクを上げておいて、今度は俺が彼らを導く側になるのもいいかもしれないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます