2章 新人冒険者として 04
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冒険者レベル5
武器系
メイス Lv.6 短剣 Lv.4
格闘 Lv.2(new)
防具系
バックラー Lv.6
身体能力系
体力 Lv.7 筋力 Lv.8
走力 Lv.7 瞬発力 Lv.8
反射神経 Lv.6
感覚系
視覚 Lv.5 聴覚 Lv.4
嗅覚 Lv.3 触覚 Lv.3
動体視力 Lv.6 気配感知 Lv.6
精神系
冷静 Lv.4 思考加速 Lv.3
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翌朝も早朝トレーニングを行い、大岩ダンジョンへと向かった。
一泊で討伐任務に行ったにもかかわらず身体は絶好調である。この身体が前世日本でも欲しかったとちょっとだけ思ってしまう。
レベルが上がったこともあり、ダンジョン地下3階は完全にノーダメージで行けるようになった。格闘にも慣れておきたいと思い、ゴブリンは素手(というか籠手)で殴って倒した。
地下4階は『ボアウルフ』が出るようになるらしい。今の俺なら大丈夫だろうと判断し、4階へ下りる。
地下4階も同じ岩をくりぬいた感じのダンジョンである。ここからゴブリンはいなくなる。ロックリザードを叩き潰しながら進むと、『気配感知』に大きめの気配がひっかかる。
ボアウルフだ。目が合うとそいつは猛然とダッシュしてきた。コイツの突進は基本的には正面から受け止めるしかないらしい。俺はメイスを両手で握り、突っ込んできたボアウルフの頭めがけて振り下ろす。
完璧なカウンターでメイスが脳天にめり込み、ボアウルフの顎が地面に叩きつけられる。
さすがに勢いは殺しきれずその身体を受け止める形にはなったが、ノーダメージで倒すことができた。
落ちたのは魔石とひと固まりの肉である。俺がいつも食っている肉串がこれらしい。両方回収して俺は先へと進んだ。
「あれ? アンタ一人でここまで下りて来てんの?」
途中でまだ面識のないパーティと出会った。10代後半と見える少年少女3人のパーティである。話しかけてきたのはリーダーと思われるやせ気味の少年だ。
「ああ、一人でもなんとかなるもんだよ」
「いや、さすがにボアウルフは無理だろ」
「そうでもない。先制を取れれば何とかなる」
俺の言葉が自信ありそうに聞こえたのか、少年は肩をすくめて「イカれてるぜ」と言った。
「まあいいや、オレたちには関係ねえしな。じゃあな」
そう言い捨てて、彼らは奥へと進んでいった。
ふむ、しかしイカれてると言われるほどのことはないと思うんだが。スキルとレベルを上げて、相応の経験を積めば一人でも行けるレベルだろう。受付嬢のキサラも「Eランクなら」と言っていたし。
……ということは、俺はすでにEランクくらいの力があるってことだろうか?
いや、予断はしないほうがいいな。だいたい別に特別なことをしているわけでもない。自分だけが他人より強くなるということはないだろう。
その後4階をうろついてみたが、ボアウルフが出てきたのは結局合わせて2回だった。やはり出現率はそこまで高くないらしい。
5階まで行こうかと思ったが、5階に下りるならそのままボスと戦いたい。今日のところはこれで切り上げて残りはトレーニングの時間にするか。
「はぁ? 一人でボスと戦うって、おっさん正気かよ」
その夜食事の時にカイムにボスの情報を聞こうとしたらやはり驚かれてしまった。
「なんでそんな急いでんだよ。おっさんなんだからゆっくりやってりゃいいだろ。せめてパーティ組んでからにしろよ」
「そうっす。ソウシさんは強いとは思うっすが、さすがにボスは一人はキツいっすよ」
ラベルトも心配そうな顔をする。メリベとラナンの女性2人もその言葉に頷いている。
「もちろんいけそうだからやるんだ。特殊スキルも手に入れておきたいしな」
「まあそれはわかるっすけど……」
「おっさんはあれか、世界最強とか目指してんのか?」
カイムがなにか痛いものを見るような目で俺を見てくる。若者にそういう扱いをされるとさすがにツラいな。
「そんなんじゃないさ。だけど強くなっておくにこしたことはないだろ?」
「まあそりゃそうだけどな。この町はのんびりしてっけど、デカい町に行くと低いランクの冒険者は馬鹿にされるしな」
ああ、やはりそういうこともあるんだな。ならばなおさらランクは上げておかないといけないだろう。
「ま、酒おごってくれんなら教えてはやるよ。ったくしょうがねえおっさんだぜ」
「いつも悪いな。よろしく頼む」
俺は礼を言いつつ、女将さんに酒を注文した。
翌日大枚をはたいて上位のポーションも買い足し、メイスの状態を武器屋の親父に見てもらって、俺は大岩ダンジョンに向かった。
ちなみに武器屋でダークメタル棒を買い足したいと言ったら仕入れないとないとのことであった。2本仕入れてくれるように頼んだら武器屋の親父に変な顔をされたのは言うまでもない。
もはやゴブリンもロックリザードもボアウルフも敵ではない。一撃で殴り倒し素材を回収しまくって5階まで進んだ。
背負い袋をパンパンにしながらたどりついた地下5階は壁の色が茶色から灰色っぽくなっており、いかにも最下層という雰囲気であった。
出てくるザコモンスターは4階とほぼ同じ、今日はダンジョンに一番乗りなので先行するパーティはいない。
しばらく地図通りに進むと、石でできた扉が見えてきた。縦横3メートルくらいの、家の玄関を一回り大きくしたような扉だ。
ダンジョンで見る初めての人工物だが、こんな石の扉、作ろうとしたら相当にコストがかかる。ダンジョンの不思議ギミックの一つということだろう。
「さて、ポーションよし、防具の固定よし、メイスも問題なし。よし、いくか」
口に出して確認をして、石の扉を押して開ける。
中は四角い石造りの部屋だった。部屋と言うより倉庫と言った方が近いか。床面積はバスケットのコートくらいある。
俺の背後で扉が閉まると同時に、部屋の向こうに黒い
ガイドにあった通り、またカイムに聞いた通り、一回り大きなボアウルフだ。『ベアウルフ』と言うらしい。
「実際よりデカく見えるからビビんなよ」と言われたが、確かにデカく見える。前足周りの筋肉も異常に発達しているし。
しかも頭部には牙だけでなく、巨大なツノまで……ん? ツノ?
ここのボスにツノがあるなんて聞いてないが。だって名前からして『ベア(熊)』だし……。
「まさか特殊なボスとかないよな。ボスの上位種とか……勘弁してくれよ」
ツノがあるとなればさすがにカイムも真っ先にそれを注意するだろう。それを言わなかったとなるとコイツは特別なボスと考えた方がよさそうだ。
結果これが普通だったとしても笑い話で済むだけだしな。
俺は頭を切り替える。相手のベースがボアウルフである限り基本的な戦い方が変わるわけではない。
どちらにしろあのツノ付きの突進をマトモに受けたらそれで終わりである。ザコのボアウルフならギリギリ耐えられるが、今目の前にいるボスウルフ(仮)はどう見ても体重は200キロ以上ある。体重差は3倍だ。
バフッ!
ボスウルフは鼻息を一つ漏らして突進を開始した。頭を低めに構えているのはツノで突き上げるつもりだろう。
その体当たりを受ける寸前、俺は横に跳び退いた。
もちろん普通に横に跳んだくらいなら余裕で反応されてしまっただろう。
しかし『覚醒』により高まった身体能力と『瞬発力』や『筋力』スキルの力によって、俺は一瞬で5メートルほどを跳べるのだ。
相手を見失ったボスウルフはたたらを踏んで急停止、振り返って俺を探す。
俺が待っていたのはその隙だ。一気に距離を詰め、振り向こうとするボスウルフにメイスを叩きこむ。
狙いは……足だ。
俺は身体を低くして、突っ込みながらメイスを横薙ぎに振り切った。
ブオオォッ!
左前脚を粉砕され、悲鳴を上げるボスウルフ。しかしそこで止まらないのがボスたるゆえんか。体勢を崩す前に後ろ足で地を蹴って無理矢理タックルを仕掛けてきた。
攻撃直後の隙を狙われ、俺はそのタックルを食らってしまった。幸いツノは防具が防いでくれたが、激しく吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
一瞬息が詰まる。だが頭は冷静に体勢を立て直せと警告を出す。
俺は飛びのくようにして立ち上がる。ボスウルフは3本足になりながらも、執念の塊のように俺に迫ってくる。
俺はメイスを両手で握り直し、眼前に迫ったボスウルフの眉間めがけて振り下ろす。
渾身の一撃は、見事にボスウルフの頭蓋を砕いた。両手に凄まじい手ごたえが返ってくる。
それでも暴れるボスウルフ。狂ったように頭を振り回し、ツノで俺の身体を貫こうとする。
足を止めての殴り合いか、受けて立つしかなさそうだ。
そう思った時、全身が妙にいきり立つ感じがした。目の前が赤くなり、意識が攻撃だけに切り替わる。
「倒れろ……クソがぁっ!」
自然と何かを叫んでいた。何度もメイスを振り下ろす。
ボスウルフのツノが俺の防具をへこませ、腕や足を切り裂く。
俺のメイスはボスウルフの横面を何度も吹き飛ばし、ムカつくツノを叩き折る。
ブモォ……オオォォォ……!
どのくらい殴りあっただろうか。断末魔の叫びとともにボスウルフの身体はズシンと地面に横倒しになった。
しばらくすると死骸はダンジョンの床に吸い込まれ、後には野球ボール大の魔石と立派な角が残された。
「はぁ……ふぅ、やった……んだよな」
俺の頭が冷えていく。おかしいな、ずっと冷静だったはずなんだが、途中から記憶が飛んでいるような気がする。
いや、かすかに憶えている。無我夢中で攻撃していた記憶。どうも興奮して我を忘れていたようだ。代わりに力がみなぎっていた感じもある。まさかこれもスキルなのか?
「あつつ、ポーションを使わないと……」
吹き飛ばされたダメージで全身が痛むが、骨には異常はないようだ。しかし身体のあちこちに傷がある。ツノで引き裂かれたのだろう。
ポーションを使って回復しようとした時、急に身体が軽くなったような気がした。今までにない感覚だ。
「ああ、これがカイムの言っていたやつか」
どうやらこれが特殊スキル取得の感覚らしい。さて、どんなスキルを得られたのか。このワクワク感はまるでくじ引きだな。
しばらくじっとしていると、脳内にスキルの知識がじんわりと流れ込んできた。
「『再生』……傷とかの治りが早くなる奴か?」
ふと腕の傷を見ると、ポーションを使った時のように治っていくところだった。その速度はさすがにポーションを使った時よりは遅いが、それでも普通の現象ではない。
「お、全部治ったか。これかなりいいスキルじゃないか」
5分程かかったが、手足の傷はすべて消えてしまった。マンガとかでこういう能力をもったキャラクターはよく見た気がするが、まさか自分がそうなるとは。
ともかくも
俺は魔石と2本のツノを回収して、そのままダンジョンを後にした。
もちろんボスを攻略したからといって、いつものトレーニングを欠かすことはしない。気分がいい時こそ苦しい作業ははかどるものなのである。
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