2章 新人冒険者として 01
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冒険者レベル4
武器系
メイス Lv.5 短剣 Lv.3
防具系
バックラー Lv.5
身体能力系
体力 Lv.5 筋力 Lv.6
走力 Lv.5 瞬発力 Lv.6
反射神経 Lv.5
感覚系
視覚 Lv.4 聴覚 Lv.3
嗅覚 Lv.3 触覚 Lv.3
動体視力 Lv.5 気配感知 Lv.5
精神系
冷静 Lv.3 思考加速 Lv.2
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第二の人生をせいぜい長生きするためには、とにかく強くならないといけない。
そんな事実が判明したため、俺は多少のオーバーワークを覚悟の上で夜が明ける前からのトレーニングを始めることにした。
町の入り口でダークメタル棒を振り回してみると思ったよりかなりキツい。
なにしろ自分の体重より重い棒だ。振り回すといっても重心を考えないとならず、なかなかに難儀である。
ただ普通にダンベルのように扱う限りでは物足りないくらいの負荷ではある。この辺り俺は完全に人外に近づいてしまっているようだ。
とにかくこの棒を持っていろいろとトレーニングをした結果、やはりスキルの伸びがいいことが確認された。
そして買い置きしていた肉串を食う。冷えて硬くなっているが構わず食う。染みわたるタンパク質。これで素の筋力も上がっていくことだろう。多分だが。
日が登ったら時間を合わせて大岩ダンジョンに行く。筋トレも大切だが金を稼ぐことも重要だ。
地下3階までのルートはもう記憶している。朝のうちにスキルも上がっているから昨日より戦えるだろう。俺は迷わず3階に下りてみた。
ゴブリン5匹はすぐに来た。小細工せずに正面からメイスを横殴りに振り切る。
右側3匹が吹き飛び、左の2匹は木の棒を弾き飛ばされ硬直する。もちろんその隙に残り2匹も一息に殴りつける。
なんだ、力押しでいけるじゃないか。
次はロックリザード4匹。大口を開けて同時に突っ込んでくる。
さすがに正面からぶつかるのはまずい。俺は左にステップし、左端のロックリザードをすくい上げるようにして殴りつける。
方向転換してくる残り3匹は、俺が左に動いたせいでちょうど縦に並んで突撃してくる形になった。
一匹づつカウンターで横っ面を張り倒していくと、難なくかたがついてしまった。動きが遅めのモンスターはやはり位置取りが重要なようだ。
お、思考がさらに研ぎ澄まされた気がする。このまま3階を進んでみるか。
結果として、3階は「いける」ということが分かった。モンスターの数が多いぶん稼ぎもいい。
調子に乗っていたら一回だけロックリザードに足を噛まれてしまったが、すぐに倒したのとポーションで事なきを得た。
かなりの数のゴブリンとロックリザードを倒し、冒険者レベルが1上がり、4階への入り口を確認したところで今日は引き上げることにした。
時間が余ったのでトレーニング場(仮)に寄ったのは言うまでもない。
「オクノさん、やっぱり無理してませんか?」
受付のキサラ嬢が、大量の収穫を前に疑わしそうな目で俺を見る。
さすがに今日はちょっと無理をしたかもしれないが、それを認めると面倒になりそうなのでとぼけることにする。
「いや、別に無理はしていないと思いますよ。身体も大丈夫ですし」
「でも足のそのズボンの破れ、噛まれた跡じゃないですか」
さすがにプロだ、その辺りは見逃さないか。
「ああ、これはそうですね。でもポーションも用意してますから」
「冒険者って最初の3ヶ月が一番危ないって言われてるんです。くれぐれも気をつけてくださいね」
「ありがとうございます。私もまだ死にたくはありませんから気をつけますよ」
100,000ロムを超えるお金を受け取りつつ、俺は視線を逸らすようにして掲示板の方に目を向けた。
基本的にそこにはダンジョンで出現するモンスターの情報が張り出されているのだが、稀にフィールドに出現するモンスター討伐の依頼が張り出されることがあるらしい。
とはいっても駆け出しのFランクにはほぼ関係はないのだが……。
「あ、そうだ。今ゴブリンの討伐依頼が出ているんですよ。近くに小さな集落が見つかったんです。たぶんEランクの『銀輪』が受けてくれると思うんですけど、オクノさんもどうですか?」
「え?」
いきなり妙なオファーが来た。『銀輪』というのは例の世話好き青年のパーティの名前である。
「それって嫌がられるでしょう?」
「いえ、実はEランク以上の冒険者にとって、新人の研修に協力するというのはいいポイント稼ぎになるんです」
「ポイント?」
「ええ、ランクを上げるために必要なポイントです。ギルドでも新人育成は力を入れていまして、その一環でもあるんですが」
「なるほど。私を討伐依頼に連れていくことで彼らにポイントが入るわけですね」
「ええ。オクノさんはカイムさんと仲良さそうに話をしてましたし丁度いいかと。もちろん討伐依頼に参加するのはオクノさんにとってもポイントになります」
「ふむ……」
これは結構いい話ではないだろうか。討伐依頼というのも経験してみたいし、ゴブリンの集落というのも興味がある。なによりEランクパーティの戦いぶりを見られるというのはかなりデカい。
「分かりました。もし『銀輪』が承諾してくれるのなら是非参加させてください」
「はい。じゃあ今日『銀輪』が戻ってきたら話をしておきますね」
そんな感じで、初の討伐依頼参加が決まってしまった。
「おうおっさん、ゴブリンの集落潰し、一緒に行くことになったぜ」
俺が食堂で飯を食っていると、戻ってきたばかりの青年……カイムが話しかけてきた。
改めて見ると、茶色の髪を短く切りそろえた、体格のいいまあまあなイケメンである。
「ああ、受けてくれたのか。ありがたい、助かる」
「まあこっちもポイントになるしな。おっさんなら変な動きはしなさそうだしよ」
「もちろんそちらの指示には従うさ。討伐依頼自体初めてだしな」
「それがEランクへの近道だぜ。出るのは明後日だ。明日準備をしといてくれ。ポーションは最低3本、あと携帯食が3日分だ。水筒も忘れんな。途中で村があるから水は補給できる」
「わかった。日程はどんな感じになるんだ?」
「初日に現場近くまで移動。2日目朝に集落潰して、余裕があれば一気にトルソンに帰ってくる。余裕がなきゃ途中の村でさらに一泊だな」
「なるほど。他には?」
「後はまあ、夜外で寝るからマントとかもあった方がいいか。男だから食う寝るが何とかなりゃ大丈夫だろ」
「そうだな。ありがとう、用意しておく」
「おう、じゃあな」
手を振ってカイムは自室に向かっていった。やはり面倒見のいいタイプのようだ。最初に知り合ったのが彼でラッキーだったな。
俺は飯を食い終えると、早起きの代償として襲ってきた眠気と戦いながら部屋へと戻った。
翌朝も日が昇る前からトレーニングを行う。
ダークメタル棒は非常に役に立つ。資金に余裕ができたらもう一本買ってもいいかもしれない。
ただし取り扱いは注意だ。持ったまま宿屋に入ると床がかなりきしむ。2本持って入ったら確実に床が抜けるだろう。この辺りを解消できるスキルもあるらしいが、ダンジョンボスを何匹倒して得られるかは神のみぞ知る、だ。
カイムたちは今日は休むと言っていたが、俺は岩山ダンジョンに向かう。今は少しでも経験を積まないと不安の方が先に来る。もちろん少し早く上がって準備はするつもりだ。
地下3階は完全に問題なくいける。ゴブリンは正面からの力押しで相手が攻撃する前にすべてメイスで吹き飛ばせる。
集落というのがどのくらいの規模かは分からないが、少なくとも戦闘でカイムたちEランクパーティの足を引っ張ることはしないで済むだろう。
帰りにふと気付いて、トレーニング場(仮)では素手での格闘のスキルが得られるかどうか試してみた。
武道は高校の時の授業で剣道と柔道をちょっとやっただけだ。だがモンスター相手に必要なのは打撃系の武術だろう。
聞きかじりの知識でパンチの動作を反復練習すること1時間、急に拳がスムーズに出るようになった。
『格闘 LV.1』を得たということか。蹴りも行ってみて1時間、『格闘 Lv.2』になったところで陽が傾きかけているのに気付いて慌てて町へ帰った。
上達が目に見えて分かるのが楽しくて、トレーニングが全然苦にならない。天才的なスポーツ選手が言う「楽しい」とかいう感覚はこういうことなのかもしれないな。
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