第40話 相性の悪い二人

 町の出口に向かうと、リュウウェルとラミリーと南雲が待っていた。リュウェルは、一人で空を眺めており、ラミリーと南雲は何かを言い争っている様子だ。


 俺が、その一団に近づいていくと、真っ先にリュウウェルが気づいた。


「思っていたよりも早かったね、京介。」


「ああ、紗雪のおかげだ。…ところで、南雲とラミリーは何で喧嘩してるんだ?」


「……さあ?」


 どうやら、リュウウェルは面倒くさそうなので、早々にラミリーたちと関わる事を諦めたらしい。


 まあ、正解だと思うし、俺もそうしたいのだが、南雲のことは俺が連れて行くと言った以上、簡単に無視はできない。


 そのため、面倒だと思いながら、言い争っている二人に近づいていった。


「…なあ、お前らは、どうして初対面で喧嘩してるんだ?」


「あ、京介、やっと来たわね。さっさと、このガキンチョをお家に帰しなさいよ。」


 質問の答えになっていない。俺は、どうして、ラミリーが南雲を帰したいと思っているのかを聞いているのだが。


「誰がガキンチョっだって?ラミリーだって、人のこと言えないと思いまーす。」


「何気さくに名前を呼んでるのよ。私は、あんたと違って、何千年も生きてるんだから、そもそも経験が違うのよ!」


「分かったから、どうしてこんな風な喧嘩になったのかを、教えてくれ。」


 少し語調を強くして、二人に向かって告げた。このままでは、一向に話が進まない。急がなければならないというのに、この調子で、龍神谷までの道中で喧嘩をされてしまっては敵わないのだ。


 俺が、少し怒ったように見えたのか、急にラミリーが大人しくなった。南雲の方は、元から冷静だったようで、俺の態度にも動じず、経緯を説明しはじめた。


「何か、出会った瞬間、ラミリーが急に私に怒ってきたんだよねー。京介に寄るなーとか、早く帰れーとか。」


「…それだけか?」


「うん、最初からずっとこんな感じ、だから私も何でラミリーが怒ってるのか分かんないんだよねー。私は、理由のない暴力に晒されてる!断固、保護を求めまーす!」


 南雲が多少面倒な性格をしているのは、今のことからも分かるが、この話を信じると、ラミリーが完全に悪いということになる。


 ラミリーの方を確認の意味で見やると、ばつが悪そうな顔をして、言い返すような様子もない。


 つまりは、ラミリーの俺に多少依存している、面倒な性格のせいで、こういうことになってしまったらしい。


 俺は、ため息を一つ吐いて、ラミリーに声をかけた。


「南雲は、別に俺が好意を持ってるから連れて行くわけじゃない。こいつは馬鹿だが、才能があるから実戦経験もかねて、連れて行くんだ。」


 それを聞いた瞬間、ラミリーは急に上機嫌になり、南雲に向かって口を開いた。


「……ふふっ、今の聞いた?あんたは別に、気に入られてるわけじゃないんだから、勘違いしちゃ駄目よ。」


 また、喧嘩をふっかけるような事を言う。


 注意しようと思ったが、南雲が意外にも冷静に受け流した。


「はいはい、分かりましたー。」


 南雲は大人だな。これでは、どちらの方が長生きしているのか分かったものではない。


 しかし、これで、とりあえずは、ラミリーの機嫌も直り、龍神谷に向かうことができる。


 俺は、ラミリーたちから離れた場所に立っていたリュウウェルに声をかけて、出発することを伝えた。


 こうして、あまり相性の良くない、ちぐはぐなパーティーで一週間かけての龍神谷に向けた旅が始まった。


 正直、結構な不安を覚えざるを得ないほど、前途多難だった。

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