第24話 決着
蛇王はもう言葉を発しない。先程まで、甲高い声でわめき散らしていたのも、肉弾戦を仕掛けてきたのも、この本来の姿を取り戻すための時間稼ぎのつもりだったのだろう。
蛇王は遊びはいらないとばかりに、その巨体で容赦なく俺をすりつぶそうとしてくる。
それに対して、俺は宝剣を掲げる。そして、その宝剣に名を告げる。
「…封剣。」
その瞬間、元の宝剣の輝きは失われ、全身が暗黒に染まった封剣へと変化する。
全てを断ちきる宝剣の別の形、全てをその刀身に、封ずる暗黒の封剣。
それを迫り来る、蛇王に突き立てると、蛇王の体が眩く光った。
「ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
蛇の甲高い叫び声が聞こえる。
その巨体は暴れ回り抵抗を試みるが、光を発しながら徐々に小さくなっていく。そして、最後には元の人型の姿だけが残った。その人型の姿にも依然、封剣が突き刺さっており、蛇王の全身は未だに発光していた。
蛇王の全てを封ずるには、まだ少し時間がかかるのだろう。しかし、蛇王にはここから、もうどうすることもできない。一度封剣を突き立てられた者は、この世界との関わりを断ち切られ、封剣の刀身へとその存在を移す。そのため、今見えている蛇王は、すでにこの世界に干渉することはできない。
「おいおいおいおい、冗談だろ。」
蛇王の声が聞こえる。世界との関わりは断ち切られているが、まだ封印途中という曖昧な状態なため、声だけは届かせることができるのだろう。
「まだ、こんなモンを隠してやがったとはなあ。まさか、俺様の全てを封印するために、俺様が本来の力を全て取り戻すのを待ってたのか?だとしたら、笑い話じゃねえか!時間を稼いでたつもりが、稼がされてたんだからなあ!!」
蛇王は一人で延々と喋り続ける。俺は最初から、こいつと一言だって会話を交わすつもりはなかった。
「やっぱり強えよ、お前は。だがな、弱くなったのは間違いねえ!力をわざわざ抑えてやがるからなあ!何の意味がある?ただの人にでもなりてえのか?…笑わせんじゃねえ!これほど強大な力を持って、ただの人になんてなれるかよ。お前は、ただの人にはなれねえ、ただの人として関われねえ!!その力がある限り、お前は何処まで行っても軍神なんだよお!!」
蛇王の姿は消えかかっている。後は、大した時間もかからずに、完全に封印され、この世界から姿を消すだろう。
「…あーあ、もう終わりかよ。千年の月日がこの程度で終わるなんてなあ。せめて、今の言葉が、千年お前を蝕む呪いの言葉になることを祈るぜ。」
それを最後に蛇王の姿は完全に消滅し、後には器であるアリアだけが残った。
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