第20話 蛇王の復活
「アリア、お前はどうして、今この話を俺に聞かせたんだ?」
「…さあ?…どうして何でしょうね?」
アリアは下を向いていて、表情を窺い知ることはできない。
「……分からないんですよ……もう…。」
アリアは呟く。
「…もう…私は……私じゃないから……。」
アリアは顔を上げる。
その顔の半分は蛇のような顔へと変貌していた。
アリアは、残った半分の元の顔だけから涙を流し、言葉を発する。
「私は……京介さんに…どうして欲しかったんで…しょうね?」
瞬間、アリアの姿が光った。
やはり、一族の悲願とは、蛇王の復活。
おそらく、刻印とやらと蛇王の呪いが反応することによって、刻印を持つ蛇王の血族の魂を蛇王の魂で上書きする仕組みだろう。
アリアが昏倒状態から抜けられたのは、魂が二つあったためだ。蛇王の魂が、アリアの魂を起こしたのだ。俺の施した結界を抜けられたのも、蛇王の力ならば納得できる。
そして、先程アリアが、自分を少女として話をしたのは、すでに自分を客観視しかできない状態となっていたからであろう。
長い時間をかけ、ようやくアリアから発せられた光が、消えたかと思うと、そこにアリアの姿が無かった。
あるのは、蛇と人間を混ぜ合わせたような醜悪な顔のみであった。
元の綺麗なピンクの髪も、今や真っ白に染まってしまっている
「ふぃ~~、よ~やく復活かよ、クソッタレが。」
元々の可愛らしい声音を微塵も感じさせない、妙に甲高く響く声音で、その化け物は告げた。
「…大体、千年くれえってとこか?俺様が眠ってたのは。」
その化け物は、そう言うと辺りを一通り見渡しながら、大きく息を吸った。
「この辺りも変わっちまったなあ、おい。随分と見晴らしも雰囲気も悪い景色になっちまいやがってよお!」
「クソッタレな森、クソッタレな空、クソッタレな空気!そして、何よりクソッタレな墓場!!」
両手を広げながら、無意味に甲高い声を張り上げる。
「あのとびきりクソッタレな軍神の野郎に関わるモンだと思うと、虫唾が走るぜ。こんなモンで俺様を倒した功績を誇示してるつもりかよ!!」
化け物は怒り狂ったかと思うと、今度は急に冷静になり始めて、俺の存在に気づいたかのように、声をかけてきた。
「な~んで、こんなとこに人間がいんだよ。」
俺は答えない。こいつと話をするつもりなど毛頭無いからだ。
「…待てよ。ただの人間にしちゃあ、妙だな…。あのとびきりクソッタレな軍神の匂いが微かにしやがる…。お前、もしかして…軍神か?」
俺は依然何も言葉を発さない。俺が、話をしなければならないのは、こいつではない。
「…おいおいおい、マジに軍神のクソッタレじゃねえか。…ツいてる、最高にツいてるじゃねえか!忌々しいクソッタレの方から、出迎えてくれるなんてよお!」
「わざわざ、探しに行く手間が省けたぜ。しかも、何の冗談かただの人に擬態してやがる。それとも、本当に力でも失ったかあ?だからといって、容赦はしねえがなあ!!」
空気が震える。こいつの発した殺意だけで、この周辺にいた生物は軒並みこの近辺から離れていった。
こんな奴でも、一応は蛇の王の名を冠している。そこらの魔獣とは、格が違う。獅子と蟻ほどの実力差があるだろう。
紗雪を置いてきたのは正解だったな。
生物が消え去った事により、辺り一帯が異様な静寂に包まれる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます