第10話 アリアという少女との出会い
「何か用事?申し訳ないけど、今からしばらくこの町を留守にするわ。用事なら、代理を立ててるから、そっちにお願い。」
「用事ではなくてですね、私、町で領主様が病の解決に蛇王の墓所に向かわれるといった話をお聞きしたんですが、それは本当ですか?」
一体、どこからそんな噂が漏れたのだろうか。昨日このことを決め、今日行動しているのだから、噂が広まるような時間は無かったと思うのだが。
まあ、別に特別隠していた訳でもないし、知っている人がいてもおかしくないのか。そんな風に、一人で納得していた。
「ええ、本当よ。」
紗雪も別に隠すような事はせずに答えた。
「でしたら、私も連れて行ってください。私の両親がその病で倒れてしまって、いてもたっても居られないんです。」
「気持ちは分るけど、危険が大きいわ。止めておきなさい。」
「そこをどうにかお願いします。足を引っ張るような真似はしませんから。一応冒険者なんですよ、私。」
紗雪はにべもなく断ったが、少女の方も簡単には引き下がらない。
それから、しばらく似たような問答が続いたが、最後には紗雪が折れた。
「もう、そこまで言うなら分ったわ。こんなことでこれ以上時間を食いたくないし。」
紗雪もこの少女を説得することは難しいと判断したのだろう。ため息交じりに、承諾した。
「ただし、自分の事は自分で責任を持つこと。私も、守れる範囲で守りはするけど、死んでも責任は取れないから。」
最後に、紗雪は強い語調で脅しのような言葉を投げたが、少女はそれを気にした様子もなかった。
「ありがとうございます、ありがとうございます。」
少女はひたすら頭を下げ、感謝の言葉を続けている。
「そういえば、私名前言ってませんでしたよね?…私の名前はアリアって言います。精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。」
両手を前に掲げて握って見せた。やる気があることをアピールしているのだろう。
「よろしくね、アリア。知ってるだろうけど、私の名前は紗雪。」
「もちろん知っています。ただ、領主様のことを名前で呼ぶなんて恐れ多いです。」
「まあ、好きなように呼んでくれて良いわ。それで、こっちの男が私が食客として雇っている人で、名前は京介。」
紗雪に紹介されたので、軽く手を挙げて応じる。
「京介さんですか。よろしくお願いしますね。」
「ああ、こちらこそよろしく。」
こうして、突然現れた少女、アリアとの自己紹介を終え、俺たちは急造の三人パーティーで蛇王の墓所へと向かうことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます