第11話 三人パーティーでの冒険
蛇王の墓所までは、休憩をする時間や、野宿をする時間を考えても、二日ほどあれば辿り着く予定であった。
移動の手段は基本的に馬車だ。そして、その御者台に乗って、馬を操っているのは、俺だった。
アリアははじめは緊張していたようだが、次第にその緊張も解けていき、町から出て数時間経った頃には、このパーティーの中の誰よりも喋っていた。元々、俺と紗雪はそんなに喋るタイプではないので、アリアが加わったことで期せずして、会話の多い旅路になった。もしかしたらアリアは、無言の空気を嫌ったのかもしれなかった。
次第に辺りが暗くなってきたところで、紗雪が、ここで野宿をすることを宣言した。
野宿の準備を整えると、火がなければ辺りが見えなくなるほど、暗くなった。月明かりの下、俺と紗雪とアリアの三人で食事を取っていた。
「ふはー、良かったですね、今日は魔獣に襲われなくて。」
アリアは、一旦食事の手を止め、背伸びしながらそう言った。
「まあ、魔獣が整備された街道に出ることなんて稀だけどね。」
「でも、必ず出ないわけじゃないんですよ。やっぱり、喜びましょうよ。」
アリアはそう言うと、紗雪の方に顔を近づけた。紗雪は、うっとうしそうに片手でアリアのことを払っていた。
しかし、この短時間で二人は、結構仲良くなったように感じる。その一番の理由は、アリアの積極性だろう。アリアは、絶えず、紗雪に話題を振っていたし、今みたいに物理的に距離を近づけたりもしていた。紗雪も、つれない素振りを見せているが、どこか嬉しそうに見えた。
紗雪は領主という立場もあって、同じ年代の友達がほとんどいないため、こういう経験は貴重なはずだ。そのため、俺は内心でアリアに感謝していた。
「京介、何ぼさっとしてるのよ。アリアを引き離して。」
気づけば、アリアは紗雪とふれあう距離まで近づいていた。
「別に良いんじゃないか。たまには、そういう経験もあって。」
「全く、何言ってるのよ。役に立たない食客ね。」
そう言いつつも、紗雪もアリアから離れようとしない。何となく、微笑ましいものを見ているような気分になる。
「京介、何変な顔してるのよ。」
「いや、別に。たまにはこういうのも悪くないと思っただけだ。」
何となく人との別ればかり印象に残りがちだが、こんな風に微笑ましい出会いもある。今くらいは、いつか来る別れに目を向けるのではなく、新たな出会いの喜びを感じていようと思った。
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