第6話 調査の報告

「なるほど、蛇王の呪いか…。」


 紗雪は俺の報告を聞くと、神妙な顔をした。紗雪にも事態が想像以上に厄介だということが分ったのだろう。呪いとは、それほどまでの災厄として人々に認識されているのだ。


「それでこの事件の解決は、京介に任せろって、本気で言ってるの?」


「ああ、俺は結界術は得意で、人より優れている自身がある。」


 今回の事件の問題の一つがこの紗雪の説得だった。俺は、彼女にとってはただの食客で、知識人くらいの認識なのだ。蛇王の墓所なんていう危険な場所に向かって行って、問題を解決する能力があるとは思われていないだろう。数人の護衛くらいならば、正体を隠しながら、全員を守ることはできるだろうが、大人数になってくるとそれも難しくなる。


 それに、今回の事件は、俺の結界が破られてる事から、簡単な事態ではないことが察せられる。可能なら、俺一人で墓所に向かいたいところだが…。


「分ったわ。それじゃあ、私もついていくけど、それで良いでしょ?いちいち墓所攻略の編成をしてる時間もないし。」


 なるほど、そう来たか。確かに紗雪は強い。この町で最上位の魔法使いを名乗るくらいの実力はあるだろう。紗雪は自分が護衛役となり、俺が弱った結界を担当すれば良いと考えているに違いない。


 下手に何人もの護衛役がいるよりも、紗雪一人の方が守りやすいのだが、問題は彼女がこの町で最も重要な人物であり、少しの怪我も許されないと言うことだった。


「何悩んでるのよ。私が決めたんだから、それで決まりよ。考える時間が惜しいわ。明日にでも出発するから、今日中に準備を済ませておいて。」


 紗雪は、これで話はお終いと言わんばかりだ。彼女が一度決めたことを翻すことは、ほとんどない。俺がどれだけ言葉を尽くして、別の案を提案しようとも無意味だろう。だとしたら、紗雪の言うとおり、今は時間が惜しいのだから、これで納得するしかない。


 俺は紗雪の言葉に頷いた後、彼女の部屋を後にした。



 夜になった。昼間は様々な人々で賑わっていた様子も、今や見る影もない。多くの人が眠りについているそんな時間に、俺は町を見下ろすことのできる展望台にいた。


 こうして見てみると、この町も栄えたものだ。五百年くらい前は、ここは廃墟しかない見捨てられた土地だった。それから時間が経ち、ここに町を作る人が現れ、より良い町にしようと奮闘する人々がいて、各地からより多くの人々が集まり、今に至る。


 俺は、異世界召喚され、はじめに降り立ったこの土地を故郷のように感じている。その故郷が人で賑わっているのを見ると、胸が温かくなる。それはかつて、今は無き旧友と共に、ここに町を築き、俺と仲間たちで穏やかに楽しい時間を過ごしていた過去を思い起こさせるようであった。

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