第10話

「テメエら全員、完膚なきまでに

叩きのめしてやるぞ」

ミオは会員制フィットネスクラブ

チョコアップに入会するなり

そう、挨拶した。

「ああ、ど、どうも元気のいい

生徒さんが入りましたねえ」

インストラクターの先生も腰が引け気味

である。

「まず、腕立て一万回、腹筋一万回」

インストラクターが指示を出した。

「よし」

黙々とこなすミオ。

「できました」

「できるんかーい」

インストラクターが目を剝いた。

「アンタは何者」

「もと、マラソン世界記録保持者です」

「なるほど」

インストラクターがミオを尊敬のまなざしで

見詰めた。

「三鷹君と勝負してみるか」

「三鷹君」

「アスレティック世界選手権二十連覇中の男だよ」

「婚姻届けを持ってきました」

「三鷹君と」

「はい」

「旦那さんいるんでしょう」

「捨てます、すぐにでもすてます」




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