第11章 3人で行く魔魚討伐
第40話 三度目のダグアル
結局この後、3時間くらいかけて装備を作る事になってしまった。
作った装備はこんな感じだ。
〇 鎧
・ ミーニャさん用軽量タイプ
・ ジョン用
・ 俺用
〇 籠手(ミーニャさん用・鋼爪着脱可能)
〇 短弓(ジョン用)
〇 杖(俺用。鋼製で全長2m。重い)
鎧がそれぞれ違うのは、
〇 ミーニャさん用は近接格闘戦を念頭に、軽量で動きやすい事を重点に、敵の爪や剣を防ぐ事を目的とした
〇 ジョン用は槍または弓を使う近~中距離戦を念頭に、敵の同様な攻撃を防げるよう、刺突にも斬撃にもそこそこ強い
〇 俺は基本的に後衛なので、接近戦よりも弓や魔法を防ぎやすく、動きやすい鎧とした
という違いだ。
これはC級冒険者ミーニャさんのアドバイスによるもの。
そしてミーニャさんは鎧を全着装した状態で、動きを確かめている。
「これだけ軽いと理想の動きが出来るのニャ。明日は一日中着けて動きを覚えるのニャ」
こういう所はミーニャさん、やっぱり冒険者だ。
食意地のはった猫、といういつもの感じとかなり異なる。
なおこれら武器や防具の価格については少しだけもめた。
「実際に買うとかなり高価だろう。本当にただでいいのか」
「そうなのニャ。少なくとも鋼の鎧よりはずっと高価な筈なのニャ」
確かに手間と特殊な魔法は必要だ。
しかし材料費は0だし、俺は武器や防具の製作で食っていくつもりはない。
だから希望はこういう形だ。
「ただでお願いします。そのかわり、この装備の出所については一切口外しないで下さい。修理や改良も店に預けずに俺のところへ持ってきて下さい。それだけで充分です」
これが俺にとっての絶対条件だ。
前世と同じような生活になってはたまらないから。
ある程度話し合った後、最後には2人とも折れてくれた。
「わかったのニャ。誰にも言わないし、
「ああ。いつか別の形で返す……と言いたいところだが、返せるあてがないな。今の状況じゃ。ただこれ以降は、かかった金はきっちり計算して請求してくれ。矢を購入するとか、食事の予備を買うとかした場合は。そういった費用はパーティ内で負担すべきだから」
とまあ、こんな感じで。
さて、装備を作って試したおかげで、夜遅い時間になってしまった。
「明日の朝はそれぞれ早いでしょうし、今日はこれで解散しましょうか」
討伐に行くからではない。
毎朝の舌平目拾いをやるから朝早いのだ。
という本音はあえて言わない。
「そうニャ。それニャ明日はよろしくニャ」
「こちらこそよろしくお願いします」
そんな感じで解散して……
◇◇◇
そして翌朝。
冒険者ギルドに集合して、南門まで歩いて、そこで2人を収納して現地まで高速移動。
前回、ジョンと回らなかった釣り場で2人を出す。
「一瞬で違う場所ニャ」
「やっぱり変な感じがするよな、これって」
南門まで行く間に説明したし、ジョンはこれで3回目。
それでもやっぱり違和感は拭えないようだ。
なおジョンもミーニャさんも昨日作った鎧を着装している。
「今日の依頼ではずっと装着して慣れるのニャ。それにずっと着けていれば、具合が悪い場所も早めに気づくニャ」
「わかりました。俺もそうします」
2人は一日中着装するようだ。
ただ俺は着装しない。
「俺はしゃがんだり色々動くので、今日は鎧の装着はしないでおきます」
「エイダンは後衛だから、そこまでしなくてもいいのニャ。でも前衛は少しでも慣れておいた方がいいのニャ。場合によってはその辺が生死を分けたりもするのニャ」
ミーニャさん、こういう所は真っ当な冒険者だ。
さて、それはそれとして。
俺は
「とりあえずジョンは前回と同じ方法で釣ってくれ。それで釣れなくなったら次のやり方を説明する」
ジョンには、リールがついていない延べ竿を渡す。
竿についている仕掛けはとりあえず前回と同じ仕掛け。
まずはこれで釣れるだけ釣ってしまおうという作戦だ。
「わかった」
ジョンは早速餌を撒いて釣り始めた。
「ミーニャさんは、とりあえずはジョンと同じ方法で釣ってください。ここのカゴに餌を入れて、竿を持る。針がついているところを水面下に入れて、魚がついたら俺に渡す。それだけです」
「釣れたぞ」
ジョンが仕掛けを上げる。魔魚カンディルーが2匹ついていた。
俺は冷却魔法をかけた後、竿と仕掛けごと魔魚カンディルーを収納して、竿と仕掛けのみ再び取り出してジョンに渡す。
「長いのを操って針がついているところを
ミーニャさん、やりかたを理解したようだ。
「その通りです。それではお願いします」
此処はジョンとは来ていない場所だ。
だから一週間以上間を置いている。
なので普通のサビキ仕掛けでもそこそこ釣れるだろう。
さて、俺は俺で別の仕掛けを試すとしよう。
そう思って竿と仕掛けを出そうとしたところで……
「かかったニャ」
「こっちも」
立て続けに2人が竿を上げる。
魔法を掛け、竿ごと全部収納して、魔魚以外を出す。
ミーニャさんの方をやったら次はジョン。
そうしたらまたすぐに。
「また来たニャ」
俺が自分の釣りをする余裕は無さそうだ。
でもまあ、前回ジョンと来た時は100匹ちょっと釣り上げるとペースが落ちた。
だから今回もそこまでは待つとしよう。
◇◇◇
案の上、30分位で釣れるペースが落ちてきた。
ならそろそろ、次の作戦だ。
「それじゃ、少しやり方を変えます」
「疑似餌で釣れにくくなったので、今度は針に餌をくっつけて釣ります。餌のくっつけ方は、まず
つまり今度はトリックサビキ方式だ。
「あとジョンの方は仕掛けを少し変えます。 こちらは小さいのが釣れるよう、仕掛けが全体に細く小さくなっています。引っかかったり絡んだりしやすいので注意して下さい」
「此処を通して餌をつけるのが、今までとの違いニャ?」
「そうです。それだけです」
そして俺は、いよいよ自分用の仕掛けを準備する。
まずはウキ釣りの仕掛けから。
魚の場合、大物は餌を撒いているすぐ近くではなく、少し離れた場所に陣取る事が多い。
そういった大物を別に狙う為の作戦第一弾が、このウキ釣り仕掛け。
ウキの場所を調整して、針が川底近くになるように調節する。
餌は針が見えないようにつけてと。
「釣れたのニャ」
「こっちもだ」
ミーニャさんやジョンが釣った魔魚を取り込みつつ準備して、2人が餌付けをやっている合間に投げて投入。
場所は餌を撒いているところから3m程離れた深み。
魔魚らしい反応があるのが見えている。
さて、この仕掛けで大物がかかるかどうか。
「釣れたニャ」
トリックサビキの方は順調だ。
釣りを始めた頃ほどの勢いはないけれど、それでも2分に1回くらいは上がってくる。
そして……離れた所にあったウキがさっと沈んで、竿先が大きく引かれた。
咄嗟に俺は竿を揚げる。
針がかりした感触。
「フィッシュ、オン!」
重い。無茶苦茶引いている。
しかも動く。草の茂みに隠れようとする。
これが単なる釣りなら魚との勝負を楽しむところだ。
しかし本日は討伐。
という事で、ちょっと邪道だが魔法を使おう。
糸の仕掛けに近い部分、かみ切られないよう
電圧も電荷もそこまで大きくはない。
人間だとビリッと感じる程度。
一瞬、明らかに引きが弱まった。
その隙を狙って一気に引き上げる。
水上に出た。全長30cm程度のナマズ的な魚体。
魔力の反応から見てこれも魔魚カンディルーだ。
冷却魔法一発で無事仮死状態になったので収納する。
「大きいな、それ」
「これも魔魚カンディルーだ。大きくても1匹の報酬は同じだけれどさ。討伐だから捕れる分は捕っておかないと」
「あ、こっちも釣れたニャ」
忙しい釣りはまだ続く。
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