127.欲しかった魔法
うっすらとした朝日で目が覚めた。ベッドから起き上がると、冷たい空気が体を包み込んで体が震えた。
「うぅ、寒い。早く着替えよう」
寝ぼけまなこのままベッドから下りて靴を履く。それからクローゼットに行って、服を取り出す。その服を発熱の魔法で温めると、冷める前にさっさと着替えた。
パジャマをクローゼットの中にかけてから、今度は台所へと行く。今日のお弁当を作るために、食糧保管庫から昨日下ごしらえしたものを出して、調理していく。
ボーッとしたまま調理をしていくと、ふと思い出したことがあった。そういえば、昨日称号のレベルアップがあったから、新しい魔法を覚えているはずだ。でも、今は調理をしているから、これが終わったら確認しよう。
そんなことを思いながら、慣れた手つきでお弁当を作成していく。出来上がったおかずをお弁当に詰め、昨日焼いていたパンにかかった時間停止の魔法を切ると布に包む。そのお弁当とパンをリュックの中に詰め込んだ。
「さてと、じゃあ自分のステータスを確認しますか」
やることも終わったし、とうとう自分のステータスを確認する時が来た。ドキドキしながら、自分のステータスを確認する。
【ノア】
年齢:十一歳
種族:人間
性別:女
職業:酪農者
称号:賢者の卵 レベル四
攻撃力:27
防御力:27
素早さ:36
体力:48
知力:70
魔力:85
魔法:生活魔法、火魔法レベル八、水魔法レベル八、風魔法レベル八、地魔法レベル八、氷魔法レベル八、雷魔法レベル八、植物魔法レベル八、魔動力、時空間魔法、分身魔法
スキル:鑑定
魔法がいつものように軒並みにレベルが上がっている。でも、注目するところはそこではなくて、新しく手に入れた魔法だ。
分身魔法、もしかしてこれはそのままの意味がある魔法なんだろうか。そうすると、分身魔法は自分の分身を作れる魔法ということになる。以前から人の手が欲しいと思っていたところに、まさか欲しいと思っていた魔法を手にすることが出来るなんて。
この分身魔法をさらに詳しく調べてみよう。
分身魔法:魔力を媒体として対象の分身を作る魔法。分身の強さは対象者の魔力によって左右される。魔力が切れると分身が消える。
「へー、魔力で作る分身なんだ」
魔力がある人限定の魔法になるみたい。ということは、自分だけじゃなくて他人の分身も作れるっていうことになるのかな? えっ、それって凄く便利じゃない? あ、でもその人の魔力を使うから、魔力が少ないと維持出来ないのか。
便利だけど、それなりに制約がある感じか。でも、だからって使わない手はないよね。早速使いたいけれど、その前にやることがある。二人を起こすことだ。
ベッドに近づくと二人の体を揺する。
「おはよう。朝だよー」
すると、イリスがのっそりと体を起こしてきた。
「おはようございます」
「おはよう。ほら、クレハも起きてー」
「うーん」
相変わらずクレハの反応が鈍い。仕方がない、強引な手段を取るか。掛け布団を掴むと、思いっきり剥がした。
「わっ、さ、寒いー!」
「ほら、こっちは温かいよー」
布団を剥ぐと、すぐに発熱の魔法を発動させた。ベッドから離れた位置で発動している発熱の魔法。一足先にイリスがその空間に入る。
「ふー、温かいです。ほら、クレハも早く来てください。こっちは温かいですよ」
「ノア、そんなことをするなんて卑怯なんだぞー!」
「ふっふっふっ、なんとでもいいなさい。ここに来ないと、寒いままだぞー」
「くぅ、ノアのバカ!」
クレハは急いで靴を履くと、発熱の魔法が発動している場所に飛び込んだ。
「うぅ、寒かったー」
「はい、じゃあ次は着替えだよー。温かい空気、移動しまーす」
手をかざしているところを移動させると、魔法で作った温かい空間も一緒に移動する。その中にいたい二人は温かい空気を求めて、一緒に移動する。すると、クローゼットの前に辿り着いた。
そのままクローゼットを開けて、今度は中に入っている服にも発熱の魔法で温かくする。
「至れり尽くせりな身支度が出来るのっていいですね」
「でも、全部ノアの思い通りなんだぞ」
「いいじゃないですか、こんなに快適なんですから」
二人はそのまま服に着替える、そこでようやく魔法を解除した。
「コートを来て、宿屋に行こうか」
「朝の外に出る瞬間はいつも勇気がいりますよね」
「ずっと、ノアの魔法の中にいたいぞ」
「はいはい、ありがとう。リュックを忘れないようにね」
コートを着ると玄関まで歩いていく。それから扉を開けると、冷たい空気が襲い掛かってきた。
「やっぱりこの瞬間が一番嫌ですね」
「早く春にならないかなー」
「そうだねー。春になったらいいな」
外に出ていつも通りに宿屋に向かっていく。話すならこのタイミングだよね。
「そうそう、新しい魔法が生えてきたよ」
「来たか! どんな魔法だったんだ?」
「分身魔法っていう魔法だよ」
「分身魔法……ということは、分身が出来るんですか?」
「うん、そうみたい。魔力を媒体にして対象者の分身を作るんだって」
「ふーん、魔力がないとダメなのか」
分身魔法を聞いてなんとなく想像がつくのか、二人とも分かったように頷いていた。まぁ、そのまんまの意味だからね、深く考えるほどでもないしね。
「早速使ってみるか?」
「今日の仕事中に使ってみるつもりだよ」
「ということは、ノア自身を増やして仕事をするんですね。その光景見てみたいです」
「ノアが増えるのか……とっても便利なんだぞ!」
私が増えたら人手が増える、それは歓迎したい。でも、私の分身はどんなことが出来るんだろう? 私みたいに魔法が使えるのか、使えないのかで便利さが違ってくる。
「分身したノアは魔法を使うことが出来るんでしょうか」
「それはやってみないと分からないね。もし、出来るようだったらかなり便利になるよね」
「そしたら、ノアの分身を魔物討伐に連れていくことも出来るな!」
「そうしたら、家のことも出来ますし魔物討伐も出来ますし、なんでも出来ちゃいますね」
「それが出来たらいいね。とにかく、この後に試してみるよ」
話していると宿屋についた。さて、朝食を食べた後に早速試してみよう。
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