123.期間限定の素材(3)

「ゴブリンソルジャーの群れだ!」

「ゴブリンメイジもいるようです、魔法に気を付けてください!」


 二人が目の前からやってきたゴブリンの群れに警戒を示した。とっさの動きについていけない私は後ろでどうしたらいいか考えた。だけど、その間にもクレハが剣を構えて飛び出していく。


「ウチが引き付ける! その間に数を減らしてくれ!」

「分かりました!」


 二人の息にあったやり取りをした後、クレハがゴブリンの群れに突っ込んでいく。力技でゴブリンたちを切り倒し、ゴブリンたちから注目を集めている。その間、イリスが魔法を唱えた。


「ホーリーシャイン!」


 すると、何もなかった空中から無数の光の矢が飛び出した。それらは真っすぐゴブリンたちに向かっていき、その体を貫く。


「ギャーッ!」

「ギッ!」

「グギャギャッ!」


 突然降ってきた光の矢にゴブリンたちは混乱した。その隙をついて、クレハの剣も激しさを増す。


 いけない、見入ってしまった。私も攻撃に参加しないと。私はイリスの横に陣取ると、両手を前に構える。使う魔法は……氷魔法だ。イリスが使ったように氷の刃をゴブリンたちに降らせよう。


 魔力を高めて氷魔法を発動させると、無数の氷の刃を作成する。そして、それを素早くゴブリンたちに向かって降らせた。


「くらえ!」

「グギャーッ!」

「ギギッ!」

「ギャーッ!」


 無数の氷の刃はゴブリンたちに降り注ぎ、その体を貫いていく。


「ノア、その調子です。どんどん、魔法を放って魔物を討伐しましょう」

「うん、分かった」


 イリスと協力して矢や刃をゴブリンたちに降り注いでいく。クレハはそれが届かない位置にいる魔物をどんどん剣で倒していった。その動きは素早く力強いもので、魔物からの攻撃を受ける前に倒していった。


 ほとんど一方的な戦闘が繰り広げられ、次第に立っている魔物の数は減っていく。そして、立っている魔物がいなくなると、私たちの攻撃は止まった。


「周囲に魔物はいませんね、戦闘終了です」

「本当に大丈夫?」

「聞いてみますね。クレハ、周りに敵はいますか?」

「うーん……いなさそうだぞ、安心していいぞ」

「だ、そうです」


 どうやら戦闘が終了したみたいだ。周囲を確認したら、沢山のゴブリンたちが倒れていた。


「はー、すごい。これを倒したんだね」

「今日はノアの魔法もあったので、かなり早く倒せたと思います」

「ノアも戦闘が出来るじゃないか! ウチも倒す敵が少なくなって楽だったぞ」

「そうかな? 二人の力になれたんなら、嬉しいな」


 戦闘初心者の私でも、二人のお陰でなんとか戦闘を乗り切ることが出来た。


「二人とも、戦闘が慣れているから動きが凄くスムーズだったね。私が戦闘に入って邪魔にならないかなって心配していたんだ」

「そんなことはないですよ。少しでも手は多い方がいいですし、それにノアの魔法はとても役に立ちますからね」

「ノアの魔法が役に立つことなんて、はじめから分かっていたさ。ウチは大丈夫だって信じてたぞ」


 二人とも私の魔法のことを褒めてくれた。戦闘で魔法を使ったことがあまりなかったから不安だったけど、二人のためになって本当に良かったな。


「それじゃ、魔石を回収しようか」

「はい、そうしましょう」

「私も手伝うね」


 二人はナイフを手に持つと、それぞれ倒れたゴブリンに近づいていく。倒れたゴブリンは醜悪な姿をしていて近くで見ると怖かった。でも、この体の中にある魔石を取らないとお金にはならない。


 私は魔動力を発動させて、ゴブリンの体内にある魔石を移動させる。そして、その魔石は皮膚を突き破って外へと出てきた。自分の手で取らなくてもいいから、この方法は便利でいい。


 一体のゴブリンから魔石を取り出すと、今度は近くに倒れていたゴブリンに魔動力を発動させて魔石を抜き取っていく。そうやって、手分けをして地道にゴブリンから魔石を回収していった。


 魔石の回収が終わると、集まった魔石を袋の中に入れてリュックにしまう。


「これでいいな。じゃあ、移動するか」

「この周辺は森の入り口からかなり離れた場所になりますから、この辺りから素材を探していきましょうか」

「そういえばそうだな。ノア、ここを離れたら早速素材を探そう」

「うん、分かった」


 どうやらこの周辺が目的の場所らしい。ゴブリンが沢山転がったところにはあまり長居はしたくないから、早くこの場から立ち去る。


 しばらく歩いていくと、クレハが立ち止まった。


「この辺から素材を探さないか?」

「いいですね、そうしましょう」

「なら、私が鑑定のスキルを使って探してみるね」


 ようやく、素材を探す場所に辿り着いた。周りはうっすらと雪が積もっており、視覚では素材を探しにくい。だから、広範囲の探知能力がある鑑定のスキルを使う。


「広範囲鑑定」


 広範囲に鑑定スキルを使うと、色んな鑑定結果が出てくる。普通の木だったり、雪だったり様々だ。その中から今回探している素材の名前を探っていく。


「うーん、この周辺にはなさそう」

「なら、移動だな」

「周辺の警戒は私たちに任せて、ノアは探索に力を注いでくださいね」

「ありがとう、助かるよ」


 その場から離れ、しばらく森の中を歩く。歩いて数分、その場で立ち止まりまた鑑定スキルを使う。周囲の鑑定結果が頭の中に入ってきて、情報量の多さに少し圧倒されてしまう。


 だけど、このやり方のお陰でいちいち探さなくてもいいから楽なんだよね。えーっと、気になる鑑定結果は……ん、あれってもしかして。


「あそこの木の根元に黒いキノコがあるはずだけど」

「よっしゃ、探してみるな!」


 指を刺した場所にクレハが近づいていく。クレハはその手で雪をかきわけると、こっちを振り向いた。


「黒いキノコがあったぞ!」

「本当ですか?」

「見せて見せて」


 イリスと一緒にクレハに近づいてみる。木の根元を見ると、かき分けた雪の下に小さな黒いキノコが二つ生えていた。それをもう一度鑑定してみると、シュメルク茸と出てきた。うん、これに間違いない。


「うん、それがシュメルク茸だよ」

「見つかってよかったな」

「取ってみてください」


 クレハがシュメルク茸を触ると、優しく引き抜く。そうして二つのシュメルク茸を手に入れた。


「ノア、取れたぞ」

「ありがとう」


 貰ったシュメルク茸をリュックの中にしまう。うん、これで完了だ。三人の視線を合わせると、ニッと笑い合って、手を合わせた。


「これで二つですね!」

「どんどん探していこうぜ!」

「この調子だね!」


 嬉しくなってハイタッチをした。素材が見つかるのって楽しいよね、この調子でどんどん取っていきたい。


「ん、近くに魔物がいるみたいだ」

「どうしましょう、相手にしますか?」

「そうだな、この距離なら素材採取の邪魔になりそうだぞ」

「なら、倒していこうよ」

「そうだな。よし、次は戦闘だ」


 二人とも真剣な表情になって武器を手に持った。そして、クレハを戦闘に魔物がいる場所へと向かっていく。私は二人の後を追うようについていった。

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