90.家畜小屋を作ろう(2)

「よし、昨日の続きをしようか」


 翌朝、牛と鶏に餌と水を与えて作業に移る。今日も昨日の続き、柱作りから始めていこう。


 丸太を土台に乗せると、切り口に定規とペンを使って線と番号を書く。それから丸太を宙に浮かせて、線に沿って風魔法で切る。切ったら余分な木材と必要な木材とに分けておく。


 それから出来立ての木材を土台に乗せると、溝を掘っていく。線からずれないように慎重に掘っていき、溝を完成させる。テンポよく木材に溝を掘っていくと、全ての木材に溝を掘り終えた。


 もう一本の丸太を木材に加工して溝を掘る。これで必要な柱を作り終えることが出来た。今度はこの柱を土台に組み込む作業をする。


 設計図を見ながら柱の位置を確認すると、その位置まで木材を魔動力で移動させる。柱の配置が完了すると、今度は木工所で買った器具を取り付けて、土台と柱を合体させた。


 その作業を何度も繰り返して、柱を土台に建てていく。しばらく作業を続けていくと、全ての柱を建てることが出来た。


 次の作業は柱の溝と梁の溝を合わせる作業だ。横にした木材を柱の溝にくっつけて合わせていく。ガチッとはまると、今度はくっつけた溝同士の部分に固定する金具を埋め込む。


 そうやって、次々に柱に梁を取り付けていく。家に比べれば小さいから作業が少なくて済む。魔動力があればあっという間に柱に梁をつけ終えることが出来た。


 骨組みを組み終えると、今度は屋根の部分に取り掛かる。また、丸太から木材の切り出しから始めていく。


 丸太を土台に乗せ、切りたい木材に合わせて定規とペンを使って線を引いていく。それから風魔法で木材を切り出して、必要な部分だけ溝を掘っていった。


 黙々と作業を続けて、屋根の木材の切り出しが終わった。それが終われば屋根の取り付けにかかる。魔動力で自分を宙に浮かせて、作業の開始だ。


 三角屋根にするように屋根の柱を縦や横に建てていき、溝を合わせて金具で固定した。どんどん骨組みを組み合わせていくと、三角屋根の形になってくる。切り出した木材を全て使うと、屋根の骨組みの完成だ。


 あとやることは屋根を張ること、壁を張ることだ。屋根は大変な作業だけど、壁は一枚でいいから家に比べると楽な作業になる。次の作業に移る前に昼食と昼休みだ。


 それが終わると、今度は屋根張りの作業に移る。丸太から板を作ると、それを下地として屋根の柱に張り付ける。魔動力で自分を浮かし、板を浮かせて柱に合わせて釘で固定した。


 集中して作業を続けると、あっというまに下地を張り終えることが出来た。家と比べれば範囲が狭いからすぐに終わったね。


 次はその上に広めの板を張る。丸太から広めの板を切り出して、魔動力を使って張って釘で固定する。今度は張る枚数が少ないから、結構早く終わった。


 最後に壁張りだ。夕食用のパン作りと平行しながら、作業を進める。丸太から板を作り、出来た板を柱に張り付けていく。壁は一枚だけでいいから、家と比べれば簡単だ。


 時間もそんなにかからず、壁を張り終えることが出来た。残りは中のみとなったけど、今日の作業はここで終了だ。


 ◇


 翌日、家畜小屋の続きから始める。中には何本かの柱が立っていて、左右に牛を入れられるスペースが設けてある。あとは牛が逃げないように囲いを作るだけだ。


 丸太から木材を切り出し、柱に囲い用の木材を張り付ける。あとは出入口用に閂を設置すれば、これで中身の完成だ。


 あ、いけない餌場と水場を作るのを忘れていた。床に手をついて地魔法を発動させると、石で餌場と水場を作っておく。うん、上手に出来たと思う。今度こそ、中身の完成だ。


 最後に両開きの扉を作る。また丸太から扉の木材を切り出していき、扉を作る。扉を作ったら蝶番をつけて、その蝶番を家畜小屋と合わせたら扉の完成だ。


「こんなところかな?」


 出来上がった家畜小屋を見てみる。両開きの扉があり、その扉を開くと左右に牛が入れるスペースが設けられている。囲いの中に牛を入れて、その中で休んでもらう形になっていた。


 そうそう、石の床じゃ牛も落ち着かないと思うから土を敷き詰めよう。私は畑に近寄ると、畑から土を魔動力で浮かせて家畜小屋まで運搬する。そして、牛が休む場所に土を敷き詰める。うん、これでよし。牛小屋の完成だ!


 牛小屋の次は鶏小屋を作る。これは四つの柱を建てて、一面を木材で囲い、残りの三面を金網で囲って屋根を取り付ければ完成となる。あとは中に鶏が休める場所を作ればいいだけだ。


 早速、木材の切り出しから始めていく。丸太の切り口に切り出す木材の形を定規とペンで書いたら、風魔法を使って木材を切り出す。必要な木材が少ないから、丸太一本で事が済んだ。


 切り出した木材を組み立てて鶏小屋の四方に柱を建てる。その後、一面を木で覆うために板を張った。そして、小屋の上に屋根を作る。ここも三角屋根にして雨が降っても小屋の外に流れる構図にする。


 これで木造のところはこれで終わり。あとは餌場と水場を地魔法で作り、金網を三面覆うように取り付ければ鶏小屋の完成だ。牛小屋と比べればとても小さいものだから、あっという間に出来たな。


 よし、あとは牛と鶏の放牧スペースを作るために、柵を作るだけだ。あと、もうひと頑張りだ!


 ◇


 あれから放牧スペースを作るために、柵作りをした。家畜小屋に比べればとても簡単に作れるので、さくさくと作業は進んでいき今日中に柵を作ることが出来た。


「なんだか牧場っていう感じだね」


 完成した家畜小屋と放牧スペースを見ながらそんな感想を呟いた。牧場にしては家畜の数は少ないが、出来たものを見るとそんな感想を思いついたのだ。


 完成したら早速家畜を入れてみよう、まずは鶏からだ。石の囲いの中に入ると、一羽を両手で掴んで持ち上げると鶏専用の放牧スペースに移動させた。


 放牧スペースに入れられた鶏は特に驚きもせずに、黙っているだけだ。やっぱり、まだ元気がないので反応がいまいちなのが残念だね。とりあえず、鶏全てを放牧スペースに入れることが出来た。


 あとはこの環境に慣れてくれればいいな。あまり動かない鶏を見て、そんなことを思う。さて、次は牛の移動だ。家の中に行き、縄を一本持ってくると牛の近くに行き、声をかける。


「こっちに家が出来たから、動いてくれるかな」


 首に縄をかけて引っ張る。はじめは動いてくれなかったが、重い腰を上げるように立ってくれた。首にかけた縄を引っ張って、牛を誘導していく。


 柵の出入口を開けて放牧スペースの中に入り、牛小屋を目指す。今のところ牛は素直についてきているみたいだ、小屋に近づいたら態度が豹変しないよね?


 そのままゆっくりと小屋に向かうが、牛は特別な反応を見せない。それどころか、すんなりと小屋の中に入ってくれた。


「ここに入ってもらってもいいかな」


 縄を引っ張って土でいっぱいになった休憩スペースに誘導する。牛は素直に入ってきてくれて、土の上に体を横たわらせた。良かった、ここが休むスペースだって分かってくれたんだね。


「よしよし、いい子」


 頭を撫でると、少し気持ちよさそうに目を細めたような気がする。私は囲いの外に出ると、閂をして牛が勝手に外に出ないようにした。牛もそれを分かっているのか、特に動いたりはしない。


 これで家畜を飼う準備が整った。あとはみんなが元気になって乳や卵を出してくれるのを待つだけだ。


「お世話頑張るぞ!」


**********

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