56.家を作ろう!(5)

 家造り十七日目、家の完成までもうひと踏ん張りだ。今日は家の内側の壁を作っていこうと思う。


 まずは内側の壁となる板を作っていく。丸太にひたすら線を書く作業をした後、今度はひたすら丸太を切っていく作業をする。とにかくこの作業に時間がかかる。集中力もいるし大変な作業だ。


 それが終わると、出来上がった板を適切な長さに切っていく。この作業は早める終わり、それが終わると出てきた廃材を燃やした。


 次の作業は板張りだ。作った板を魔動力で浮かせて、家の中まで持っていく。全て入れ終わると、作業の開始だ。


 本来なら外壁と内壁の間に断熱材があればいいんだけど、なかったんだよね。この世界にないのか、それとも高級品なのか分からないけれど、断熱材なしで壁を作らなくちゃいけない。


 まぁ、一枚壁よりもマシだよね。そう思いながら、内壁となる板を柱に張っていく。隙間がないようにぴったりと板を合わせて、ずれないように釘を押し込んでいった。


 黙々と作業をするが、夕食のことも忘れない。夕食の準備をしながら内壁張りを続けていく。そうすると、辺りが夕暮れになり家の中も暗くなって作業がし辛くなってきた。


 こういう時は生活魔法の光源を使えば、暗くなった後でも作業はできる。だけど、そろそろ二人が帰ってくる頃だから夕食の仕上げをしないとね。今日も途中で作業を切り上げた。


 家造り十八日目、昨日の続きをしよう。


 隙間のない内壁を作るためにしっかりと板を合わせて、ずれないように慎重に釘を押し込んでいく。ここの作業が雑だと、隙間風が入ってきて冬の時期に大変なことになってしまう。


 丁寧に作業を続けていくと、残り数枚になった。最後まで気を抜かずに板を張っていった。そして、内側の壁の板を全て張り終える。


「やった……終わった」


 これで家の大きな部分が終わったことになる。そのことに気づいて、出来立ての壁を見ながら感動に浸っていた。


 始めは何もなかったのに、基礎を作り、土台を作って、柱を建てた。それから屋根をつけ、壁を作り、床を作る。それらを自分一人で作ったなんて、信じられないくらいだ。


 言いようもない喜びが溢れてきて、自然と笑顔になった。まだ完成していないけど、ここまでできたことがとにかく嬉しい。自分一人でも家を建てられるんだ。


「あともう少しだ、頑張ろう!」


 気合を入れ直して、明日の作業に弾みをつけた。


 家造り十九日目、今日は家で重要な部分を作ろうと思う。扉と窓だ。


 まずは扉を作っていく。これは設計図に作り方が載っているから、それを見ながら作るつもりだ。早速設計図を読んで、必要な材料を確認していく。


 確認をし終わると、扉の作成に取り掛かる。今回は丸太を一本使わないで作れるらしいから、丁度いい長さに丸太を切っておく。それから必要となる扉の部分を切り出す。大きさが足りないから、二枚の厚めの板を切り出した。


 それから二枚の板を合わせるために、板に溝を掘っていく。久しぶりの溝掘り作業だ、集中して作業をした。溝を作るのも手慣れていたのか、案外早く溝を掘り終えた。


 次はこの二枚の板を合わせる。溝に接着剤を塗り、それから溝を合わせていく。がっちりと溝がかみ合って一枚の板になった、これが扉になる。


 一枚の扉にすると、接着剤の所を乾燥魔法で乾かす。乾かし終えると、今度はドアノブを取り付ける。ドアノブは買っておいたものを取り付けるだけで終わった。


 最後に扉にかんぬきをつける。残っていた大きな廃材から一本の板を作り、購入しておいた金具を扉に固定する。その金具に板を通せばかんぬきの出来上がりだ。


 扉が出来ると、とうとう家に取り付ける時がきた。金具を持って、扉を魔動力で浮かせて持っていく。家の入口につくと、まず扉に金具を固定する。それが終わると、今度は扉につけた金具と家の入口の端を固定する。


 これで扉が完成した。試しにドアノブを手にして、開けたり閉めたりする。金具がいい感じに動いてくれて、扉の動きはスムーズだ。一度扉を閉めて、少し離れたところから眺める。


「うん、どこからどうみても家だ」


 扉を付けただけなのに、物凄い喜びが沸き上がってくる。扉を付けると家らしくなっていいね。もっと家らしくしたいから、窓も作っていこう。


 家の中に入ると、窓がないから全体的に薄暗い。やっぱり、窓がないといけないね。


 大きな部屋を見渡して窓の位置を決める。場所を決めると、メジャーで長さを測り定規とペンを使って線を書いていく。書き終えると、もう一か所のところも同じように線を書く。


 書き終えると、今度は作った壁を切る作業だ。綺麗に出来た壁に穴を開けるのはちょっと残念な気持ちになるけど、これも窓をつくるためだ。ぐっと堪えて、風魔法を発動させた。


 綺麗な四角い穴が内壁と外壁に出来た。もう一か所穴を開けると、光が家の中に入り込んできて大分明るくなる。うん、やっぱり窓はないとね。


 切り出した壁を回収して、作業場へと戻る。今度は窓枠作りだ。扉の時に使い切れなかった丸太に窓枠の部品を書き込んでいく。それから風魔法で切り出した。


 切り出した木材に今度は溝を掘っていき、加工を施していく。時間をかけて溝を丁寧に掘っていき、一つずつ窓枠の部品が完成していく。


「ふぅ、終わった」


 窓枠の部品を全て掘り終えた。ここで夕食の準備を始める。パンを捏ねて発酵させて、肉の下準備をしておく。夕食の準備が一通り終わると、作業に戻る。


 今度は部品を持って家の中に入っていく。開けた穴に近づくと、出来立ての窓枠の部品同士を合体させて家の窓にはめ込んでいく。


 四方向全てにはめ込み終わると、もう一方の窓にも窓枠の部品をはめ込んでいった。ここでパンの発酵が終わる時間なので、仮の台所に戻りパンを小分けにして二次発酵だ。


 それが終わると今度は固定の作業だ。家の壁と窓枠を釘で固定していく。可動部分でもあるから、ここでしっかりと固定しなかったら窓枠が外れてしまう。慎重に釘を打つ場所を見定めながら、作業を終えた。


 家造り二十日目、今日の作業で家が完成する。


 残りの作業は窓を作ることだ。まず、残っていた丸太から窓の木枠を切り出す作業から。丸太に線を書いていき、その線通りに風魔法で切り出す。


 切り出した木材に今度は溝を作っていく。木材同士をくっつけるための溝と、ガラスを入れる細い溝だ。まずは木材同士をくっつける溝を作っていく、この作業は手慣れているのですぐに終わった。


 今度は細い溝を掘っていく。ここ一番の集中力を見せて、細い溝を真っすぐ作る。なんとか全ての部品にガラスの入れる細い溝を作ることができた。


 今度は作った部品とガラスを合体させる。十字になるように木の部品を組み合わせ、四隅にガラスをはめて、その周りを木枠で覆って溝をはめる。最後に溝の所に釘を魔動力で押し込めば窓の完成だ。


 もう一つの窓を作ると、二枚の窓が出来上がった。その二枚の窓を持って家の中に入っていく。それから家の窓枠の所に窓をはめ込めば、窓の完成だ。


 これで家造りの作業は終了した。


「出来た、私たちの家」


 雨を凌げる屋根、風を止める壁、出入りの出来る扉、冬には温かくしてくれる暖炉、料理を作ってパンも焼ける台所、日の光が差し込んでくる窓。全て手作りした、自分たちだけの家だ。


 始めは何もなかったのに、今では立派な家ができた。木の切り出しから初めて、木材への加工、その木材を使っての家の建築。始めは途方もない作業だったのに、少しずつ進んできてようやくこの時が来た。


 完成した家の中に立ち、周囲を見渡す。本当に出来たんだ、自分たちの家が!


「やった、家の完成だ!」


 念願だった家が完成した!

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