43.砂糖作りと料理
「小金持ち、小金持ち……はっ! もう家についていた」
小金持ちのことを考えながら荷車を引っ張っていたら、もう石の家についてしまった。お金の魔力は凄い、人をこんなにも変えてしまう力があるなんて。
よし、気を取り直して私は砂糖作りをしてみよう。まずはビートから切り落とした葉っぱを燃やしてっと、うん全部綺麗に燃えたね。燃え尽きたら、地魔法を発動させて灰と土を混ぜこんでおく。そして、地面をならせば燃えカスのない綺麗な地面に早変わり!
事前にやることはこれで終了かな。そしたら、畑に行って、いくつかのビートを抜き取る。これくらいでいいだろう、次に石の台所の所へ行って、石のイスに座る。作業開始だ。
まず、水魔法でビートの土汚れを取り、風魔法で葉っぱを切り取る。これを全部のビートにやって……よし、全部終わった。あっ、先にお湯を沸かしておかないと!
すぐに地魔法で五十センチくらいの石の器を地面に作った。それから、その器の周りに薪を置いて火を点ける。よし、これでお湯ができるはずだ。
お湯を作っている間にビートの調理だ。まず包丁でビートの皮を厚く剥く。全部の皮を剥き終えたら、ビートを小さなさいの目に切る。小さいから沢山切らないといけないのが大変だ。
時間をかけてさいの目に切り終えると、今度はこれをお湯の中に入れる。その前にお湯はできたかな? うん、丁度いいお湯ができたみたい。そしたら、薪の火を消しておく。
それからさいの目に切ったビートを石の器の中に全て入れる。入れると男爵様からもらった厚手の布で器を包み込み、この状態で一時間放置した。
一時間後、布を取り外してみるとお湯がトロトロに変わっていた。きっとビートの糖分がお湯に溶けだしたんだ、あとはこのお湯を煮詰めていくだけだ。
再度焚火を付けて、今度はお湯を煮詰めていく。段々と温度が上がると、ぐつぐつと煮だってきた。これを焦げないようにヘラでかき回す。
ずっとかき混ぜていると、水かさがどんどん減っていく。すると、甘い匂いが漂ってきた。これはまぎれもなく砂糖になる気配、私はさらに頑張ってヘラでかき回し続けた。
どろどろになった水が白っぽくなってきた。ここで焚火の火を消し、さらにぐるぐるとかき混ぜていく。ずっとかき混ぜていくと、粘り気がなくなって、水が固まり始めた。あともう少しでできそうだ、私はヘラへかき回し続けた。
「できた」
水状だったものが完全に固形になった。石の器には茶色い塊が出来ている、これがビートから作られる砂糖だ。
「本当に砂糖かな? ちょっと味見をしてみよう」
ヘラにくっついた塊を指先で取ると、口の中に入れてみる。そしたら、甘い味が口に広がった。
「砂糖だ!」
本当に砂糖ができちゃった。コクのある独特の甘味だけど、砂糖には違いない。これで料理のはばが広がる、やった! 早速今日の夕食に砂糖を使ってみよう。
おかずのお肉に砂糖を使って、パンにも砂糖を入れてみよう。よし、まず先にパンから捏ねていこう。
石の棚に行き、石の器を取り出すと近くにある台の上に置く。器の中に小麦粉、塩、水を入れて砂糖は……塊のまま入れるのもな。よし、包丁で塊を細かくしよう。
石の棚から石の板を取り出して台の上に置くと、その上に砂糖の塊を置く。それから包丁で出来るだけ細かく刻んでいく。うーん、こういう時にすりこぎがあればもっと細かく出来るんだけど……よし、今度買ってこよう。
砂糖を出来るだけ細かく砕くと、それを石の器の中に入れる。包丁と石の板を洗浄して片づけると、材料を混ぜていく。始めはボロボロだった材料が段々とひとまとまりになってきた。そこで力を入れて捏ねていく。
生地が滑らかになると、これで一旦作業が終了だ。生地を丸くして置くと、濡れたタオルで上にかければ、あとは寝かせるだけだ。
さて、寝かせている間におかずの料理を考えよう。何を作るのがいいかな、うーん……砂糖を使った、ソース? ……そうだ、ブルーベリーソースなんていいんじゃないかな。
そうと決まればパンを発酵している間に、作物所に行ってブルーベリーの種を貰いに行こう。そして植物魔法で育てて、収穫して、ソースを作る。
◇
作物所へ行った私はブルーベリーの種を貰い、石の家の戻ってきた。さて、どこにブルーベリーを植えようかな。自分たちの食糧はできるだけ一か所に集めておきたいから、ブドウの木の傍に植えよう。
ブドウの木の隣の地面を地魔法で掘り起こし、種を植える。それから掘り起こしたところに手を置いて、魔力を高めた。
「植物魔法!」
植物魔法を発動させると、種から芽が出て、ぐんぐんと育っていく。そして、青い実がついたところで植物魔法をストップさせた。
次に一つの枝を指先で掴むと、もう一度植物魔法を発動させる。するとその枝についたブルーベリーだけが熟していく。石の棚に戻り皿を手にして戻ってくると、早速収穫を始める。
熟したブルーベリーの実を指先で摘まんで、引っ張ると簡単に外れる。それを何度も繰り返して、ブルーベリーの実を収穫していく。
必要な分だけ取ればいいから、この作業はそんなに時間が掛からないで終わる。皿一杯のブルーベリーを収穫することができた。
「ちょっと味見しちゃおう」
ブルーベリーを一つ摘まむと口の中に放り込む。歯で潰して食べると、ブルーベリーの甘酸っぱさが口の中で広がった。
「んー、美味しい!」
やっぱり果物って美味しい! 余裕が出来たら他の果物を植えてみたいな、果樹園とか作っちゃったりして。そのまま食べたり、加工して食べたり、スイーツとかにしてもいいなぁ。
今は目先のやることをしっかりとやらなきゃね。というわけで、ブルーベリー摘みはおしまい。そろそろパンが出来上がる頃だから、焼かないとね。
ブルーベリーを持って台のところまで戻ってきた。それから、石の器にかけた濡れたタオルを外すとパンの種がしっかりと発酵している。指で突いてみると、プシューとガスが抜けた。この瞬間が堪らなく好き。
いけない、手を洗うの忘れてた。急いで手に洗浄魔法をかけて綺麗にする。それから、パン生地のガスを抜き、小分けにして丸めていく。
石の棚から石の板を取って台に乗せると、その上に丸めたパンを乗せていく。あとは、この上に濡れたタオルを置いて、二次発酵させる。
今の内に石窯に燃えた薪を入れて温度を温めておく。これで、二次発酵が終わったらすぐに焼けるぞ。
次におかずの下準備だ。今日は野菜のソテーに焼いたお肉なんだけど、それじゃちょっと味気ないからひと工夫をする。
冷蔵庫からオーク肉を取り出すと、木のまな板を石の棚から持ってきて一口サイズに切っていく。切り終えたオーク肉をさらに移し替えて、それからコップを用意する。コップの中に水、砂糖、塩を加えて溶けるまで良くかき混ぜる。
今作っているのはブライン液という、お肉を柔らかくかつジューシーに仕上げる魔法の液体だ。これを肉に馴染ませておくと、肉の食感がアップするのだ。
砂糖と塩が完全に溶け切るのを確認すると、それを皿に持ったオーク肉にかけて馴染ませておく。一通り揉みこむと、それを冷蔵庫の中で休ませる。本当は一晩寝かせておきたいけれど、今日は仕方ない。砂糖を作ったばかりだからね。
今度は木のまな板と包丁を洗浄すると、石の冷蔵庫の中から数種類の野菜を持ってくる。野菜の皮を剥き、食べやすいサイズに切っておいて皿に移し替える。
野菜を切った時に出た生ごみを火魔法で消し炭にして、ごみ処理は完了だ。あとやれることって言ったら、ブルーベリーソースか。作るのは直前でもいいかな?
そろそろ二次発酵も終わる頃だし、パンを焼こう!
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