43:ダチョウは考える







「『樹木操作ウッドコントロール』……、っと。」



懐から取り出したタネを地面へと撒き、即席の椅子を創り出して座り込む。


こんなちょうどいいお天気は久しぶりかもしれない、最近ずっと何かに振り回されていたし、こうやってのんびり日向ぼっこするにはちょうどいい気候だろう。少し肌寒いけれど、日に当たっていれば体も温まる。……まぁ長時間やり過ぎると体の性質が生物から樹に寄り過ぎてしまうだろうから注意しないとだけど。



「今は周りに他の人がいるから大丈夫だろうけど、一人でこんなことしたら文字通り木になってしまうから……。」



私たちエルフは人類種ではあるが、少し"樹"としての性質も持っている。正確に言うと樹として性質を引き出し増加することが出来る、と言うべきだろうか。確かプラークにいたころレイスに『森を伐採してたら木の中からエルフが出てくる』みたいな話をしたが、アレは一人でぼーっとしすぎて森の中に埋まってしまったエルフのことだ。


エルフが得意とする樹木を操る魔法は、自分たちの体の性質を少し樹に近づけることで効果を高めている。魔力を樹木魔法特化に変質させる、と言った方がいいだろうか。まぁ私みたいに四桁を超えてくるとたまにそこら辺の境界があやふやになって、のんびりしてると樹に成り過ぎてしまうことがある。そのせいで気が付いたら木に埋まる、みたいな状態に陥ってしまうのだ。



「ある程度は耐えられるけど、さすがにそこから数百年が経っちゃうともう人間じゃなくて完璧に木になっちゃう。そうなったらもう戻れないし……。まだまだ私は世界を見たいし、気を付けないと。」



そんなことを考えながら、最近できた友人とも弟子とも呼べるレイスの方へ視線を向ける。


地面に敷き物を用意し、防壁の外で向かい合う彼女と幼女王。レイスの横には分厚い本が何冊も積まれている、確かこの国の歴史だったり、王としての心構えのあり方だったり、そう言った類の本だったような気がする。幼女王の隣にも同じような本が並べられているし、今現在開いている本も同じもののようだ。



「そういえば……、お勉強会するって言ってたっけ。」



あの小さい子、この国の王の母親役を引き受けたらしいレイスは物凄い勢いで用意を進めていた。何が起きているのか解らず異世界に思考が飛んで行ってしまった宰相を無理矢理叩き起し、幼女王の現状や今の統治体制などについての質問。プラスして王としての在り方を学ぶために書物の手配をお願いしていた。


自分の母親を取られるかもしれないと危惧したデレや、なんだかデレが引っ付いているのならば自分も引っ付こうとするダチョウ、雰囲気から不安を感じ取ってしまったのかわけもわからず泣き叫ぶダチョウ、自分がなんで泣いてたのか忘れてしまい即座に落ち着いて首をかしげるダチョウ。普段通り穴掘りして遊んでいたら深く掘り過ぎて自力で出れなくなったダチョウ。


そんな子たちを対処し平等に愛を振りまきながらレイスは走り回っていた。



(しかも、魔力操作も忘れずにしてたよね。)



母は強し、という言葉は聞いたことがあるけれど、正に彼女のためにある言葉なのではないか。そう考えてしまうほど彼女は精力的に動いていた。300近くいる子供たちに対し、誰の前でも良き母親、等しく愛を振りまく彼女。新しく子供になったらしい幼女王に対して割く時間が増えたけれど、その分ほかの子たちが満足できるように、より濃いスキンシップをしていた。


本当に、恐れ入る。そして過労でぶっ倒れないか、とても不安。



「む!」


「あら、どうしたのデレ?」



そんなことを考えていると、デレが仲間たちを連れて私の所に来てくれる。心なしか機嫌が悪そうだ。……まぁそれも仕方のないことだろう。これまでずっと一緒だった母親が違う存在に対して愛を振りまいているのだ。自分たちだけのものだったのに、そこに違う子が入って来る。


少しだけ減ってしまった彼女たちの時間を補うようにレイスは可愛がってあげているようだが、やはり嫌なものはイヤだし不安なものは不安。ちょっとした変化に対応できていない、というところだろう。私には子はいないし、子育てもしたことがないからわからないが、人の子供と言うのは弟や妹ができた時に、構われる時間が減ったことから『自分はもう要らないのかも』と考えてしまうことがあるようだ。



(すでに受け入れたというか、気にしていない子もいる。そもそも不安なんて食べちゃった、みたいな子も。けれど今のデレみたいに漠然とした不安を持っている子もいるみたいね……。)



「こわれちゃった!」


「ん? ……あぁ、寿命早いわね。すぐに直すわ。」



デレの翼が差す方を見ると、どうやらダチョウたちのために作った樹木の遊具がすでに破壊されていた。レイスが面倒を見切れない間に滑り台などの遊具でも作って気を紛らわせてあげようと思い頑丈目に作成したはずなのだが……。ダチョウの脚力には勝てなかったようだ。滑る部分を間違って踏み抜いてしまったようで、大きな穴が開いてしまっている。デレはそれを教えに来てくれたのだろう。


体内の魔力を操作し、持っていた杖を地面へと突き刺し魔力を流す。即座に元通りになっていく遊具たち。とりあえず魔力的にもう修復が不可能なので、壊れても違う遊び方が出来るように改造したが……。一時間持つだろうか?



「はい完成。遊んでいらっしゃい。」



「あそぶ?」

「あそぶ!」

「はしる!」

「あれ! あれ!」



一瞬何か相談したダチョウたちが、各々に走り出していく。遊具に向かって走り出す子もいれば、単純にぐるぐると追いかけっこを始める子たち。そんな中、デレだけがこの場に残る。……仕方ないわね。なけなしの魔力を練り直し、もう一度魔法を行使する。先ほどまで私が座っていた木の椅子が二人掛けになり、その新しくできた部分へと彼女を座らせた。



「レイス、貴女のママと……。新しく入った子のことね?」


「うん……。」



……やっぱりか。レイスから聞いていたけれど、ダチョウと言う種族は総じて記憶力があまり良くない。初めて会ったときはレイスだけが例外だったけれど、最近はデレもそちら側に行きかけている。まだそこまでずっと同じことを覚えているわけではないようだが、この反応からしてずっと母と新しい妹のことを考えていたのだろう。



「……あの子、新しい子。嫌い?」


「きりゃい! ……けど、きらいじゃない。でもきらい。」



なるほど、やっぱりどこか納得しきれてない感じね。けどかと言って私も何か解決策を提示できるわけではないのよね……、ほらエルフって長命種でしょう? そのせいでよく『時間が解決してくれる……!』で数十年単位で放置しちゃうのよ。私は比較的長く人間社会で生きているから対応こそできるけど、そういった子育てとか関連はからっきしだし、子供の悩みの解決も……。


どうしましょう。



「とりあえず、ママにちゃんと言ってみればいいんじゃないかしら。」


「……まま?」


「そう、貴女のママはお話したらちゃんと聞いてくれるでしょう?」


「……うん。」



言葉にしないと通じない想い、というのはよくあることだ。大きな問題になってしまう前に、できる限り言葉にして整理しながら、それを聞いてもらう。ごめんなさいデレ、私にはこれぐらいしか思いつかないわ。



「……わかった! 言ってくる!」



そう言うと、直ぐに立ち上がって走って行く彼女。あら、かなり全速力。


そしてデレの行動に気が付いた他のダチョウたちが、それに追従するように走り出す。そして、レイスに突撃するあの子たち。



「あ、吹き飛ばされた。」











 ◇◆◇◆◇













「軍師様! 軍師様!」


「…………はッ! ここは!」




赤騎士、ドロテアが掛ける声によってようやく目を覚ます軍師。どうやら先ほどまで気絶してしまっていたようだ。


即座に今いる場所の把握のために忙しなく動く軍師の眼球、ある程度情報を集め終わった彼は、今いる場所がヒード王国の教会であると結論付けた。最後の記憶は"例のあの問題のシーン"。そのことから考えられるのは、天幕から出てきたレイスが、幼女王とデレと呼ばれる同族の子供から、"ママ"と呼ばれていたことを見てしまった故のショック。それで気絶してしまったのだろう。



「心配したのですよ軍師様……!」


「も、申し訳ない。」



安堵からか目に涙をためる赤騎士を落ち着かせながら、彼は情報を集めていく。声を掛けながら背中を摩り、おそらく教会の備品なのであろう手ぬぐいの一つを拝借して彼女の涙を拭く。そんなことをしながら、彼は自身がどうして気絶に至ってしまったかの経緯を確認した。


彼女の話を整理しながら軍師自身の直前の記憶を整理すると、事態は以下のような形だった様子。



①レイスが二人を連れ皆の前に登場


②幼女王がレイスのことを"ママ"呼びし、それを彼女が受け入れる


③軍師が最悪の可能性に気が付くが、もう遅い。最初は混乱が広がったが、誰かが拍手したせいで何故か受け入れられる


④拍手が喝采に変わり、お祭り騒ぎスタート。なおこの時点ですでに軍師及び宰相、そしてマティルデが宇宙ネコ状態


⑤軍師のストレス値が爆増し、胃酸も激増。すでに瀕死状態だった胃壁に『ジュッ!』という音と共に大穴が空き、気絶。即座に教会に搬送


⑥丸一日聖職者たちの治癒魔法を受け何とか穴を塞ぎ、現在ようやく復帰



という感じらしい。


因みに、最悪の可能性というのは……。





『現在レイス殿にその意志はないが、確実に次期獣王ッ! 獣王国からすれば、前獣王と常備軍を殲滅させたという圧倒的な力量を見せた彼女以外に適任者はいないッ! 他の者が獣王になろうとも国民の支持が絶対に取れない! 尚且つこのまま特記戦力不在のままだと他国に侵攻され国が消える! それを避けられるのは"レイス"のみ!』


『それだけではない! ヒード王国に対しても彼女が圧倒的な優位を取ってしまった! つい先日まで確実に狂っていたはずの幼女王の顔が! 年相応のものに成っているッ! それだけならば微笑ましいが、何故かレイスを"ママ"呼びしている! 理解が出来ない、出来ないが推測するしかないッ! レイスが幼女王の母親になった場合あり得る可能性! それは……、事実上の女王ッ!』


『ヒード王国の体制的に何かしらの変更を加えなければ王族以外王になるのは不可能! けれど幼女王のあの顔! 駄目だ! 最悪体制自体を変えてしまうような恐ろしさがある! すでにこの時点で実質的な女王はレイス! つまり"レイス"は! この瞬間望むだけで! 二国の王になってしまうッ!!!』





人の心と言うのは移ろうもの、周囲の意見や状況の変化によってすぐに変わってしまう。今その気がなくても、可能性だけですべてが終わるレベルの危険度! ヒード王国が抱える魔物資源とダチョウ、そして獣王国が抱える民兵と言えど強力な獣人兵と穀倉地帯! 合わされば脅威とかそういうレベルではない! 悪夢の倍プッシュ、魔王によるアイドルグループMOU48の結成だ!



「お、落ち着け、落ち着きなさい軍師。そう私は、"軍師"なのです。常に冷静に状況を見極めなくては……。ま、まずは現状の打破から……!」



言葉を紡ぎながら、思考を纏めていく軍師。赤騎士や他の兵士が配慮してくれたのか、この部屋はどうやら個室ですでに防諜用の魔道具が張り巡らされているようだ。教会から許可と、黙秘の契約を結んだという報告書も枕元に置いてあった。一秒でも時間が惜しい今、どうにかしてレイスが王になるのを避けられるか、考えなければいけない。



「……そうだ、あの時魔道具が示した魔力反応っ! もしや洗脳の可能性……!」


「あ、軍師様。それなのですが……。」



赤騎士ドロテアの口から語られるのは、軍師が眠っていた間の話。


何でも宰相も似たような不安を抱き、レイスもレイスで色々不安だったため教会から人を呼びだしたりエルフのアメリアに頼んで様々な検査を行ってもらったらしい。体の異常がないかのチェックは勿論、精神などに悪影響が出ていないか、洗脳などの痕跡がないのかの確認を、ぶっ倒れた軍師の緊急治療が行われている裏でやっていたそうだ。


その場にいたらしいナガンの兵士が作った報告書を、赤騎士から手渡される軍師。そこには診断書の写しが挟まれており、この王都にいる一番の神聖魔法の術者である"大司教"殿や、過去に司祭まで上り詰めたが700年ほど前に『世界を見たい』と言って自己破門をしたアメリアが調査を行ったそうだが………。結果は、何の異常もなし。


ただ単純に、レイスのバブみにやられて"ママ"と呼んでいるだけであった。



「なんでぇッ!!!」



思わず頭を抱え叫んでしまう軍師。


単純にバブみにやられてしまった以上、もうこっちはどうしようもない可能性が高い。残る選択肢は獣王国での工作だが、そもそも獣王国に潜むナガンの諜報員の数は非常に少ない。彼が求める効果を発揮するには長い時間がかかり、その間にレイスが王位についてしまってもおかしくない。



そして。



そんな思い悩む軍師の元に、一人の兵士が来訪する。どんどんと足音が近づき、病室のドアが開かれた。




「軍師様ッ!」


「ッ、……どうしましたか。」





すでに崩壊した彼自身を見せてしまった赤騎士に対しては意味がないが、自身の"軍師"たるイメージを保つために即座に雰囲気を整えた彼は、飛び込んできた兵士を迎え入れる。


そのナガンの兵士は懐に忍ばせていた書状を彼へと手渡し、即座にこの部屋から退出した。未だ気配がドア付近にあることから、外部からの諜報に備え警備してくれているのだろう。教会は人類と言う種族の味方であるため、どこかの国家に属したり肩入れすることはないが、例外はあり得る。それを警戒してのことだろう。


そんな優秀なナガン兵の様子を満足げに頷き、精神を整えた軍師は書状を開く。そこには……。




『獣王国で発生したアンデッド、未だ増殖中。獣王国内で救援を求める意向が固まった模様。なおアンデッドは準特記戦力級を多数保有している模様。人為的な災害の可能性アリ。』




「これは……。」



現在、軍師の脳内にあるのは、二つの選択肢。


すなわち、




『ダチョウと敵対する』か、『ダチョウと友好的な関係を続ける』か。




追い込まれた彼ではあるが、そのどちらを選んだとしてもある程度戦い抜ける勝算があった。


まず『敵対』する場合、今現在入ってきた報告を見なかったことにし、即座にナガン王国へと帰還する。そして始めるのは周辺国の併合作業。正確には、他国の特記戦力の引き抜き。併合はおまけのようなもの。ナガン王国の北に位置するトラム共和国の特記戦力『不死』、西に位置するリマ連合の特記戦力『海龍』を傘下に収めることが出来れば、十二分に勝算があった。



「(『不死』殿は私を非常に嫌っていますが、あの方は実利を理解できる方、ダチョウとの戦だけを考えれば最後まで味方でいてくださるでしょう。さらに私と同じ"特殊タイプ"ということもあり非常に相性がいい。そして、『海龍』殿。あの方は条件次第で、上の下程度までその力量を伸ばすことが出来る。決して難しい勝負ではない。)」



確かに軍師の思惑通りに陣容を整えることが出来れば、勝算はあった。そしてその陣容を整えるための策略はすでに進行しており、最後の一押しを行えば一月以内に二国の併合が可能。北のトラム共和国も、西のリマ連合も人間種がその多くを占めるが故に可能となる策。……しかしながら問題は、戦の後である。



「(『海龍』殿は戦場と酒と女性さえ用意すればその後も傘下にいてくださるでしょうが、『不死』殿は確実に離反し……、帝国に付くでしょう。またダチョウたちに勝利したとしても、ヒード王国やチャーダ獣王国の統治をどうするかと言う問題が出てきます。)」



戦に勝ったとしても、待っているのは問題が山積みの内政地獄。そもそも戦争直後に国内の"人間至上主義"という思想を一掃しなければ、ヒードと獣王国の統治など不可能。そして一掃するということは、どんなに頑張っても確実に内乱へと発展する。そして内乱が起きれば兵の引き抜き、つまり併合した地域の駐屯部隊の戦力低下。結果として各地で反乱がおきることも予想できた。


軍師の力量によってその多くを収めることは可能であろうが、0にすることは不可能。


その内乱や反乱を収めているうちに、確実にあの"帝国"。北の大陸に存在する最強国家が動く。



「(帝国としては、私たち小国が勝手に潰し合っていた方が都合がいい。彼らとしても海を越えた先から攻め込まれるのは困る。例え圧倒的な軍事力で押し返すことが出来たとしても、今の皇帝の性格を考えるに纏まる前に叩くだろう。)」



強大なライバルになる前に叩き潰す、そんな思想を持つ帝国の目の前に、巨大化したとはいえ反乱や内乱で疲弊しているナガン王国があればどうなるか。当然、叩き潰す。



「(帝国に忍ばせている諜報員を上手く使えば遅延工作程度は出来るでしょうが、それでも限界がある。こちらの特記戦力の数にも限りがありますし、敗北は確実。)」


故に、総合的に考えて、ダチョウと『敵対』するのは、危険性が高すぎる。





「つまり生き残るには、現状維持。このまま関係性を深めていく以外、ありませんか。」





現在ナガンとヒードは対等な同盟国だが、もしレイスが王位に就いた瞬間そのバランスは崩れる。ヒード王国と獣王国の力を持つ新たな国家が生まれ、ナガンは半ば従属するような形になるだろう。しかしながら、それを選択すれば少なくとも国が崩壊するような未来は見えてこない。レイスの性格を見る限り、彼女は懐に入れたものに対してはかなり甘くなるタイプであると軍師は考えていた。



「……となると、いかにナガンが有能であるかを示した方が今後得になるやもしれませんね。」



優秀が故に殺される、ということは過去の歴史から見てよくあることではあるが、彼女の性格からしてそれはない。仲間である間は、いくら怪しくても手を下すことはないだろう。レイスが今後拡大政策を取るのか、それとも現状維持を望むのかはわからないが、これからのことを考え、ナガンの発言力を高めるには強さを示す方がいいだろう。



「この対アンデッド。利用しますか。」

























〇レイス

なんとか初撃のデレは受け止めたが、後続を受け止めきれず吹き飛ばされた。【れいすくんふっとばされた!】


〇デレ

ちゃんとおはなしした。あんしんできたけど、それはそれとして新入りはきりゃい!


〇ルチヤ(幼女王)

なんかママが吹き飛ばされた、けど大笑いしてる。わたしもたのしい。デレお姉さまはライバル。


〇おばあちゃん(アメリア)

おばあちゃん。


〇軍師(院)

やはりアンデッド討伐か……、いつ出発する? 私も同行しよう。









〇ダチョウ被害者の会【再会編】


「いやはや、こんな場所でまた再会できるとは思ってもいませんでした獣王殿。」

「然り然り、以前は敵だったとは言え貴殿ほどの武人とまたお会いできるとは……、ヒード国王。っと、前王、でしたな。」

「「はははっ!!!」」



「デロタド将軍?」

「なんだボブレ。」

「あの御二方確か殺し合ってませんでした?」

「だな。」

「こう、なんで旧友と再会した雰囲気で酒飲んでるんです?」

「私にもわからん。」



「あなたっ! また飲み過ぎて悪酔いしたら帰り道置いていきますからね! あ、獣王さんもほら、これ昨日スーパーで特売してたのよ。良かったらどうぞ?」

「うむ! 妻はこちらに来てから料理を始めてな! まさにほっぺが落ちるとこのことかと毎日思っている! まぁ落ちるほっぺどころか肉体がもうないのだがな! はははっ!」

「もう、あなたっ!」

「まぁまぁ奥方、そうかっかなさるな。では早速……、おぉこれは美味い!」



「デロタド将軍?」

「なんだボブレ。」

「確かあの王妃殿って夫が獣王に殺された心労で無くなった方ですよね。」

「だな。」

「こう、なんで夫の友人に料理を振舞う若奥様みたいな振る舞いが出来るんです?」

「私にもわからん。」



「あ、デロタドさんにボブレさんも! まだまだ料理はたくさんありますから、召し上がってくださいな!」

「し、しかし王妃陛下? 我らはナガンの……。」

「そんなの関係ありませんわ! さ、座って座って、お酒は何にしましょ!」

「か、かたじけない……。」

「ご、御馳走になります……。」





今日も被害者の会は平和です。




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