③-2
「ええ声で叫ぶなぁ。」
にんまりと笑い、言葉を喋る。人ではなく、
生命はないのに脈が皮膚から浮き出ている。
抜け落ちそうな歯が気持ち悪い。
女は身体が身動きが取れないほどの重圧で胸骨あたりが苦しい。夢の中で、起きないまま目をこじ開けられているかのように、息苦しく、なぜか呼吸ができない。
「このまま、殺したってもええねん。」
大きなギョロ目の粘膜が更に窪んで剥き出される。
心拍が速くなり、喉が詰まり、耳鳴りがする。
でも、今じゃない。
小さな音のような声とともに、一気に女の肺に空気が押し寄せた。荒く息を切り、痛苦しさで喉が瞬時に焼ける。
一筋の涙が、頬をつたった。
色んなことを思い出す。
いったいどんなことをすれば、私のような不幸な人生を歩むのだろうか。
私がいったい、何をしたというんだろう。
一生懸命、生きた。
必ずいい方向に進むと信じた。
しかし、心を締め付ける事柄が立て続けに起きた。
一心不乱が足りなかったのか。
血を吐くほど生きることにしがみつけば良かったのか。
憎しみに満ちれば、
恨むものさえわからないけれど
憎悪に満ちて生きれば
こんな終止符を見なくて済んだのだろうか。
腐らずに生きたかった。
蝕まれそうなときも、心を落ち着かせた。
必ず、状況は良くなる。
根拠のないことを、信じさせた。
そして、ついに幻覚まで見るようになった。
なんだこの吐き気のするような形状の"これ"は。
生きる人間全員の心の奥深くで眠っている悪鬼がえぐりだされたような"これ"。
「そんなに気になるか?わしはな、、、」
それが正体を晒すまえに、女は手を伸ばして力一杯それを取り押さえた。"ぐにゃり。"実物しないもののはずが、素手に感触が行き渡り悪寒が全身を震えさせるが、伸ばした腕が力を失うことはない。
「くっそ!!!!あつい!!!やめろ!!!あつぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
プシューとそれが湯気を出し、女が取り掴んだところは火花をじりりと走らせる。
女は眉尾がもう上がらないところまで目頭に力を入れてたった一つの感情に支配された。
それは、込み上げる"怒り"だ。
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