第15話 誤認

「モルモル。本当に、この集落でいいのかよ?」

「間違いないって、お兄ちゃん。

 私のセンサーに人間反応がビンビンきてるし……」

 

 勇者ヤミーを追跡中のジルベルリと妹のモルモルは、魔王城からそう遠くない獣人集落に来ていた。


「とりあえず、お巡りさんにでも聞いてみるか……」

 そういいながらジルベルリ達は派出所を訪ねた。


 最近人間を見かけなかったかどうか、獣人の巡査に尋ねたら、いきなりこんな返事が返って来た。


「人間ですか? ああ、それなら川に近い道筋の宿に数日前から泊まっていますよ」


「ま? 早速当たり引いちゃったよ。お兄ちゃん!」

「ああ……でも、指名手配かかってたんじゃないの?」

 モルモルはドヤ顔だが、ジルベルリは狐につままれた様な顔をしている。


「いえ、いっしょに獣人の子供がいるんですけど、あの人間は勇者じゃないからって……」

「はあ? そんな……人間がこの辺うろついてる訳ないでしょ! 

 お巡りさん、騙されたんじゃない?」

「はあ……」


 仕方ないので、巡査に案内してもらい、宿に確認しに向かった。


「うん、お兄ちゃん。ものすごい魔力だわ……たしかに勇者じゃね?」

「そんなに感じるのか……お前がそんなに言うなら間違いないかな。

 お巡りさん、これ見逃してたの重罪かもよ。

 まあ、僕らの手柄になるし、結果オーライなんで……もう戻っていいよ」

 ジルベルリにそう言われて、巡査はホウホウの体で派出所に戻っていった。


 二人は物陰から気づかれない様に、宿の様子を探る。


 しばらくして、獣人の少女と人間の女性が宿から出てきた。

「あー、あいつだよ! あの魔力……間違いない!」

「どれどれ……」

 ジルベルリが眼を凝らして注視し、モルモルも同様にガン見していた。


「うわー。すごくとうの立った勇者だな……。

 確かにあれだと、魔王様は処女で喰いたくないかも……」

「うーん……あんなキモいの、やっぱお兄ちゃんとはエッチさせられない! 

 お兄ちゃん! ここは約束通り、私が処女奪いにいくからね!」

「ああ……頼むわ……」

 正直、あれだと食あたりしそうで、ジルベルリもあまり食指が動かなかった。

 

 外出していた勇者と獣人は、一時間程で宿に戻ってきた。

 どこかで外食でもしてきたのだろう。


 ジルベルリとモルモルは、夜中に襲撃する事とし、日が暮れるのを待った。


 ◇◇◇


 そして深夜。モルモルが行動を開始した。

 

 夢魔というだけあって、まずターゲットには淫夢を見てもらう。

 そして通常は、催眠状態にしてから、ターゲットの好む形に擬態して近づき、淫行をして精気を吸うのだが、今回は処女でなくなりさえすればいいので、夢遊状態にして、いきなり擬態で造ったアレをぶち込めばいいという簡単な仕事だ。

 

 モルモルの催眠魔法で、勇者も獣人の子供も深く眠っている様で、ピクリとも動かない。試しに、勇者のほほをツンツンしてみるが、全く反応がない。


 ははは。あとは、アレを擬態して、こいつにぶち込むだけか……。

 拍子抜けするくらいつまんないわー。

 ちょっと位、いたずらして精気吸ってもいいよね!

 

 そう思ったモルモルは、そおっと勇者の下半身の様子を伺った。


「あんっ」


 勇者は今、モルモルが見せている淫夢に翻弄されているはずで、ちょっとくらいあそこを突っつかれても、現実なのか夢なのか、区別さえつかないだろう。

 実際に、夢に翻弄されて、中はすごい事になっているようだ……。


「うわー。何これ。すっごいピリピリする精気。ちょっとクセになりそう……。

 指先でこんななら、実際にアレ入れたらどうなるのかなー……ごくりっ」


 そしてモルモルは、自分のあそこにアレを擬態し、勇者の上にかぶさって、それを勇者のあそこにあてがい、思い切り腰を前に突き出した。


 当然、モルモルのアレはじゅぽっと勇者に入る……はずだったのだが……。


「あれ? えっ、えっ?」

 なんと、モルモルが擬態したアレが、勇者の中に入る手前で蒸発してしまったのだ。


「ちょっと! なんで私の魔力が打ち消されちゃうのよーーーーーー!」


 そう叫んだ次の瞬間、モルモルは思い切り胸を蹴り飛ばされ、部屋の壁に激突した。


「ぐはぁっ……」


「……畜生。何騒いでやがる……って、なんだこりゃあ!」

 眼を覚ました姫路が、自分がいつの間にかノーパンな事に気付いて驚いた。


「なんなんだ……まあ、確かにエロい夢を見ていたような気もするが……。

 って、てめえは何だぁ?」

 姫路がモルモルに気付き、襟元を掴んで引っ張り上げるが、壁に激突した衝撃で、どうやら気を失っている様だ。


「なんだよこいつ……下半身真っ裸で……。

 こいつがあたいの寝込み襲いやがったのか……。

 やれやれ。こんな事、あっちの世界だけで十分だってのによ……。

 なんであたいは、こうも女にばかりモテるんだ。

 まあいいか。据え膳喰わぬは女の恥ってか。

 久しぶりだし、おいしく戴いてやんよ!」

 

 スズランが熟睡している事を確認した姫路は、モルモルの着衣をすべて脱がせて、自分のベッドに放り投げたかと思ったら、おもむろにその身体にむしゃぶりついた。


「んんっ。え? あ? 私一体……。

 って、あんっ、あんっ……あー、そこはダメーーー」

 モルモルが気づいた時は、すでに姫路の指が彼女の快感の中心を撫でまわしていて、それに抗う事が出来ず、脳天を突き抜ける快感に身をよじるしかなかった。


 ◇◇◇

 

 「はー。モルモル遅いなー。まさか処女奪うだけじゃもの足りなくて、精気吸ってお楽しみだったりして……ま、それはそれでいっか!」

 結局そうして、ジルベルリは翌日の昼近くまで、宿の外でモルモルの帰りを待つはめになった。



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