第4話 出陣
いよいよ明日が、勇者ヤミーが魔王討伐に向け出発する日となった。
訓練用の催淫剤? は日々強さを増強され、正直、あの快感に、体は全く慣れていない様にも思うが、マジに言わせると着実に耐性が上がっているとの事だった。
最初のうちは、やはりかなり恥ずかしかったが、ここ数日はかなり慣れ、マジと睦み合うのが楽しいとさえ感じられる様になってきている。
こりゃ、完全に目覚めたわ……碧はそう思うが、一方で、生きて帰るためと自分に言い聞かせて、無理やり納得していた。
その夜は、勇者の壮行会という事で、盛大なパーティーが催された。
豚の丸焼きなんて、初めて見た。
他にも豪華な料理が並び、碧の食指は動きっぱなしだったが、マジに食べ過ぎない様にと注意された事もあり、明日に備えて早めに就寝する事にした。
就寝前に、マジに身体を拭いてもらうのもすっかり慣れてしまった。
変なところに触られたり、指を入れられたりするのも、最初は対魔王の訓練だと思う事にしていたのだが、今ではすっかり触ってほしい自分がいるのが分かる。
ベッドの上に二人で並んで横になり、しばらくして碧がマジに話かける。
「いよいよ明日本番だけど……いままで有難うねマジ。
そして、最後まで助けてね」
「もちろんです、勇者様。あれだけの快感に耐えられたのですから、絶対大丈夫です。私もお供して最後まで見届けますので、ご安心下さい」
「それでね、マジ……今夜は……その……訓練じゃなくて、お友達として、仲良くしてくれないかな?」
「それは……」
「迷惑だったらごめんね……私、女なのにあなたの事が……」
「ああ。迷惑だなんて……。
そもそもエルフって、繁殖目的以外では、人を好きになる場合にあんまり性別を意識しないんです。勇者様に好きって言ってもらえて、大変光栄です」
「よかった。それじゃ……」
そうして二人は身体を重ね合い、お互いを求めあった。
◇◇◇
翌朝。魔王討伐部隊が、中庭に集結した。
司令官兼道案内の大神官が、勇者ヤミー、マジとともに馬車に乗り、百名ほどの歩兵が付き従った。
魔王城までは二日位らしい……えらく近場だわね。でも、たどり着くまで何年もかかったりしたら、家に帰るのも遅くなるし、むしろ好都合か。
馬車は王城の門を出て、城下町を進んでいる。
こちらの世界に来てから、碧は一度も王城の外に出た事はないが、まあ予想していた賑わいとそれほど変わらないかなと思っていたら、眼の前に巨大な城壁がそびえたっているのが見えた。
「うわー。おっきい壁だね。もしかしてすんごい大きな巨人とかが攻めてくるとか?」
「いやいや、そんなに大きなやつは……ですが、このエルフ王城自体が強固な城塞都市になっていますし、基本的に住民も外には出ません」
「外は魔物だらけだとか?」
「まー、だらけという程では……」
なぜか、マジの返答は、はっきりしなかった。
外に出れば判かるか……そう思いながら碧は外の景色を眺めていた。
しばらくして、馬車はエルフ王城の壁の外に出た。
碧が見る限り、普通に荒れ地が広がっているだけだが……あれ、集落?
畑のようなものと数軒の家が見えた。
「ねえ、マジ。王城外に住んでる人もいるんだね」
「ああ。あれは王城の住人ではありません。魔族の集落ですね。
あそこは獣人の村だったかと思います」
「え? 王城のこんな近くに魔族が住んでるの?」
「ああ……すいません。エルフ王城の外は、全部魔王の領土なんです」
「えー! それじゃ、私達、もう少し警戒とかしなくていいの?」
「そうですね……気を付けます」やはりマジのキレが悪い。
夕方になり、山の麓にあたる所まで来て、今夜はそこに泊まる事になった。
さすがに魔王の領土の真っただ中。皆緊張している様だったが、魔族の襲撃などはなく、翌朝、何事もなかったかのように出発出来た。そして、昼過ぎになり、山の頂付近の尾根の所に、大きなお城があるのが見えて来た。
「あれが魔王城? まだちょっとあるわね。警戒して進みましょう!」
心配そうな碧に、大神官が語った。
「勇者様、ご安心下され。城に入るまでは何も起きません。
魔王は、我々の到着を待っているはずです」
「何それ? ずいぶんとナメプだわね……。
でもそうか。城の中で、ワナ満載で待ち構えていた方が確実か……」
「ふっ、何ですか。そのナメプとは……」マジが言う。
「うん。私達、魔王にかなり舐められているんだなって事。
でも、あれだけ訓練したんですもの。絶対ほえずらかかせてあげましょうね!」
「そうですね……」
やはりマジに元気が無いようで気にかかる。
魔王城が近くなってきて怖いのかも知れない。
怖さを知らなくて能天気なのは私だけかな? でもその方がいいわよね。
やがて馬車が、魔王城の門をくぐり、そのまま正面玄関に横付けされた。
さあ、いよいよ決戦だ!
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