第3話 修行

 夕べは、マジが同じベッドにいたせいで、よく眠れなかった。

 何かと体を密着させようとするし、隙を見せるとあちこち触ってくるし……。


「お触り禁止!」を厳命して、ようやく解放されたかと思ったら今度は、彼女の寝相がかなり悪く、掛けている布団は蹴っ飛ばすし、ネグリジェがはだけてショーツやら乳首やらが丸見えになっていて、それはそれで気になって……。

 すごい寝不足感がハンパない。


 朝から、昨日会った偉そうな感じの僧侶風の人の講義が始まったが……。

 だめだ、眼を開けていられない。

 うつらうつらしていたら、マジにうなじをぺろりと舐められた。

「ひゃー!!!!」はー、眼が覚めた……。


「勇者様、どうかしっかり私の話を聞いて下さい!」

 偉そうな感じの僧侶風の人が言う。

「は、はい……すいません……」なんだか授業中に先生に怒られたような気分だ。


「大神官様。あなたのお話は異世界の方には難しすぎるかと存じます。

 もっとわかりやすく、お話されてはいかがでしょうか?」

 マジがフォローをしてくれた。

「ふうー。そうですね。どの辺が分かりませんかな?」

「…………」

「……仕方ない。それでは噛み砕いて最初から……」


 ◇◇◇


 偉そうな感じの僧侶……もとい大神官さんが説明してくれたのは、昨夜マジからも聞いていた処女の勇者が魔王キングと戦うという事と、それに向けて一ヵ月くらい特訓してもらうという事だった。

 その後、山奥の魔王城に行って決戦するらしく、無事魔王を倒したら、莫大な報償と共に、自分の世界に返して貰えるらしい。


 報償って何なのかな? でも、死んじゃう危険もあるんだよね? 

 不安そうな碧に、マジが言った。

「私を含めた精鋭が付き添いますので、どうかご安心を!」


 マジが頼りになるのかは、現時点では何とも言えないが、それしか帰還の方法は無いと明言された。


 講義が終わってお昼になり、昼食が運ばれてきたが、えっ? 何これ。

 昼間っからステーキですか……しかも400g位ありそう……。

 もちろん大好物なので、おいしくいただいた。


 午後からは、剣技と魔法の特訓だが、どちらも、マジが教官をしてくれ、碧は剣も魔法も使った事がないので、超初心者コースでの特訓をお願いした。


「そうですね。

 無理をしてケガでもされては困るので、基礎の基礎をみっちりやりましょう」

 そう言って、マジは、剣の素振り百回。魔術ロッドの素振り百回を碧に課した。


 剣はともかく、魔術ロッドもただ振るだけでいいのかしら? 

 こう、何か念を集めるとかはしないのか、マジに聞いてみたが、まだその段階ではないとの事なので、素直に素振りをした。


 各百回の素振りが終わると休憩となり、お茶とお菓子が出てきた。

 そしてまた、次の百回に入る。


 そうして夕方までに、剣とロッドの素振り各百回とおやつを4~5セットやって、今日の訓練は終了となった。


 自分の世界ではバスケ部に所属していたため、正直、この位の運動ならあまり苦にはならない。だが、いつもの部活後は、お腹が空いて仕方ないのだが、ここの訓練は、休憩の度にお茶とお菓子が出てきて、今日はそれほどお腹が減っていない。勇者って事で、厚遇されてるんだなーとは思った。


 訓練後、差し障りのない範囲で、またマジにお湯で体を拭いてもらい、食堂に向かった。


 えーーー! 何これ……。


 昼食もビックリしたが、夕食はそれに輪をかけて豪華だ。

 まるで、中学の修学旅行の時泊まった、ホテルのバイキング見たいだ。

 部屋の両側に、屋台の様にカウンターが並び、肉やら魚やら野菜やらの、どれも美味しそうな料理が山積みにされていて、そこに行くと、給仕さんがお皿にその料理を山盛りにしてくれる。デザートも種類が豊富で……これを貸し切りとは……。

 さすがの碧でも全種制覇は難しそうだ。

 

「だめだ……さすがに動けない……ただいま、全力消化中!」

 そう言って、碧はベッドに仰向けに転がっている。

「お腹でもお揉みしましょうか?」マジが問う。

「やめて……そんなとこ揉まれたら、逆流しそう……。

 ……そうじゃなくて……何かにつけて触ろうとしないでよね!」

「はは。ですが、ものすごい食べっぷりでした。見てて惚れ直しましたよ! 

 明日から訓練も徐々にきつくしていきますので、しっかり食べて、しっかり寝て下さいね! あと……性的ご奉仕も、ご要望がございましたら遠慮なくどうぞ」

「……それは間に合ってます」


 ◇◇◇


 マジの言った通り、翌日から訓練は徐々にきつくなっていった。


 午前中は、ランニングや筋トレ主体で、午後は相変わらず剣とロッドの素振り。

 だが、この素振りの回数と時間のノルマがだんだんきつくなってきた。

 そして、相変わらずのおやつと豪華な食事。


 二週間くらいしたら、体に筋肉がついてかなり引き締まってきて、体重も若干増えたように思える。

 でも、これじゃ、お相撲さんの稽古とそんなに変わらなくない?

 あと二週間位で出陣のはずだけど、魔法の練習はいいのかしら?

 そう思って、あらためてマジに聞いてみた。


「まあ、処女というだけで魔力目標は達成してますので、特に術とかを覚える必要は……」

「そうなの? それで、どうやって戦うの……まさか、魔王とエッチするとか!」

「はは……まさか。そんな事、私が許しません! 

 その時になれば判かりますよ……。

 ですが、不安を抱かれたままでも困りますし……少し魔力の訓練をしましょうか?」

「うん、そうしよ!」


 碧は、マジの後について行き、王城の地下室のような所に入った。

「ここは、魔法訓練の為の部屋で、どんなに強い魔力を放っても、部屋が壊れたりしない防爆構造になっています。それに、訓練中は結界を張りますので、外から他の者も入れず、安全です」

「えー、でも、もし中で爆発とかしたら、中にいる私達はどうなるのよ」

「まー、そうならない様に注意しましょうね」

「……」


「それでは、勇者様。これをお飲み下さい」

 そう言って、マジが小型の薬瓶を差し出した。中に液体が入っている。

「これは?」

「体内の魔法力を高める薬です。

 勇者様は、魔法の経験が無いと思いますので、最初は、こうした薬剤をトリガーにします。生命に別条はありませんので、一気にどうぞ」

「ふーん。でも疑ってても仕方ないか。えいっ!」碧は一気に飲み干した。

「ふわー。すっごく甘い……」

「効き目が出るまでちょっとかかります。椅子にでも座られていて下さい」


 十五分程、椅子に座ってじっとしていたら、体が熱くなってきた。

「勇者様。お加減はいかがですか?」マジが尋ねる。

「そうね。なんか体の奥から火照ってる感じ。これが魔力なの?」

「そうです……それじゃ、どのくらい効いたか確認しますね」

 そう言いながらマジは、いきなり碧のバストに手をやり、乳首と思われる部分を、指でツンっと強く押した。


「うきゃーーー!」

 大声と共に、碧が椅子から飛び上がった。


「な、何これ。すっごく感じちゃったんだけど……。

 ち、ちょっとマジ。あんた、私に何飲ませたの?」

「何って、魔力増強剤です。勇者は魔王の魔法攻撃にある程度耐えられた方がいいので……でも、まあ、魔力増強剤というより催淫剤に近いかもですが……」

「ちょっと! 何飲ませてんのよ! 

 そんな恥ずかしい事、耐えられる訳ないでしょ!」


「あー、ですがそれだと死ぬかもです。慣れて下さい……。

 ほーら。勇者様の身体はもう、すっかりその気の様ですよ」

「えっ? ……あっ!」


 碧が自分の下半身に眼をやると、履いているズボンの股間にしっとりと滲みが浮いていて……いや、これおもらしじゃないし……そんな……。


 だんだん意識も朦朧としてきた。そして身体の芯が燃えるように熱い。

「ちょっと……これ……マジ。何とかして……」

「勇者様。このマジに、お任せ下さい!」

 そう言いながら、マジが碧の着衣を脱がせ始めた。


◇◇◇


「もうやだー! 勇者やめる!」碧が叫ぶ。


 催淫剤の効果が切れるまで、さんざんマジに身体をいじくられた。

 そしてその度に、今まで経験した事も無いような快感が脳天を直撃した。

 こんな恥ずかしい想いをする位なら、魔王に殺されてもいいと言った。


「何をおっしゃる! この国の命運は勇者様にかかっているのです。

 どうせ死なれるのなら、魔王と刺し違えて下さい。

 それに、あれは本当に訓練なのです。

 処女のまま、あの快楽に慣れていただかなくては、魔王の精神攻撃には耐えられないかと……」


「……精神攻撃?」

「はい。魔王は、ありとあらゆる快楽を、直接脳に流し込んできます。

 それでも自我を失わずに堪え忍び、最後の一瞬に賭けるのです!」

「でも、最初は……魔力はもう足りてるって……」

「最後の一撃用の攻撃力は足りておりますが、そこに至るまで耐え抜くには、この訓練をされた方が良いのは事実です。

 私がお嫌でしたら、他の、勇者様好みの女官を連れて参りますが……」


「あ、あなたでいいです……ごめんなさいマジ。

 私、てっきりあなたの趣味で持て遊ばれたのかと……。

 そう言う事なら、わかりました……」

「分かっていただけてよかった。それで、この訓練は今後も続けられますか?」

「あ…………それは……気が向いたらという事で……」


 ◇◇◇


 その夜、ベッドに入ったが、まだ身体の芯がうずいている様な気がする。

 もう薬は切れているはずなのだが……。


 悶々としながら、碧はベッドの反対側に寝ているマジに眼をやった。

 相変わらず、ネグリジェがはだけていて、すごい恰好をしている。


 昼間の事が思い出され、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。

 ……でも……あんなの初めて……。


 碧は手を伸ばし、ちょんとマジの乳首をつついてみた。

「はうん……」マジが、艶っぽい声を上げ身体をよじったが、昼間張り切っていたためか、眠りは深い様だ。


 なんだろう。この気持ちは……。


 過去に彼氏が出来た事は無いが、男の子を好きになった事が無い訳ではない。

 でも……その時の感じともちょっと違う……。

 私、本当にマジが好きになっちゃった?


 碧は、あられもない姿で寝ているマジを眺めつつ、ちょっとじゅんっとなった股間に手を添えながら、あの訓練も悪くないかもと思い直していた。


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