第24話 登頂

 水晶を手に入れた天童京子はリボーンの幹部(鬼)達20名を連れて富士登山を開始した。


 頂上で行う儀式のため祭壇を作る道具や部材を山伏の衣装を着た幹部達が担いでかついでいる。


 今朝の大地震の影響で登山客は少ない中で異様な集団は朝日を浴びながら頂上を目指す。


ーーーーー


 景子は富士山に向かうハイエースの中でまだ皆んなに言ってなかった予知夢の続きを話し始めた。


景子「富士山の大噴火、それを引き起こすのが水晶よ、天童は水晶を使って噴火の口火を切るの」


 「噴火したら最後、溶岩の流出、火山ガスからなる火砕流、大量の火山灰の降灰で完全にインフラは遮断され全ての機能麻痺が起こって日本中の原子力発電所の爆発と放射能漏れが起きるわ」


美久「東北は大丈夫なの?」


景子「富士山の噴火後は続けざまに磐梯山、蔵王山、恐山と次々噴火して完全に日本全体が麻痺するわ」


ローラ「私達に止められるかしら」


景子「この予知夢はもう一つの違う結末もあるの」


 「もうひとつ見た予知夢は富士山が消え去る夢」


 「一瞬の出来事で、はっきり分からないけど富士山が無いから噴火も無いような」


 「消す方法が私にもわからないの、、、」


 「だから水晶が天童に渡った今、そこに行くしかないわ」


美久「行って確かめるしかないわね」


ーーーーー 


 天童達は途中出会う富士山パトロールの人達や彼らを不審に思う登山客は全て躊躇なくちゅうちょなく抹殺しながら頂上を目指した。約10時間かかり頂上に着くと早速火口付近を陣取り祭壇の組み立てに取り掛かる。


 祭壇にはアマテラスの水晶を真ん中に配置して天童京子は一心不乱に呪いの呪文をかけ続けた。


 幹部達も天童の後ろで胡座あぐらになり合唱している。


 周りで見ていた多くの観光登山客はそれが山伏の修行にしか見えない。


ーーーーー


 ハイエースを飛ばして富士山に向かいながらAMのNHKラジオを聴いていると鹿児島、熊本、宮崎は先程の地震被害で既に3万人以上の行方不明者が確認されているという。


 津波注意報も発令されている。


 無論、中四国も数千人レベルの行方不明者、地震による火災や家屋の倒壊などが発生。


 広島の工業地帯はコンビナートの爆発で広範囲に地獄のような光景が広がっていると伝えている。


 高速道路は所々亀裂が入り、一般道に降りたり高速に乗ったりで通常の半分の速度でしか走れない。


 島根を出発して9時間かけて富士宮ルートの入り口に到着した。


 もう午後3時を回っている。


 下山してくる人々が山頂の異様な修行僧の話しをしているので天童達と分かる。


 美久達は車を降り

美久「パパはここまでよ」


 「ふもとに降りて待ってて」


武司「もう俺は役に立たないみたいだね」


美久「そう、パパは足手纏いあしでまといよ」 

美久の目に涙が溢れる。


  「ごめんね」


  「今までありがとう」


  「時間がないから行くね」


佳奈「毎日楽しかったわパパ」


  「今まで本当にありがとう」


  「次は優しい奥さん見つけてね」


 美久と佳奈はそれぞれ武司を抱きしめ、流れる涙をハンカチで拭い最後の別れをした。


 女性達は全員走りながら富士山頂を目指す。


 すると直ぐに凄まじい地震が発生して全員立つことも出来ずに、登山道にうずくまる。


美久「何、何があったの!」


  「もう噴火した?」


ジェニー「危ない美久」


 落石が多数発生し、危うく美久も下敷きになりそうになるがジェニーが落石の軌道を捻じ曲げ横に反らすそらす


 スマホを見ると緊急速報で桜島噴火の映像が流れている。それと同時に発生した地震のようだ。


佳奈「こんなとこにまで影響あるなんて」 


 かつてない大噴火に鹿児島の行方不明者数が跳ね上がり、逃げ惑う人たちの姿が映し出された。


 美久達は「急ごう、時間が無いわ」


     「走るわよ」


 全員猛ダッシュで駆け上がる。


 さすがに朝からの地震で登山客はほぼいない。


 8号目まで来たとき目の前に何百人もの黒い集団が見える。


  鬼の軍団だった


 中には霊鬼クラスの大きさの鬼も何人かいる。


鬼「お前たちもここで終わりだ」 


 鬼達は一斉に女性達に飛びかかってきた。


 先頭に立つ美久の前頭葉から放たれるかつて無い念力で目の前の鬼が数十体一気に吹き飛ばされる。


 しかし、次から次へと鬼が後ろから現れ飛びかかってくる。


 景子と佳奈が美久の前に出る


「美久ここは私達に任せて貴方達は先に行きなさい」


ローラ「美久、こっちを行くよ」


美久「ママ、お婆ちゃんありがとう」


佳奈「早く行って!」


 3人は鬼がいない道なき道を頂上に向け走る。


 その間景子と佳奈は何百という鬼を次々念力で下に放り投げ、手当たり次第に鬼の上半身を吹き飛ばしていたが圧倒的な数の鬼に距離が縮まってくる。


 一瞬佳奈が息切れした瞬間、霊鬼の投げる鉄棒が佳奈の右腕を吹き飛ばす。


「あぁぁぁっ!」


 景子も念力の集中が途切れた隙に左右から忍び寄ってきた2体の霊鬼が景子の両方の腕を掴む。


 力を使う前に両腕が引き裂かれる。


 景子は絶叫し、倒れる前に

「うぅっ、ドナ、ルビー、リン私もそっちに行くわ」


 と呟きつぶやき最後の力を振り絞って旋光を放つと周囲の鬼を道連れにして業火の如く燃え上がる。

 

 佳奈も修羅のような形相で「美久」と叫んだ後、前頭葉から発する高熱を左手から火炎放射器に変え周りの鬼を焼き尽くしたが全方位から鬼の攻撃を受け数秒で血の塊となった。

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