第23話 青龍

 美久、ローラ、ジェニーは肩で息をしながらも涙が溢れ嗚咽おえつする。あらかじめ自分達に万一のことがあっても目標を優先するルールを作っていたが、なかなかそうは行かない。


 壮絶な戦いになる覚悟をもってして苦しく、悲しい感情は制御出来なかった。


 ハイエースを走らせながら武司は美久にリュックを渡した


 「はい、これが本物の水晶」


 美久は目から溢れる涙をハンカチで拭うぬぐうとリュックを開け水晶を取り出し両手で掴んだ。水晶の中を覗いていると、中が少し水色に光る。


 「ん、」


 美久はもっと目を近づけて中を覗くと青い龍が飛び出し、目から美久の身体に飛び込んだ。


 「な、なに」


 「これ」


 美久は体の中で龍がくるっと回転し、また眠りに入ったのが分かった。


    "水晶の力ってこれだったの?"


 美久は急な出来事に呆然としていると車が1mくらい飛び上がる。驚いて車内が悲鳴で満たされると2、3秒後に今度は左右に車が倒れる程揺れる。


 武司もハンドルを左右に切るが全く追いつかない。


 20秒近く揺れた後、全員のスマホから極端に耳障りな非難警報が大音量で鳴り響いた。


「地震です。地震です直ちに避難して下さい」


「地震です。地震です直ちに避難して下さい」


「地震です。地震です直ちに避難して下さい」


と、何度も連呼しばめる


 AMラジオをつけると鹿児島から大阪まで震度6の地震が発生したと知らせている。


 地面を見ると道路の前方に大きなヒビが入りハイエースで超えられそうも無い。時計は朝の5時丁度だ。


 ハイエースから美久、ジェニー、ローラが降りて前方の裂け目を見る。


 すると、すぐ目の前の地面が墨汁を溢したこぼしたような色になり天童京子と霊鬼が地面から現れる。


 天童「逃げれたとでも思ったか」


   「ふふふふふ」


   「さぁ大人しく水晶を渡せ」


 美久はポケットに入れていた水晶を取り出す。


   「これ?」


   「そう、こんなものが有るからいけないのよ」

   

   「こんなもの!」


 と言うと頭上に持ち上げ地面のアスファルトに力一杯投げつけた。


 しかし、割るつもりで叩きつけた水晶はすかさず地面から出た何千という青い手にキャッチされる。


 キャッチした手から鬼が湧き出て水晶を京子に渡した。


   「ありがとう」


   「手間が省けたわ」


 そう言うと京子は水晶を見つめ、直ぐに黒い穴に吸い込まれていく。


 美久「ええっ、待って」


 と追いかけたがあまりに一瞬の出来事に何も出来ない。


 すると目の前の霊鬼が鉄棒を振り回し始める。


 美久もローラもジェニーも間一髪でかわす。


 周りでは続々と地中から鬼が湧いてくる。


 一瞬の隙をつき美久とジェニーが結界を張る。


 霊鬼が結界を叩き壊そうと右の拳を叩きつける。


 物凄い力で結界を粉々にすると美久、ローラ、ジェニーは手を繋ぎ前頭葉に力を込めて霊鬼にぶつける。


 轟音と共に凄まじい力が突き抜け、対戦車ミサイルが当たったかのように霊鬼の腹部にぽっかり穴が開いた。


     "勝った"


 と思ったのも束の間、霊鬼は近くの鬼を掴むと空いた穴に突っ込んだ。


 すると身体が元に戻っていく。


 霊鬼はニヤリと笑った。


 "霊鬼は元々怨みを持って死んだ鬼の集合体故に鬼を重ねれば修復してしまう"


 美久が妖しい気配を感じると周りの10人近い鬼が結合し始め霊鬼が2体、3体と増殖する。


 四方を4人の霊鬼に囲まれて一歩ずつ近づいてくる。するとハイエースから景子と佳奈が飛び出し、霊鬼をすり抜けてローラと、ジェニーの間に入り手を繋ぐ。


 5人はすぐさま内側を向き手を繋いで一気に念力を集中する。霊鬼は女性達を叩き潰そうと手を振り上げる。


 しかし、5人から閃光弾が爆発したかのような眩しい光が放たれ、霊鬼達は叫びながら火に近づいた飴細工のごとく炎に包まれ溶けていった。


ジェニー「危なかった~」


ローラ「いつも良いとこで出てきますね~景子さん」


景子「スマホの避難警報で目が覚めたわ」


佳奈「私も」


  「この音凄かったわね」


  「でも、まだ頭痛がするわ」


美久「だけど、、水晶、、、」


佳奈「仕方ないわよ」


景子「なんとかなるわ、このまま富士山を目指すわよ」


 「ドナやルビー達は?」


 「、、、」


 「そうか、、、脳波で分かるわ」


 なんて残酷な、、、


 「ありがとうドナ、ルビー、リン、、、」

 

 景子の目から大粒の涙が溢れる。それを拭きもせず

 

 「彼女達の為にも負けられないわね、さぁ急ぎましょう」

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