第21話 駆け引き

 美久、ジェニー、ローラ、ルビーは武司が無事に鳥居まで戻ってきて目を丸くした。


 ジェニー「武司もしかして、すごずご手ぶらで帰って来たの」


 ローラ「まぁ、無事なだけ良かったわ」


 ルビー「また作戦練り直そう」


 美久「ん、パパ、リュック大事にそうに抱えてどうしたの」


   「もしかして、、、」


 武司は少し自慢げに「ふんっ」と鼻をならして

 リュックの中を皆に見せる。


 ルビー「思ったより地味ね」


 武司「ダメ、ダメ、そんなこと言ったらバチあたるよ」


   「て、大蛇が言ってた」


 武司は笑顔でリュックをしっかり閉じると皆んなの先頭に立って歩き出す。呆気にあっけに取られながら座っていた者達も立ち上がって武司についていく。


 入ってきた扉を抜け、宝物殿の部屋まで戻った。


 しかし、宝物殿を出ようと玄関まで行くとガラス扉から外に白い霧がかかっているのが見える。


 ルビーが先頭に周り、玄関の扉を開けると鬼が周りを囲っている。


 風で霧が流れると、何千と鬼が待機しているのが分かる。


 その鬼達が道を開けるように後ずさりして目の前に一つの道が出来る。


 そしてその道の向こうに一際ひときわ大きな鬼がいる。霊鬼だ。


 その隣には華奢な姿の白い着物を着た30代位の女性が立っている。天童京子である。


 二人はこちらを向き笑っている。


 霊鬼との距離は50mくらいだろうか


 霊鬼が低いがよく通る声で


「お前たちの持ってる水晶をこっちに渡せ」


「さもないと、こいつらの命は無い」


 後ろから赤鬼が出てきて景子、佳奈、リンが3人とも一緒に縛られている。


 赤鬼に蹴られ霊鬼の目の前に転がされる。


     「イターイ」


 リンが叫ぶ。

 佳奈と景子はぐったりして意識がない。


 霊鬼は「お前たちの能力は知っている」


「しかし、いくら力が使えても俺がこいつらを踏み潰すのは一瞬だ。」


「試してみるか」


 と言うとリンの右足膝あたりを霊鬼が左足で踏んだ。


 ドンッと言う音が美久達にも聞こえたがリンの右足の膝から下は斜め上方向に吹き飛び側に立つ鬼の顔にあたる。


 リンの絶叫が響き渡りる


「ギャーーーーーッ」


「あわわわわっ」


 リンはあまりの痛さに歯を食いしばりながらも涙が止まらない。


 霊鬼は次は命は無い。と言うとリンの頭上に足を上げる。


 美久が「待って!」と叫んだ


「待って、三人を離して、水晶は貴方に渡すわ」


 リンが「やめて、渡さないで」


 と泣きながら叫ぶ


 美久「水晶は渡すから先にその3人をこっちにもらうわ」


 天童「水晶を渡すのが先よ」


 低くしゃがれた声である。


 美久「人質解放が先よ」


   「水晶を割るわよ」


 美久と天童が睨み合う


 美久は武司に合図する。


 武司がリュックから水晶を取り出した。


 霊鬼と天童は目を細めて水晶を見つめる。


 美久「水晶はここにあるわ」


 美久「彼女達が3人を引き取ったら水晶はそこの鬼に渡すわ」


 と言って近くの黄色い鬼を指差した。


「こっちの言う事聞かないと、これ地面に叩きつけるよ」


 砂利の地面に叩きつけたら水晶はひとたまりもない。美久は水晶を両手で持ち頭上に持ちあげた。


 天童「分かった」


「しかし、こいつらを渡して道の真ん中まで行った時水晶はもらうぞ」


 黄色い鬼は薄ら笑いを浮かべながら一歩前に歩み出る。


 ローラ、ジェニー、ルビーは美久と目配せすると霊鬼の前まで歩いて行き、ローラが縄を解いて一人づつ背負って美久の方にゆっくり引き返す。

 

 真ん中まで達した時黄色い鬼が美久に飛びかかってくる。


 美久はさっと武司の後ろに隠れると水晶を右手に持ち変えて力一杯出雲大社の本殿に向かって放り投げた。

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