第48話 互いの写真、自覚。
(裕也視点)
失恋同盟の二人がGから逃げ回っていた頃。
「はぁ〜水曜日終わった〜」
俺は松永といつも通り帰っていた。
グググッと背伸びする松永を見て、能天気だなぁと思う。
いやでも、こんなやつでも学年一位なんだよな……なんか腹立つ。
そんな事を思いながら、
「まるで金曜日みたいなテンションだな」
と言った。
まだ折り返しだぞ。
「ええじゃんか〜後2日で土日じゃろ?」
「後2日も、あるんだぞ」
「……あ〜はいはい」
「何その『仕方なく納得してやるか』みたいな顔」
「べっつに〜?」
知らんぷりをする少しかわいい松永を見て、気が緩んでいた俺は思わず心の声が出てしまった。
「まあ、松永が楽しいならよかった」
「……え?」
……ん?
ちょちょちょちょちょっと待て、今俺はなんて言った。
『まあ、松永が楽しいならよかった』?
待って死にそう! 恥ずかしすぎて死にそう!
なーにキザっぽく言ってんだよ俺は!? バカなのか!?
「いや、あの、これは違くて」
「シャシャシャシャシャ(スマホの連写音)」
「連写やめろ」
「こりゃあ撮るしかのうない?」
「マジで消せ」
「いやじゃー」
その後攻防戦が続いたが、俺が松永のスマホを奪ってもパスワードなんてわかるわけも無く。
――ピーン!
俺はあることを思いついて、スマホを取り出した。そしてカメラを松永に向ける。
流石に予想外だったのか、取り乱す松永。
「こうなったら仕返しだ!」
「ちょ、ゆうちゃん、待って! 連写せんで恥ずかしい!」
「ふはははは、俺の気持ちを味わえぇ!」
俺が魔王になった気分で連写を続けていると、松永は突然ニヤッと笑い――
「……なーんてね♬」
「なっ」
効かない……だと!?(テンションが上がってきた裕也くんです)
「むしろもっと撮ってもええよ? うちってば美少女じゃけぇ、撮りとうなるよのぉ」
「くそっ、全く効かないか……」
バーンと手を広げてドヤ顔をする松永。
あと本当に美少女だからずるい。反論できないじゃないか。
俺が悔しがっていると、調子に乗ってきた松永が
「待ち受けにしてもええよ?」
と言った。
その手があったか! どうせこいつは俺が恥ずかしがって出来ないと思ってるんだな!?
じゃあ本当にしてやろうじゃねえか!
俺は素早くスマホを操作し、松永の一番映りがいいものを待ち受けにすると、松永に画面を向けた。
「俺のターン! どうだ、本当にしてやったぞ!」
「なっ、え、ちょ、嘘っ」
松永が信じられない、と言った様子で俺のスマホを凝視する。
今度は本当に驚いているようだった。
「ま、まあとりあえず……あ……ありがと……」
「っ!?」
おいおいおいおい照れられるとこっちも照れるんだが!?
そこは悔しがれよ!
「「……」」
変な空気になったのを誤魔化すように、松永がコホン、と咳払いする。
「じゃ、じゃあ、うちも待ち受けにするけぇ」
「は!? ちょっと待て!」
俺が止めようとする前に、松永はパパパっと操作し――
「ほら、見て!」
俺の慌てふためいている写真を待ち受けにして見せてきた。
俺は恥ずかしさやら動揺やらで何も言えなくなった。
……そんなことをしているうちに松永の家についたのは、幸運だった。
「じゃ、じゃあ、また明日」
「……おう」
互いにぎこちなくなりながら別れる。
……いい加減に素直になったほうがいいかもしれない。
いや、やっぱ無理! 明日どんな顔して会えばいいか分かんなくなる!
悶々としながら家に到着し、癖でスマホを開いてしまった俺は――
「うわああああああっっっ!?」
悶え死にながらスマホを投げ、「おにいうるさい!」と陽茉梨に怒られた。
―――――
お風呂から上がり、自分の部屋に戻ってベッドにダイブしてスマホを開き、松永の写真が入っていることを確認した瞬間、こんな言葉が溢れていた。
「……俺、松永のこと好きだわ」
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