第35話 部活

「最近雨多いね〜」


「梅雨だからな」



 6月5日、梅雨真っ只中だ。なのに松永は当たり前の事言ってるな……。



「晴耕雨読ってやつだ、真面目に勉強とか読書しろ」


「酷いなぁ、いつでもうちは真面目だよ」


「え……?」


「やめてゆうちゃん、ガチで『どこが?』って顔するの」



 こいつが真面目だったら全人類真面目になるぞ!?



「そういやあゆうちゃん、部活入っとらんね? 入ったほうが青春出来る思うけど」


「ころころ話題変わるな……。俺は万年帰宅部だ。確か松永は……あれ?」


「帰宅部じゃ」


「いや人にあれこれ言える立場じゃねえな!」



 自分も入ってないくせになんであんな上から目線だったんだ……。

 でも、なんで入ってないんだ? 俺は帰って勉強しないといけないからだが……。

 


「だってゆうちゃんと帰りたいし」


「心を読むな」


「全部顔に出しとるなぁそっちじゃー」


「……で、そろそろツッコませてもらいたいんだが」


「さーて、なんのことやら。ツッコむことなんてありませんよっと」



 とぼけるな、と言ってやりたいところだが、いちいちツッコんでいたら俺がもたん。

 俺はため息をぐっとこらえ、言った。



「な・ん・で・俺達は放課後の教室に残ってババ抜きをしてんだよっ!!」



 そう。俺達は、雨が窓を打ち付ける中、二人でババ抜きをしていたのである。

 クラスの連中はほとんど全員部活に行ったか帰った。



「雨降りよって二人共帰れんけぇじゃ」



 何当たり前のこと言ってるの? という顔をしているが、今の発言、否定させてもらいたい。



「俺の折り畳み傘をお前が奪ったからだろっ!」


「奪うなんてそんなんせんよ」


「じゃあなんでお前の手に俺の折りたたみ傘がある!?」


がめた盗んだ


「対して変わんねえな!」



 はぁ……はぁ……。つ、ツッコむのに疲れた……。

 ったく、こいつといると調子が狂わされる。


 事の始まりは、六時間目の終わりである。


―――――


『あれ、俺の折りたたみ傘が無い』


『どっかに落としてしもうたんじゃろ?』


『傘を落とすなんてそんなバカな――』


 

 そう思い、松永の方を見ると……その手には、俺の折りたたみ傘が。

 一瞬宇宙が見えた。え? どゆこと? 今一緒に探してくれようとしてなかった? で? 探しものがすでにあなたの手にあるのですが?



『いやお前何平然と持ってんの!? それだよそれ!』


『や、やじゃのぉ、これうちのじゃ』


『んなわけあるかぁ! 思いっきり棒読みじゃねえか!! そのストラップ俺のだし!』



 俺は折り畳み傘に、外見は怖いが中身は優しいオオカミのキャラのストラップを付けていたのだ。



『元から知っとったよ。ゆうちゃんのっていうなぁ』


『はぁ? じゃあ分かってて取ったのか?』


『うん、このストラップ、おそろいのあるし』


『オオカミの?』


『いや、兎のほうじゃ』


『あーなるほど』



 兎はオオカミとは正反対で、外見はかわいいのだがツンツンしている。しかし、本当はただのツンデレである。

 って説明してる場合じゃない。走ってどうにかなるレベルの雨ではないのだ。帰るためには早く返してもらわないと。



『はい、じゃあ返して下さい』


『嫌じゃ』


『……ふぅー……』



 なんとか怒りを抑え、口を開こうとしたその時。



『じゃったら、今からトランプでもしようか?』



 あまりにも唐突な提案だったので、すぐに理解出来なかった。

 いや、唐突じゃなくても理解できない。



『トランプでゆうちゃんが勝てたら返しちゃる』


『……その勝負、乗った』



 そうして、俺と松永の戦いが始まったのである。


―――――


 こいつ、ポーカーフェイス身につけてきやがった……。

 前はジョーカーに俺の手が伸びたらすごく焦ってやがったのに、今はどのカードでも真顔を保ち、時にはジョーカーじゃなくても焦った顔を作ってみせた。



「お前……強くなりすぎだろ」


「勉強してきたけぇのぉ〜色々調べたんじゃ」


「コソ練してやがったのか」


「努力言うて」



 はぁ、と短いため息を付いていると、また負けた。

 こいつ……。なんかすごい悔しい。



「なんで今日はこんなことしたんだ?」


「うーん、まあ色々あって……。今日は遅うても大丈夫なんじゃ」


「へぇ」



 確かにいつも、俺とすぐに帰ってるもんな。随分急いでいるみたいだが……。



「もしかして、部活に入らないのも?」


「うん、遅う帰れんけぇ」


「なるほどな」


「ゆうちゃんは大丈夫なんじゃろ? 仮入部でもしてみたらええ」


「う〜ん……」



 確かに、部活というのは今しか出来ないことだし……。

 でも、もし入るなら活動日数が少ない部活がいいな。あとあんまり運動しないの。



「部活って何があったっけ?」



 俺が問いかけると、松永は「なんでうちよりなごうこの学校におるゆうちゃんが知らんの」と苦笑気味に言われたが、丁寧に教えてくれた。



「メジャーどころじゃと運動部はサッカー、バスケ、陸上、野球、卓球、バレーかな。文化部は美術、吹奏楽、茶道かな」


「茶道……か」


「確か週二回くらいじゃった思うよ、活動日は」


「いいかもしれないな」



 俺は今度、ちょっと活動を覗いてみようかなと思った。

 そこで松永が突然、「そろそろ帰る?」といい出した。



「ゆうちゃん負けてばっかりでつまらんし。ほら、帰ろ? はい、返すね」


「お、おう……意外とすんなり返すな」


「まあね」



 ドヤることではないけどな。そもそも盗るな。

 そう心のなかでツッコんだ瞬間、松永がとんでもない事をお願いしてきた。

 


「うち、傘無いけぇ入れてくれる?」


△▼△▼


 柚は前に裕也の家でトランプをしたのが面白かったから勝負を持ちかけました。


 ここで読者の皆さんに質問なのですが、今の文字数はちょうどいいですか?

 もうちょっと短くして、長くしてって方は、コメントしてくれると嬉しいです。

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