第29話 まさかの結果
「いやー、昨日はよく働いたなぁ……」
バイトあがりに松永と一緒にカフェラテを飲んだ後、そのまま流れで途中まで一緒に帰った。
知っていたことだが、松永がよく喋る。だが、話し上手は聞き上手という言葉通り、相手の話もよく聞くし、自分のことのように考える。
その場の空気を自分のものにする力……こういうやつが人気者になるんだろうな、と思った。というか実際なってるし。
その時、通学路で俺を追い越した生徒の会話が聞こえた。
「今日中間テストの順位発表かー」
「だりぃ……」
ああそういえば、今日は中間テストの順位発表か……。
ま、今年も
この時は、あんな結果になるなんて予想もしていなかった。
―――――
「はい、じゃあ中間テストの結果を返すぞー。順位が低くても、それが全てじゃねえからな。他人と自分じゃなくて、昨日と今日の自分比べろー」
急に名言出んじゃねえか……。多分そういう本とか読んだんだろうな。
「蘆田ー」
「はーい」
俺は理系だ。理系の問題は例え今は解けなくても、頑張って挑戦していけば必ず解ける。答えが決まっている。
国語は、本当のところは作者や登場人物にしかわからないことを聞いてくる。論理的に考えて答えを導くが納得できるかは別だ。だからあまり好きじゃない。
苦手とは言っても国語は90点くらいは取れる。
「飛鷹ー」
「はーい……」
立ち上がって前へ向かう。
すると、担任がニヤリと笑って言った。
「飛鷹、だるそうに出来るのも今のうちだぞ?」
「はい? ちょっと眠いだけですよ」
「いや普段バリバリ寝てんじゃねえか。まだ寝足りねえのか?」
「失礼な、最近は起きてますよ知らんけど」
「自分のことはちゃんと分かっとけ? それ確証無い話の語尾につける言葉だからな。まあ、はい。成績表だ。惜しかったな」
「あざす――って、惜しかった?」
もしかしてオール百点にギリ届かなかったとか?
そう思って紙に目を落とした俺は、かつて無いほどに驚愕し、思わず叫んだ。
「に……二位ぃぃぃいいっっっ!!!??」
そんな俺に釣られるように、
「ええぇぇぇえええええっっ!!??」
クラス中が叫んだのだった。
―――――
二年三組 飛鷹祐也
英語:97点 数学:98点 国語:94点 理科:97点 社会:96点 合計:482点
クラス順位 2/39 学年順位 2/233
「嘘だ……」
俺は席に座って呆然としていた。
何度見ても、結果は同じだった。
今まで一位しか取ったことが無かった俺が、二位だと……。
っていうかよく見たら、クラスでも二位……!? ということは――
「このクラスに俺を抜いて一位になったやつがいるってことか!?」
思わずガタッと音を立てて立ち上がる。
一瞬静まり返った教室が、すぐに騒がしくなる。
「は、嘘だろ!? このクラスにそんな天才が……!?」
「ガリ勉飛鷹を抜くってだけですげえのに……!! なんか同じクラスに天才がいるってだけで誇らしいな!」
「それは俺のことかなっ☆――ってあ! ちょ、見るな!」
「猿岡……お前嘘は良くねえぞ」
「うわお前……117位とか」
「ど真ん中じゃねえか。逆に才能だよ」
「大丈夫だ、見ろ! 俺なんか200位ぴったりを取ってやったぜ!」
「……強く生きろ」
そんなクラスメイトの話は頭に入ってこなかった。
誰だ? 誰が一位なんだ? ハッ……森さんか!? いつも二位だから今回は本気で勉強して……。
そう思い、森さんの方をバッと見ると、森さんは口の前で指で小さなばってんを作って首を横に振った。
森さんじゃない!? だったら一体誰が――
「あ、一位うちじゃった! やったー!」
俺は、隣から聞こえてきた言葉が、信じられなかった。
みんな同じなのか、教室が水を打ったように静まり返る。
松永が……一位……?
「お、おい松永……嘘は……よくねえぞ……」
引きつった顔で、松永に言う。何か嫌な予感がする。
すると、松永は「何を言ってるの?」という顔でテストの結果を見せながら言った。
「え? 嘘じゃないよ?」
二年三組 松永柚
英語:96点 数学:95点 国語:100点 理科:96点 社会:98点 合計:485点
クラス順位 1/39 学年順位 1/233
△▼△▼
予約投稿するのを忘れていました……すみません!
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