第25話 初のバイト①

 2000文字を超えてしまったので、いつもより少し長めです。すみません。


△▼△▼


 結局昨日はあまり眠れなかったな……。

 そして今日から委員長に会うの気まずっ。でも気まずいですオーラ出すほうが気まずい。

 ……今日は一日中机に突っ伏してるか。顔を合わせないし、寝れるし。一石二鳥じゃねえか。


 委員長――じゃねえ、森さんは、多分俺のことが好きなんだよな?


 でもそういうの自分で言う奴マジで嫌われるし……って話す友達いなかったわ。

 そんな悲しいことを思いながら教室に入ると、真っ先に俺に気づいた松永が、さっきまで話していたグループの輪から抜けてこちらに駆けてきた。

 抜けてきたグループからの殺意……。 



「ゆうちゃん、おはよっ!」


「……おはよ」



 ……不覚にも、ドキッとしてしまった。

 昨日のせいだ。委員長の言葉のせいで松永を意識してしまうだけだ。別になんとも思ってねえし。



「んじゃおやすみ」


「早うない!?」


「心配するな昼が全部抜けただけだ」


「うん重症じゃのぉ」



 うーん……やっぱり松永が隣にいると寝れない。

 机に突っ伏しているだけで、これじゃ仮仮眠かりかみんだ。



「そうだゆうちゃん、今日は一緒に帰れる?」


「あーすまん。今日はマジのマジで用事がある」


「なんの?」



 バイトのこと言っていいのだろうか。バイト先まで来そうだが……。

 まあ初めてのバイトで緊張するかもしれないし、そこに松永がいたら少し安心出来るかもしれない。

 いやいや、仕事の邪魔をされるかも、他の友達を――

 ……いねえや。



「あー……バイトだ」


「ゆうちゃんバイトやっとったっけ?」


「今日が初バイトだ」


「へーそうなんじゃ! 頑張れ!」


「お、おう……」



 意外と場所は聞いてこないんだな?

 と思って松永を見ると、手を背中に回してうずうずそわそわしていた。



「……うずうずしてるくらいなら聞いてこい」


「……どこ?」


「『Shimotsuki』ってカフェ、知ってるか?」


「……すまんのぉ、知らんや」


「そうか。えっと、学校から徒歩10〜15分くらいの場所にある――」



 もしかしたら知る人ぞ知る名店なのかもしれない。そう思った俺は、どこにあるのかを説明した。

 ……一瞬だけ。一瞬だけだけど、松永が――


 すごく辛そうな顔になったのは、気のせいだろうか。

 

 俺が説明し終えると、松永は



「ありがとの。行けたら行くね」


「絶対来ねえじゃん」


「……頑張って行くよ」



 頑張って? そこまで方向音痴なのか? まあいいか。



「正直、厳しいかもだけど――頑張るね」


「え? すまん、なんて言った?」


「なんでもないっ!」



 松永はそう言って、夏に咲くひまわりのように笑った。

 あ……右の頬にだけ笑くぼが出来るんだな。今までじっくり見なかったからわからなかった。



「……」


「ゆうちゃん?」


「へっ? あ、え、すまん、えっと」


「なにー? うちの顔に見惚れてしもうた?」


「っ……」



 図星過ぎて、何も言えない。いや、その、別に。なんとも思ってねえけど、ほら。改めて、美少女だなーと思って……あくまで客観的に見てだが……。

 俺が目を逸らすと、笑っていた松永も「えっ……」と言ってみるみる真っ赤に。



「じょ、冗談で言うたんじゃけど……」


「あ、ああ。分かってるよ」


「う、うん、そうじゃのぉ。うん……」


「うん……」



 って、なーに初々しいバカップルみたいになってんだ!?

 おかげで変な空気になっちゃったじゃねえか!



「おいおいおいおいお二人さん! 空気に砂糖を混ぜ込むな!」


「俺は……これで糖尿病になっても後悔はない」


「なんか今めっちゃエモくなかったー!?」


「ねー! やばい〜こんな漫画みたいな展開現実にあるんだ!」



 さ、さらにやばい。クラスメイトたちが茶化し始めた。

 いくらなんでも騒ぎすぎだろ――


 ダンッ!!!!!


 突然、教室中に大きい音が響いた。教室が、水を打ったように静まり返る。

 音の主は――委員長だった。どうやら机を叩いて立ち上がったらしい。



「おはようございます、飛鷹くん」


「えっ? あ、ああ。おはよう、委員――森さん」



 そうやって俺に挨拶だけすると、委員長はなぜか廊下に出ていった。

 みんなは少しの間あっけにとられていたが、すぐにまた喋り始めたのだった。


 森さん……怒ってる、のか? よくわからん。


―――――


 放課後。


 ふぅー……初のバイト、緊張だ。うまく立ち回れるだろうか、迷惑をかけないようにしないと。



「ゆーうーちゃんっ!」


「うぉいっ!?」


「そ、そがいなびっくりする? ゆうちゃんガッチガチじゃけぇ、一緒に帰ろ。うちで緊張ほぐれるかはわからんけど……」


「あ、ああ……じゃあ、お願いしようかな」



 後ろから「結婚式呼べよ」とか「末永く爆発しろ」とか聞こえたけど、気のせいだ、うん。


 帰り道は、お互い上手く喋れなかった。


―――――


 つ、ついに来てしまった……バイト先!!

 大丈夫、大丈夫だ……こういうときは手に人って書いて飲み込んで……。いや変な人に見られるからやめておこうかな。


 俺は、このようにガッチガチに緊張しながら、思い切って『Shimotsuki』のドアを開けた。カランカラン、と鈴がなる。



「いらっしゃいませ――って、あ! 裕也さん!」


「よう、遥乃ちゃん」


「お、裕也くん! まだ時間にはなってないのに来るなんて、いい心がけだね」


「こんにちは、店長。ありがとうございます」



 そこにはバイトの制服姿の遥乃ちゃんと、店長がいた。


 さあ、初バイト張り切っていくぞ!


 そう意気込んでいた。







 数分後、人生最大の危機に遭う事も知らずに――


△▼△▼


 初バイト 緊張するかは 人それぞれ(当たり前である)

 ちなみに私は緊張しないタイプでした。

 ※ギルティ猿岡くんはお休みでした※

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