第23話 待ち合わせ
その日の夜。
俺は、夢で見た女の子について考えていた。
布団の中で読書灯を付け、ノートに状況をまとめていく。
まさか……学校以外であの女の子が出る夢を見るとはな。
「『シロバナタンポポ 花言葉』っと……」
あのシロバナタンポポが、ずっと頭に残っていて気になったので、試しに花言葉を調べてみた。
――タンポポの花言葉は、「真心の愛」、「幸せ」、「愛の信託」です。 また、花の色によっても違う花言葉を持ち、白いタンポポの花言葉は、「私を探して」、「私を見つめて」――
俺は最後の一文に目を留めた。
花の色によって違う……白いたんぽぽの花言葉は……
『ゆうちゃん、わたしをさがしてね。ずっとみててね』
ズキン、と頭に激痛が走る。まるで内側からトンカチで叩かれているようにっ……。
なんで……今まで、こんなっ……!!
全部……松永のせいだ……。松永が来てから全部がおかしい……。
あいつの、全てを見透かしたような。ガラスのように透き通っていて、俺のことを真っ直ぐ見てくれる、信頼してくれる目が……。あの目が……。
「大っ嫌いなんだよっ……!!」
――――――
「はあ……」
俺は、早朝早々――いや早朝早々ってなんだよ。「早」が重複してやがる――ため息をついていた。
昨日のことは――あの記憶のことは――忘れよう。
大丈夫。大丈夫だ。……――俺は、何に怯えて「大丈夫」と言い聞かせてるんだろう。
いやいや、もう考えないって決めただろ。
今日は委員長との約束だけに集中しよう。
そうだ。今日は委員長のために学校に来たと言っても過言ではない。……過言か?
いやしかし……今日も松永が一緒に帰ろうと誘ってくるかもしれないな……。というか誘ってくるよな。
いやまあ大丈夫か!(フラグ)
〜放課後〜
「ゆーうーちゃんっ!」
「無理」
「どえっ!? まだなんも言うとらんのに! コホン、改めて言わしてもらうけど!」
「「一緒に帰ろ!」だろ、どうせ」
「な、なぜ」
「お前の考えてることなんかお見通しだ」
全部顔に出てるからな。俺はニヤリと笑ってそう言い、教室を立ち去る。……? 俺は違和感を感じ、振り返る。
松永が、追いかけてこない?
見ると、何故か頬を朱色に染めた松永が、口元を押さえるようにして立っていた。
まあ追いかけてこないなら好都合だ、と思い再び歩き出すのだった。
数分後。
待ち合わせ場所どこだよ。
そういえば決めておくの忘れてたわ。何処に何時に集合だよ。だめだめじゃねえかよ。
とりあえずRAINしてみるか……。そう思い、
「委員長」
と打って送ると、ちょうど委員長から電話がかかってきた。
ビビったぁ……。俺は落としそうになったスマホを慌てて持ち直し、電話に出る。
「も……もしもし」
『あ、突然の電話ごめんなさい。私、文字打つの遅いから……』
「いや、大丈夫だ」
『よかった。……あ、もしかして飛鷹くんも同じこと考えてました? ごめんなさい、場所を言うの忘れてて……』
「ああ。どこに集合する?」
『じゃ、じゃあ……ハム公園でいいですか?』
「了解」
当時公園を作った人が『公園の公ってハムみたいじゃん! ハム公園にしよ!』って超絶テキトーに決めたとかいう噂があるとかないとかいうハム公園。
委員長は今そこにいるらしく、俺は全速力で駆け出す。
「委員長、今からダッシュで行くからもうちょっとだけ待っといてくれねえか?」
『え、いや、ゆっくりで大丈夫ですよ!』
「大丈夫だ。帰宅部の脚力を舐めないでくれ」
『は、はあ……』
それを言うなら陸上部だろって思ったやつ、全員ギルティな。
しかしあれだな、ずっと無言で電話してるっつーのも結構気まずいな。
切るのもなんか……な。
「……」
『……えっと……今何処ですか?』
「今はな……はぁ……あとっ……もうちょっとだ! 後3分! 多分!」
『180、179……』
「カウントダウンすんなっ!」
俺はツッコミながら、低い柵をジャンプで飛び越える。
『ふふっ、そんなに急がなくても本当に大丈夫ですよ!』
「俺の! プライドがっ! 許さない!」
『はいはい。ふふっ』
クスクスと笑う委員長。そんな会話をしているうちに、ハム公園に着いた。
「おま……たせ……」
「3分もかかりませんでしたよ? さっすが帰宅部!」
「まだそのネタ引っ張られてた!」
そこで、また二人で笑った。
ひとしきり笑い終えると、委員長はブランコに乗ろうと誘った。二人で並んでブランコに乗る。キィ……と音がなった。
ブランコなんて、何年ぶりだろう。
委員長は、ブランコを少し揺らして俺の方を向いた。とても真剣な顔で。
「今日は、飛鷹くんに喧嘩を売りに来ました」
△▼△▼
最後のセリフ、書きながら思ったこと。
うーん……「話をしに来ました」だとちょっと弱いか? シンプルすぎて読者さん離れてっちゃう?
……そうだ!
喧嘩させよう!(え?)
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