第16話 風邪と見舞い②
「掃除するからどいとけ」
「え!? いーよぉ、自分じゃるって……」
「お前は絶対にしねえだろ」
「うっ」
図星だな。
はぁー……これだから田舎者は(偏見)。
「お前はとにかく安静にすること! 俺が動く。物をしまう場所は聞くから」
「う、うん……」
俺が厳しく言うと、松永は素直に布団に潜り込んだ。
それを確認して、俺は動き始めるのだった。
「これどこだ!?」
「えっと、そこの本棚の……」
「これは――何!?」
「シャーペンの蓋」
「わかるか! いらんだろ!」
「うん」
そうやって、松永が指示したとおりに動く俺。
色々片付けて(階段は終わった)、ちょっとスッキリしてきたなと思ったその時。
「なんだ……これ?」
「!!」
縄? いや違う、もっと固くて、そう――
「……鞭?」
「それ、一回お祭りの景品であって、鞭使うのかっこようて憧れじゃったけぇ貰うたの」
「なんて物騒なもんを欲しがってんだよ……」
まさかドSなのか? 気をつけよ。
ぶるっと身を震わせて足を踏み出したその時。
「って……」
なんか尖ったものが右足の裏に刺さった。
「なんだこれ……破片?」
「うわああっ、ごめんゆうちゃん! すぐ救急セット持ってくるけぇ!」
そう言って一階へ駆け下りる松永。
何かは分からないが、多分皿の破片とかそこら辺だろ。
あいつドジだから、きっと皿をここで割って、その上に物が散乱して気づかなかったってパターンだな。
「ったく……」
危険だな。幸い靴下を履いてたからそこまで深い傷にはならなかったが……
そう思いながら破片を抜くと、血が靴下に滲んだ。
どたどたどた……バタン! ガラガラガラ! ガッシャーン!
「お、おい!? すげえ音したけど、大丈夫か――って、おい!?」
なんと、松永が階段の下でうずくまっていた。
周囲には救急セットの中身と、謎に俺の靴が散乱している。
「はぁ……はぁ……ゆ、ゴホッ、ゆうちゃん、ゴホッゴホッ、救急セット、持って、ゴホッ、来たけぇ」
「おい大丈夫かよ!? そんな急がなくてもよかったじゃねえか!?」
「ゆ……ゆうちゃんが……死んだら、どうしよって……」
「こんなんで死ぬわけねえだろ!」
「ごめ……ん……」
「てかなんで俺の靴持ってきたんだよ?」
「破片……踏まないように……」
「いや室内じゃ履けねえだろ!? 熱で頭回ってねえのか!?」
ふらふらする松永。
俺の方に傾いたので、思わず抱きとめる。
「お前っ、めっちゃ熱くなってんじゃねえか……!」
「はぁ……ごめ……」
「もういいから! 寝とけって!」
「うん……」
しかし、こんな状態で階段を上らせれば、必ずまた落ちるに違いない。
俺はそう思い――イケメンしか許されないあの行為をするのだった。
バイバイ、俺の人生――
「よっと」
「へ……!?」
そう――お姫様抱っこだ!
少女漫画でよくあるが、あれは物語の中だけだと思っている。なぜならイケメンしか許されず、すると必ず変態というレッテルを貼られるからだ。
今は非常事態だから勘弁してほしい。まあそういうのも全て言い訳とみなされるのだろうな。
「あ、あの……!?」
「うるさい。暴れると落ちるから口を閉じてろ」
「……」
手を胸の前でぎゅっと組んで、紅色に染まった顔は不覚にもかわいいと――
隣にいなかった今日は楽しくなかったと、見舞いに来て、会いに来てよかったと思ってしまった。
♡♡♡♡♡
「ふぅ……」
俺は、一人達成感を感じていた。
あんなに汚かった部屋が、こんなに綺麗に……。これだから掃除はやめられねえ。
松永はすやすやと眠っている。
すると、その桜色のぷるぷるした唇から、こんな言葉が漏れる。
「んぅ……ゆうちゃん……」
「!」
寝言で自分の名前を呼ばれるなんてそんなラブコメで王道なシチュエーションが有り得るのか……! 感激だ。
その寝顔を見ていると、頭がぼうっとしてくる。
さらさらな髪を触り、ゆっくりと顔を近づけ――
パチッ。
鼻と鼻がくっつきそうな距離で、松永が目を覚ます。
「……」
「……」
俺はだらだらと冷や汗が流れるのが分かった。
「何しよるのぉぉぉおおおっっっ!!??」
「マジですまんんんんんん!!!!」
△▼△▼
マジで……王道詰め込みすぎて読者様に飽きられそうで怖い(泣)
詰め込みセット一つご注文でーす。
毎朝6:13更新です。
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