第10話 一生付き纏ってくるストーカー女

「うわあいつ、見ろよ。一人で笑ってやがる」


「きしょ。どうせ松永さんのことを考えてたんだろ」


「いやらしいな」


「人類の敵だな。特に女子」


「あいつがこの学校にいるというだけで屈辱だ」



 言い過ぎだろ。

 俺はテストで勝利した後訪れる平穏な学校生活を想像して舞い上がってただけだぞ。いいじゃねえか。幸せな未来を想像して何が悪いんだ。



「はぁ……何もかもあいつのせいだ……」


「だーれのせいって言うた?」


「うおっ!」



 ビビったぁ……。急に覗き込んでくんな。あと距離が無駄に近いんじゃ。



「お前だよ」


「そこは否定してほしかった」


「自覚あんのかよ」



 じゃあさっさと俺に関わるのをやめろや。バカだから分かんねえのか?

 ま、どっちみちその頭脳じゃ学年一位の俺に勝てるわけねえ。最初から負け確な勝負を持ちかけてこないことだな。



「なんか余裕なの腹立つ。まあええや。1時間目……芸術か。ゆうちゃんは書道と美術と音楽、どれなの?」


「ああ……美術だ」


「やっぱりそうか」


「やっぱりってなんだやっぱりって」


「昔から絵上手かったけぇ」


「お前が俺の昔を知るわけねえだろ」



 根っからのバカだなこいつ……。

 だが実際小学校低学年から絵が上手いと言われてきたからな。当たってるのが悔しいわ。絶対テキトーに言っただけなのに。



「まだ転校してきたばっかりじゃけぇ、ゆうちゃんについていくね」


「は? 他のやつについてけめんどくさい」


「ええ……」



 お、珍しく納得した様子だな。

 っと、そろそろ移動しないと間に合わないか……。

 そう思い、俺は準備して美術室に向かうのだった。


♡♡♡♡♡


 美術室に着いた。



「……お前なんでいるんだよ……」


「? たまたまじゃ」



 ぜっっってえ違うよな!? ついてきたよな!? このクソ野郎! ストーカー女!

 女子だからって、美少女だからって、許されることと許されねえことがあるんだぞ!?



「はぁ……その割にはちゃっかり隣の席だけどな?」


「たまたまじゃ」


「黙れ」


「ひどっ!?」


「そこ! 話を聞きなさい!」



 お前のせいで佐藤(美術担当の教師)に怒られただろうがッ!



「はいじゃあ今日は――」



 長々とした説明を聞き、ようやく描き始める。

 今日は校内の好きな場所の風景をスケッチするらしい。


 チャーーーンス!

 

 陰キャスキル《超・瞬間移動存在感を完全消去》を使って美術室から抜け出すのに成功!

 と思って振り返ると、松永はもう教室には居なかった。

 なんだ、単独行動を選んだのか。よっしゃ。

 俺は結局、屋上に近い階段の踊り場にある窓から見える風景を描いた。

 

 ……正直、絵を描くのは大好きだ。でも、将来は医師として生きていこうと思っている。

 陽茉梨を養うためだ。

 あいつは、両親がほとんど家におらず寂しいはずなのに、自分の気持ちを殺してまで家庭を支えようとしている。 

 我慢させた分、将来は楽をさせてやりたい。だから、医師という給料が高い職業につかないといけないんだ。俺が勉強に精を出すのは、そのためだ。(結婚して出ていくという選択肢なんて無い)


 ……それにしても。



「あいつがいないと寂しいな……」


 



△▼△▼

 

 

 最近思うんです。

 柚と裕也、ボケとツッコミで会話してて仲いいなって(作者が言うのか)

 これからもほのぼのした二人を見守って下さい。

 ここまでお読み頂き誠に有難うございます。応援宜しくお願い致します。


 毎朝6:13更新です。

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