第9話 帰り道での会話「賭けをせん?」

「起立、礼」



 やっと帰れるわー……。



「さようなら」


「「「「「さようなら」」」」」



 目では追えない速さで教室を出る俺。まさにマッハ。



「おい! 飛鷹はどこだ飛鷹はぁあああ!!」


「今日の放課後こそ処刑する計画が……逃した!」


「クッソォォオオオ!! あいつ陰キャの存在感の無さを極めてやがる!」


「俺たちだって非リアを極めてやるぅぅぅぅううう!!!」



 極めんなよ!? 自分で言ってて悲しくねぇのか!?

 そう思いながらかつてないほどの全力ダッシュ。



「はぁ……はぁ……つか、れた……」



 俺は学校からだいぶ離れた道で、塀にもたれかかって息を整える。

 ちなみにどうでもいいが、俺の家は学校から南に向かうとある。


 さて……まだ安全とは言い切れないからな。早く家に帰ろう――



「ゆーうーちゃんっ!」


「頼むから死んでくれ」


「ええっ!? 酷いぃ!」



 このクソアマぁぁ!! なんで来るんだよぉぉお!!



「あ、これは失礼。初対面なのに酷い言葉を言ってしまいました。俺が大嫌いな女に良く似ていたもんで……」


「いや騙されんけぇ」


「ちくしょぉぉお……」



 マジで厄介過ぎるぅう……。



「お前、俺を尾けてきたのか? 気持ちわりぃな」


「いや違うけぇ!? ゆうちゃんがもたれかかってたそこの塀! それうちの塀やから! うちは普通に帰ってきただけじゃ!」


「え、ここがか?」



 意外と(?)普通の一軒家だ。

 白を貴重としていて、一言で言うとおしゃれだ。


 ……家の中の電気、ついてないのか?


 まあいい。

 


「そうか。じゃあさっさと家に帰れ。俺も帰るから」



 そしてあわよくば一生学校を休め。



「え、無理」


「な・ん・で・だ・よッ! すぐそこじゃねえか!? 素直に帰れよ!? どこで粘ってんだこのアホ!」



 はぁ……この女の思考回路が分からん……。帰れよ……。



「アホ!? 今うちのことをアホって言った!? むきー! 決めた! うち決めたけぇ!」



 こいつの我儘に振り回されてばっかだ……。誰か俺の心と体を自由にしてくれ。

 もうこいつを殺したい……。こんなに心の底から人の死を願ったのは始めてだ。



「宣言する! うち、中間テストでゆうちゃんを抜かす! うちがアホじゃないことを証明する!」



 !!!

 これはチャンスでしか無い! 神様ありがとう!

 俺は思わず余裕の笑いがこみ上げてきた。



「クックックッ……やれるもんならやってみろ」


「うわっ、悪魔の笑いじゃのぉ! そがいなふうに言われたらますますやる気が出てきた!」



 ふんっ! と両手に力を入れて意気込む松永。

 不覚にも心臓が……――いやなんもなってねえけど。ねえけど? うん、ねえし?(主張)



「ほうじゃ、賭けをせん?」


「は?」


「うちがゆうちゃんを抜かしたら……今年の夏休みにある夏祭り、一緒に行こう?」


「夏祭りって……まだ4ヶ月も先じゃねえか」


「ええの! 他の女子に取られたら……(ボソッ)」


「あ? なんて言った?」


「なんでもない!」



 変なやつだな。いや陰キャの俺に付きまとうんだから変に決まってるか。



「じゃあさ、賭けじゃけぇゆうちゃんもなんか賭けてy」


「金輪際俺に関わるな話しかけるな半径1メートル以内に近づくな」


「うぉい!? 早すぎん!? しかもぶち厳しい条件じゃん!」


「当たり前だ」



 よしよしよしよし! 勝った! これで俺は自由だ! 睡眠が出来る!

 ……まあ、松永が隣だと、話しかけてこなくても何故か寝れないんだが。

 やはり存在がうるさいんだな。



「じゃ、そゆことで〜」


「ああ」



 笑いが止まらない。睡眠が出来るという幸せがえぐい(語彙力が無くなる)。

 てかあいつマイペースすぎだろ。自分の用件終わったらすぐ帰りやがって。


 え? なんでそんなに自信があるのか?


 まあ今の俺は気分がいいから教えてやらんこともない。

 実は俺は――
















 毎回学年一位だからだ。


△▼△▼


 毎朝6:13更新です。

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