第4話 家での俺と陰キャ仲間
「はぁ……」
家に帰った瞬間、どっと力が抜ける。
今日は休み時間の度に追いかけられたし。しかも二回目以降は陽茉梨も助けてくれないし。あいつ気まぐれすぎだろッ!!
「さて、勉強するか」
そう実は、俺は学校で寝ている代わりに家で死ぬほど勉強しているのだ。
両親はクラシックで有名な楽団に入っており(親父は指揮者、母さんはソリスト)、世界各国を飛び回って演奏会をしているのでなかなか帰ってこない。
実質陽茉梨と二人暮らしだ。高校に入学する時は流石に帰ってきて手続きをしてくれたが。
陽茉梨は陽キャだから帰ってくるのは
「えーっと……あったあった」
俺がスマホを起動し、
「いつもありがとう」と返信して、今日の授業内容を復習していく俺なのだった。
……家じゃ、寝ても意味が無いからな。
❦❦❦❦❦
「ふぅー……」
勉強が終わって一息ついていると、一階から陽茉梨の声が聞こえた。
「おにいー、晩ごはん冷める前にはよ来い」
「はいはーい」
「3、2、」
「おいちょっと待て!」
俺は二段飛ばしで階段を駆け下りる。
「1、0! はい、死刑宣告ー」
「ギリセーフだな」
「クソ兄貴」
こうやって、毎日「3、2、1勝負」というものをしている。
陽茉梨のカウントダウンが終わる前にテーブルにタッチしたら俺の勝ちだ。
と言っても、あくまで遊びの一つなので陽茉梨は本気で晩ごはんを抜いたりはしない。
え?毎日やってるなら順応出来るだろって?
分かってないな。陽茉梨は毎日違う手法で仕掛けてくるから読めないんだよ。
「「いただきます」」
もちろんだが俺は料理が全くできない。それに比べて陽茉梨はすごく料理が上手い。おかげで助かっている。
兄妹ともに料理下手だったらひもじい思いをするところだった。
「そうだおにい、今度から勝負に負けたら500円ちょーだい」
「晩ごはん抜きより辛いわ」
「チッ」
高校生の小遣い舐めんなよ……。
❦❦❦❦❦
晩ごはんを食べ終わったあとは、これからの予習。
今日はえーっと……微分積分学の基本定理についてか。(三年で習うが先にやっている)
今日は微分にして、明日は積分について予習するか。
すると、スマホに通知が来ていることに気づいた。
43分前
『どういたしまして』
いつも授業内容を教えてくれるなんて。
委員長には感謝しか無い。
❦❦❦❦❦
翌朝
「おい、あいつだろ? 二年の最底辺ド陰キャ」
「美少女転校生に近寄ってるらしいな」
「あんな奴が? 身の程を知れ」
「美少女転校生が可哀想だ、あんな奴の隣の席とか」
「は? 隣の席なの? 俺に代われや」
もう開き直って堂々と歩くことにした。
教室のドアを開けると……うん、全員殺気立ってる。怖いって。
でも、流石に物理的には何もされてないみたいだな。良かった良かった。視線だけなら別に気にすることでもない。
そう思い、ドカッと席に座ると眼鏡をかけた三つ編み女子が近寄ってきた。
「おはようございます……」
「おはよ、委員長」
ぺこり、と頭を下げ、どこかへ行ってしまった。
彼女の名前は
おとなしい性格で、頭がいいことから学級委員長を押し付けられている。
綺麗な黒髪の持ち主で、胸は貧乳でもなく巨乳でもないといった感じだろうか。
彼女も友達がおらず、陰キャ(委員長ごめん)なのでボソボソと小さい声で喋っていても陰キャスキル《
「あいつ……次は委員長が標的か?」
「女たらしとか最悪だな」
「委員長は逆らえないからって利用してるんだ!」
「うわ最低かよ」
「消えろやゴミ」
「女の敵じゃん」
クソ野郎共が。
俺がこめかみをピクピクさせていると、大きな声が教室に響き渡った。
「おはよう!」
お節介女、松永だ。
クソッ、来やがったか。お前が隣にいると寝れねえんだよ!
……別に寝ないのも悪くないとか思ってない。思ってないんだからな。
「おはよう、松永さん!」
「松永さん、今日の放課後体育館裏に来て下さい!」
「おまっ、何抜け駆けしてんだよ!?」
「そうだそうだ! 抜け駆けするのはあいつを殺ってからって約束だろ!?」
しかも、松永のせいで俺は命の危機だし……。
マジで、他のクラスに転入してきて欲しかったわ。
顔を伏せて、隣が静かになるまで寝たふりをしておくことにした。
「みんなおはよう。あれ? ゆうちゃーん。また寝とるの? お・は・よ・う! 挨拶は返すのが常識じゃ」
うるせぇ……。マジで静かにしてくれ……。
「おい! 飛鷹お前! いつまで調子乗ってんだ!? 松永さんが挨拶してくれてんだぞ! 起きろやこのクソ陰キャ!」
「マジ最低だな」
俺、全く関係ないのに……泣
❦❦❦❦❦
お昼休み
俺は購買でパンを買おうとして――何者かに手首を掴まれた。
力と指の細さ、この手のひらの小ささは……女か!?
期待して振り向くと、そこには――
「ゆーちゃんっ!」
クソ迷惑な女、松永がいた……。
△▼△▼
毎朝6:13更新です。
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