くすくす
桐原まどか
くすくす
―やぁ、今日も暑いですなぁ。汗が滝みたいに流れて止まりませんよ。
―そんなに警戒しないで下さいよ。今にも警察に連絡しそうだ。私はただ、束の間の休息に話し相手が欲しかっただけなんですよ。男同士⋯油断出来ないですか?
―私はね⋯まぁ、身なりを見れば分かるでしょうが、しがないサラリーマンですよ。営業。へいこら言いながら働いてます。
どうぞ、冷たいうちにジュース、飲んでください。
―アハハ、袖すりあうも他生の縁。じゃあ、私の地元に伝わる古い話をしましょうか⋯<くすくすさん>って言います。
どこまでも晴れ渡る8月の空。雲ひとつない。太陽が地球を焦そうとしているようだ。
―<くすくすさん>はね、子どもが大好きなんですよ。悪さなんてしません、ただ一緒に遊びたいだけ。ただね⋯<くすくすさん>は
どこまでも晴れ渡る8月の空。雲ひとつない。
不思議と人通りがない。みな、暑さに屋内にいるのだろうか。
―<くすくすさん>はね、<その人にとって、最も害のない姿>で現れるそうですよ。そうして話しかけるんだそうです。他愛もない話を。アハハ、ちょうどいまの我々のようですな⋯。
どこまでも晴れ渡る8月の空。雲ひとつない。太陽が地球を焦そうとしているようだ。
その容赦ない陽射しが、道端にぽつねんと置かれた、ふたつの空き缶を焼いている。ついさっきまで飲んでいたように、表面に汗をかいている⋯。
くすくす 桐原まどか @madoka-k10
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