第4話

 彼女の心配は、していなかった。たらふく焼き肉食った後に牛丼買って帰るタイプだから。しかも帰宅後一発目にアイス食うから。そのあと牛丼。肉アイス肉。


 自分の戦いを考えなければならない。


 彼女と引き剥がされ、彼女のほうは自分との全ての記憶を失った。その代わり日常に変化はない。組織のバックアップもついている。問題ない。


 自分は、彼女との記憶以外の全てを奪われている。心のなかに彼女しかいないと言えば見映えは良いが、実際のところ、箸の使い方すら覚えていなかった。彼女と出会う前から箸使えてたし。


 なんとか、携帯端末の操作はいくつか覚えていられた。彼女と端末いじって遊んでいたおかげ。しかし、こちらも連絡に関する端末操作、つまり彼女以外の人間との交信手段の全てを忘れてしまっていた。当然、組織と連絡もとれない。そして彼女には接触できないので、連絡不可。この携帯端末は彼女のラップトップを眺める程度の役割しかない。


 しかたがないので。今日も牛丼とアイス。彼女と一緒に食べたものしか、食べることができない。料理はできるのに。彼女に料理をたくさん食わせていたのに。残念なことに料理は個人作業だったため、記憶から消えた。彼女と一緒に食べていた記憶だけがあるので、余計にかなしい。記憶に残る、あの美味しそうな料理は。自分が作っていたらしい。残念でしかない。


 とはいえ。牛丼とアイスは美味い。焼き肉は、彼女と会えてからにしよう。


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