第3章 家族のかたち 其の2

「よかった……ホリー……!気がついたんだな。」

「ホ……ホリー……!う…う……うわーん!ホリー!よかったよー!」

 フィンとラッピーが私の元へ駆け寄ってくる。

「ボク……ボク……ずっと神様にお願いしてたんだよ!『もうミルクを飲めなくなってもいいからホリーを助けてください!』って!」

「ラッピー……。」

「ラッピーもよく頑張ってくれたんだぞ。汗を拭いてくれたり、服を着替えさせてくれたりな。」

「うん!ボク、ホリーに元気になってほしかったから、頑張ったよ!」

「そうだったんだね……。ありがとう、ラッピー。」

「えへへ、どういたしまして!」

「そうだストロ。ホリーに【例のあれ】を渡さないか?」

「お、早速だね。わかった!」

「例の……あれ?」

 一体何のことなのだろう?

 そう思っているうちに、ストロはカバンの中から何かを取り出した。

「じゃーん!所長!これは何でしょうか?」

 プレゼント用の包装が施された何かをストロが私に見せる。中からは優しい香りが漂ってくる。

「これは……花……なのかな?」

「ふふふ、じゃあ開けちゃうねー。」

 ストロが包みを開けると中に入っていたのは……。

「これって、ヒメリカ……?」

「そうだよー。庭のヒメリカを鉢植えにして持ってきたんだ。まだ時期が早いから蕾だけどね。」

「そうなんだ、ありがとう。ヒメリカ、蕾のままでもいい香りだね。」

 以前にも話したが、ヒメリカは私の大好きな花だ。9月の下旬になると綺麗な赤い花を咲かせる。

「実は……これだけじゃないんだよ。ね、ラッピー。」

「そうだよ。ボクからもホリーにプレゼントがあるんだよ。」

「ラッピーから……?」

「えへへ。ちょっと待ってね。」

 ラッピーはそう言うと、背負っていた小さなリュックの中身を取り出す。

「はいこれ!」

「これは……水……?」

 ラッピーが手渡してきたのは水の入ったペットボトルだった。

「ほら、これでホリーがヒメリカに水をあげて!」

「え……!」

「ラッピーとの約束だったんだろ。守ってやらないとな。」

「そうだよ、約束は守らなきゃね、所長!」

「み……みんな……!」

 驚いた……。まさか……こんなに素敵なプレゼントを準備してくれていたなんて……。心の奥から感情が込み上げてくる……。

「みんな……ぐすっ……ありがとう……!……うぇーん!」

「あららー、所長泣いちゃったよ。ま、さっき私が泣かされたから、お返しだね。」

「ははは。おまえもそうやって泣くことが

 あるんだな。」

「だって……だって……!みんなが……うっ……優しくて……私、ぐすっ……嬉しくて……!」

「ほらほらホリー、泣いてばかりじゃ水をあげられないよ!ボクが鉢植えを持っててあげるから。」

「うん……。ありがとう、ラッピー。」

 私はペットボトルのフタを開け、そして、鉢植えの土に水を流し込んだ。

 ラッピーとの約束……守れて本当によかった……。

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